月別: 2018年10月

今年、最初で最後の北アルプス~あこがれの雲ノ平縦走~

2017年10月14日、台風の影響で3度目の挑戦で日本100名山の最後の山「蔵王山1841㍍」に登ってから、登山に対するモチベーションが下がったのか、その後、里山も含めて明らかに登山の回数が減りました。

年初に立てた目標は、登った日本100名山で「雨などで景色を満喫できなかったところ」に行くことでした。ハイシーズンの7月~9月にかけて、計画していた「白馬の大雪渓」への挑戦(一昨年登ったときは10月上旬で大雪渓は通行止めでした)は、約束していた同行者が腰を痛めて諦めました。また、以前の登ったときは雨でまったく眺望を見ることができなかった「蓼科山」「霧ヶ峰」「美ヶ原」も台風の影響でキャンセルしました。

「雲ノ平」と言えば北アルプスの最深部にあり、眺めるたびにいつかは行ってみたいけど「日本100名山」をめざす人は、そちらが優先になります。私もいつかはとあこがれていた山です。

当初の計画では、税理士仲間4人(男女それぞれ2名)でしたが、1週間前に一人がお子様にアクシデントