月別: 2018年7月

市役所の著しいミスがあったときの固定資産税の還付は、5年?20年?~私の体験談より~

【1】この案件の概要

私の知り合いから相談を受けました。ご主人が昨年亡くなりました。相続登記をしたいからと今年になって納税者(被相続人の配偶者、以下Aさんといいます。)は、私の知り合いのB司法書士(以下Bさんといいます。)に自宅の土地・建物の名義変更を依頼しました。Bさんは、Aさんから固定資産全資産証明書を入手しました。

すると、昭和53年に店舗併用住宅が、昭和57年に付属家屋が新築されていました。その時に同敷地内に建っていた取り壊し済みの旧家屋4戸がとっくに取り壊し済みなのに、H市はそのことにまったく気づかず約40年間固定資産税を賦課し続けていました。

Bさんの指摘でH市の課税課家屋係からAさんの自宅へ若い男性と女性の職員(以下それぞれCさん、Dさんといいます。)が現況の調査をしにきました。すると、新築された家屋番号と同じ家屋が3戸、相続登記がされておらず、滅失登記もされていない家屋が1戸あることがわかりました。さらに、現況調査の際に、最近撮った航空写真を確認して5㎡の増築があることも把握していました。

【2】H市の対応

当初の対応としては、地方税法第18条の3号1項の「還付金に係る債権は5年を経過したときは時効により消滅する」と同時に増築部分については同法17条5号3項により「固定資産税の賦課決定は法定期限の翌日から3年を経過した以後はすることができない」を根拠条文に、還付金と増築部分の納税を相殺して還付する旨をCさんが説明をしたそうです。

賦課課税方式と申告納税方式による課税の違いなのか、そもそも課税に対する考え方の違いかは不明ですが、いずれにしてもH市の「自らのミスである賦課決定処分の反省は横に置いておいて、新たに徴収できるものには画一的に課税をする姿勢」には辟易しました。

【3】Bさんと税理士(以下、私と言います。)とAさんでH市の係と交渉

Aさん及び代理人のBさんと私の主張は、『新築された課税台帳と滅失した課税台帳に同じ家屋番号があるのは、明らかに市役所のミスであり、本来、新築されたときに気づくべきことではないか。また、固定資産税は賦課課税によるものであり、H市の課税を信じて疑わないAさんはいちいち細かい課税明細書を確認しない。したがって、国家賠償法により20年間還付すべきである。また、増築部分は、納税者の遺失利益(H市の不当利得)であり、また増築部分はごく僅少(犬を飼っていたところ)であり「少額不追求の原則」により課税をしないようすべきである。また、最悪でも進行年分からにするべきである。』というものでした。

市役所のCさんの対応は、「今回のケースは明らかなH市が犯したミスなので、国家賠償法により20年間の還付金と同加算金を還付する。追加納税については、内部で対応を考える。」との返事でした。かたわらにいたDさんは、この部署についたばかりなのか終始無言でした。

【4】H市からの回答

Cさんからの回答は『課税漏れ部分は、地方税には国税のような「少額不追求の原則」はない。したがって、課税漏れ部分は4年間相殺し還付する、平成30年度分は未納税額(2期から4期)に充当する。その理由は、こうしたケースはH市では、過去すべての納税者に課税実務上すべて相殺後還付をしており、1人の納税者に特別な扱いはできない。』つまり、お役所の好きな言葉で「前例がないのでできない。」というのが当該部署で議論した結果だそうです。想定の範囲内の回答でした。

【5】Aさんの判断

還付期限が20年になったし、意外に還付加算金が多かったのでびっくりしたそうです。

新たに発生した税額も、私が増築当時の標準的な費用を顧問先のリフォーム会社に尋ねH市の算出した課税標準額よりもその費用がかなり安価だと言うことが分かりました。そんなこともあり固定資産税は大きな負担にはならないので、これ以上何かアクションを起こすことは、コスト・パフォーマンスからしても意味がないのでH市の結論に従うということでした。

【6】もし、相続が発生していなかったら?

Aさんは、近所の方から聞いて本来「相続登記」をするつもりではありませんでした。しかし、私からのアドバイスにより「相続登記」をすることになり、私の知り合いでもあるBさんに登記をお願いしたところ、この事案が発覚したものです。

もしそのまま放置すれば、いつまでも無いはずの家屋が「固定資産台帳」にいつまでも残り、課税され続けた蓋然性が極めて強いと思われます。金額の大小ではなく、H市のチェック体制の弱さだろうと思います。それは税務署と違い、市役所内部の配置転換が3年~6年という短い期間なので専門性が発揮できないまま、次の部署に移動することになるからでしょう。

たまたまH市は、国民健康保険に資産割がなかったので良かったのですが、資産割のある自治体ではAさんの遺失利益はさらに増えていたはずです。

【7】元々の関与税理士(以下Eさんといいます。)には、固定資産全資産証明書を見る機会があったはず

このAさんのご主人(被相続人)は長らく事業(2代目の酒屋で、旧国道に面していたが、ディスカウント店やコンビニの台頭と納税者本人が大きな病気に罹患したこと、子育てもすべて終わり約10年前に商売をやめておられていました。)をしていて、ご主人自らが毎年、確定申告資料を作成していました。それをEさんがチェックして税理士署名したものを申告していました。また、Aさんはご主人(被相続人)の商売の手伝いはするが、帳面のことなどはまったく関与していませんでした。

Eさんは、H市では何本かの指に入る大きな事務所で、確定申告も件数が多く、おそらく深くEさんが関わっていなかった可能性が大きいと思われます。しかし店舗併用住宅なので、家事関連費を按分するために、固定資産全資産証明書をチェックしなければいけないし、その機会は幾度もあったと思われます。

【8】この事案を教訓にすると

税理士も納税者と同じように、地方税には疎い方が多いと思われます。固定資産税に限らず「賦課課税方式」の税金にも関心を持って、毎年固定資産全資産証明書などをチェックすべきでしょう。特に、固定資産税の縦覧には納税者と同行した方が良いと思います。

私は、これまで相続税の申告作業の中で明らかに「誰にでも通り抜ける私道」であるが、登記の現況が「雑種地」として課税があったことについて、粘り強く交渉して20年間分の固定資産税と都市計画税の還付をY市から受けた経験があります。

また、農業用倉庫として増築したものが、登記上「住宅」となっていたものについて、増築後240㎡を超えるという理由で、Y県税事務所からかなり大きな「不動産取得税」の追徴課税の通知があった事案がありました。その納税者は、毎年私の事務所で所得税の確定申告をされており、実際に自宅におじゃまをして家屋の現況の調査をして、事業用と家事用の共用部分を按分したら、かろうじて240㎡を下回り課税を免れたこともありました。

多くの税理士が、「賦課課税方式の地方税」にも興味・関心を持ってもらい「不利益な課税」を受けないように心がけなければならないと感じた次第です。

あなたは健康管理をしていますか?~健康に関する語呂合わせ~

私の世代より少し上の「団塊の世代」の人なら絶対に忘れはしない楽曲でフォークシンガーの草分けの一人「高石ともや」さんの大ヒットソングで「受験生ブルース」があります。

その歌詞の一説に「一夜一夜のひとみごろ」がありますが、それは√2(1.41421356)の語呂合わせです。また「富士山麓オームなく」同じく√5(2.2360679)の語呂合わせです。この語呂合わせで、受験生の悲哀を「高石ともや」風に愉快に歌っていました。

早熟だった私は中・高校生のころ「勉強するのに必要だから」と母親にソニーのラジオで当時の最ヒット商品「スカイセンサー5800(累計100万台以上も販売されていたという最新式)」をせびり、とうとう2万円以上もするラジオを買ってもらいました。ところが、深夜放送の「受験講座」ではなく「オールナイト日本」をひたすら聴いていて「高石ともや」さんの存在とこの楽曲を知りました。

その私も、綾小路きみまろ風に言えば「あれから何年?」ついに「ラジオ深夜便」を聴くような世代になりました。

私はいくつかの持病があり「調剤薬局」に先日行ってきました。そこでもらった薬袋の中には「Life5月号」という小冊子が入っており、【保存版】減塩生活の「さ・し・す・せ・そ」と書いてありました。

語呂合わせで表現されたものでその意味は、

さ……砂糖も一緒に減らそう

し……塩(ナトリウム)の表示に気を付けて

す……酢・香辛料・香味野菜で味にアクセント

せ……醤油もソースも使い方次第

そ……味噌汁は具だくさんで

となっていました。なるほど語呂合わせで覚えることによって「物忘れのひどい世代」でも分かるように工夫されています。因みに、国が推奨する1日の塩分摂取量は、健康な男性で8.0㌘未満、女性で7.0㌘未満であるのに対して、実際の塩分摂取量は、男性10.8㌘、女性9.2㌘と過剰摂取になっており、それが高血圧、脳卒中、胃がんのリスクを高めると書いてありました。

他にもネットで検索すると「語呂合わせ食事法・健康法」がいろいろありました。二つほど紹介すると一つは奥薗壽子さんという有名な料理研究家が「奥薗流・まごわやさしい健康料理」という書籍などに載っているものです。その語呂合わせは、

ま……豆(納豆、小豆、黒豆、グリーンピース油揚げなど)

ご……ごま(ごま、クルミ、栗、ぎんなん、松の実など)

わ……わかめ(わかめ、ひじき、のり、昆布、もづくなど)

や……野菜(緑黄色野菜、淡色野菜、根菜など)

さ……魚(鯵、鰯、アサリ、鯖、鮭、マグロ、エビ、かき、タコ、シジミなど)

し……椎茸(マイタケ、エノキ、なめこなど)

い……芋(サツマイモ、ジャガイモ、こんにゃくなど)

確かに体に良さそうで、ダイエット効果もありそうなものです。

もう一つの語呂合わせは、おさかなすきやね(お魚好きやね)「血液さらさら防止法」というサイトに載っていましたので紹介します。

お……お茶

さ……魚

か……海藻

な……納豆

す……酢

き……キノコ

や……野菜

ね……ネギ・玉ネギ

いずれの「健康食材」もほぼ共通しています。要するに、日頃から暴飲・暴食にならないよう心がけ、減塩食になるような調理の工夫をし、体に良さそうなものを意識して食べれば、慢性疾患や肥満の予防にもつながるというわけです。皆さんもこの際、思い切って自分の食生活を見直してみませんか。個人的には、それと併せて昔から言う「腹八分目」を意識することも大切な事だと思います。

平成29年の確定申告を終えて思うこと~記帳義務化と時代遅れの所得税制~

平成29年の所得税の確定申告が3月15日に、個人の消費税の確定申告が4月2日に終了しました。私も、いろいろな事業者(最近はフリーランスというカタカナ言葉で言うそうです。)の方の相談や申告書作成に携わりましたが、改めて思うのが「記帳の義務化」が平成26年1月からすべての白色申告者に対して始まり、また、その「帳簿等保存の義務化」が始まっているにも関わらずまだまだ十分に認識されていないとことです。

税理士に依頼される方は、何とかこの制度をクリアできたとしてもそれなりの費用がかかります。税理士に依頼される方でもその基になる基礎資料(請求書等)を完璧に保存されている方が少数派ではないかと思います。税理士と依頼者の「あれはないか、これはないかとの攻防」が始まります。税理士も領収書等の整理に時間がかかる先ほど請求する費用が相対的に低いので正直、あまりやりたくない仕事なのです。

それが、税理士等に依頼されない小零細事業者が本当にきるのでしょうか?私は、それを厳密にするのはかなり難しいと思っています。無料の確定申告会場でも未だにそれができていない方がすごく多いというのが実感です。特に高齢者の方や、朝早く市場で仕入れて夜遅くまでそれを販売される八百屋さんや魚屋さんなどは、仕事だけで体力も気力も使い切っていて「記帳どころではない。」という忙しい「生業」の方が、意外に多いのではないでしょうか。

この「記帳義務化」と「帳簿保存義務の義務化」の背景には、消費税の平成31年10月1日スタートすることとなっている税率引き上げ(現行の8%から10%)と日本の消費税では初めてとなる軽減税率(食料品等と新聞の購読料金が8%に据え置かれる)の適用を意識したものだと推認されます。そこで、その制度を4つの観点から、もう一度検証してみましょう。

1.申告納税制度と記帳と帳簿保存の義務化、青色申告と白色申告の違い

現在の日本での所得税の申告納税制度は、納税者が自ら税法に従って所得金額と税額を正しく計算し申告と納税をするというかたちを採用しています。1年間の所得金額を正確に計算し申告するためには、毎日の収入金額や必要経費に関する取引の状況の記帳と、取引の際に作成したり受け取ったりした書類等の保存を行う必要があります。確かにそれは原則ですが、それがきっとできないので「青色申告」の適用申請ができないのです。

では、青色申告者と白色申告者でどのような違いがあったのでしょうか。青色申告を選択した事業者は、「生計を一」にする親族に給料を支給できたり、青色申告特別控除(最高65万円)が所得から控除できたり、30万円未満の少額な資産の場合は最高年間300万円までは必要経費にできるなどの「特典」があります。この制度を採り入れたのは、「記帳制度」を推進したいという国税当局の思惑があったのでしょうが、そもそも他の国では、このような「差別的な制度」を設けている国はないと税制の文献等にも記述されています。

日弁連も2017年11月14日の意見書で「家族従業員としての労働を正当に評価し、家族授業員に対する支給給料についても、他人を雇用した場合と同様、経費に算入することを原則とし、支払われた賃金については、家族従業員本人の労働の対価と明確に位置づけられるよう、専従者給料制度の見直しを図るべきだ。」とその改正を求めています。つまり、「白色申告制度」は時代遅れの「家族主義」を前提にした時代感覚とマッチしていない立法措置だと言えます。

今まで、「青色申告者」の場合はその特典を享受するために、一定の要件を備えた帳簿書類の備え付け、記録、保存が定められていたのに対して、「白色申告者」の場合は、一定の人(前々年分あるいは前年分の事業所得、不動産所得又は山林所得の合計額が300万円を超える方)に対してだけ、記帳制度や記録保存制度が設けられていました。

しかし、平成26年1月からは、これらの所得を生ずべき業務を行うすべての方についても、同様に記帳と帳簿書類の保存が必要になりました。因みに、所得税の申告の必要がない方も含みます。

2.白色申告者への記帳、帳簿保存の義務化はすでにスタートしています。

上記でご説明したとおり、平成25年までは個人の白色申告者については、記帳、帳簿などの保管が義務付けられている対象者は限定されていました。しかし、この税法改正により、記帳・帳簿等保存義務が、平成26年1月からは、すべての白色申告者にこの“記帳・帳簿等の保管”が義務付けられるようになりました。つまり、すべての個人事業者の方が平成26年分から記帳をしなければいけないということです。この制度を知らない方も多いのではないかと思います。

消費税法では、前々年の課税売上高が1,000万円を超えると消費税の納税義務が発生します。小規模・零細業者でも業種(例えば粗利が低い卸売業の事業者など)により、課税売上高が1,000万円超えるケースもあるでしょうし、将来の「インボイス制度」が導入されれば、課税売上高が1,000万円いかない方でも自らが課税業者を選択しなければ「商売」の存続ができなくなる可能性があります。その場合、「簡易課税制度選択」を選択していない限り、請求書等(等とは領収書などを含みます)と帳簿との二つ(記載事項はほとんど同じです。)のものを揃えなければなりません。改訂以前は請求書等と帳簿とのいずれかがあれば良かったのですが、今はなぜか両方とも必要な改訂がありました。その「理由」は不明ですが、この前受講したセミナーの講師は、国税庁の親しい官僚に聞けば「税務署員が税務調査をやりやすいから。」と言っていたそうです。

3.記帳、帳簿保存とは何をすればいいのか。

今までは記帳・帳簿等の保管の義務がなかった方も、すべての事業者の方が行わなければならなくなり、いったい何からはじめればいいのかと不安に思われている方も多いでしょう。しかし、前述したようにこの制度を知らない方が大変多いことを実感しています。

そこで改めてその仕組みを解説します。

①記帳とは。

記帳とは、売上などの総収入金額と仕入その他必要経費に関する事項を記録として残すことをいいます。記帳に当たっては、一つ一つの取引ごとではなく、日々の合計金額のみをまとめて記載するなど、簡易な方法で記載してもよいことになっています。また、記帳は所得金額が正確に計算できるように、整然とかつ明瞭にする必要があります。

②帳簿等保存とは。

帳簿等保存とは、売上の帳簿、請求書、経費の領収書など、事業の取引に関連した帳簿を一定期間保管しておくことです。帳簿や書類を、基本的には5年間の長きにわたり納税者の住所地や事業所などの所在地に、整理をし、保存しなければいけません。

※株式会社エフアンドエム Tax House記帳代行サービス 白色申告者の義務化とはより引用

4.本当にすべての事業者にこの記帳等の制度ができるのでしょうか

AI技術で税理士事務所の8割が存在しなくなると言われています。今でも「クラウド・コンピューター」が普及して、どんどん進化しています。確かにそういう流れがあることは否めません。それはそれで、今後の税理士や税理士事務所の「生き残り作戦」は必要です。

しかし、前述したようなことを小・零細企業に一律に求めることができるのかは、極めて懐疑的です。デジタル・ディバイド(情報格差)という言葉があります。「情報通信技術(ICT)を利用できる人とできない人との格差」を意味していますが、高齢の方や障がいを持っておられる方が、PCを駆使できるかどうか疑問ですし、ましてや現場を知らないキャリア官僚が机上で作成した「記帳等の義務化」を浸透させることなどとても困難なことではないかと思います。

また、前述した「家族授業員に対する支給給料についても、他人を雇用した場合と同様、必要経費に算入することを原則とすること」をなぜ法案化しないのかが納得できません。これでは、記帳等の義務化とのアンバランスが是正されません。所得税や消費税など問題ある税体系を根本的に改めるべきだと痛感しています。私は、この国の税体系が「強きを助け、弱きを挫く」ものだと思えて仕方がありません。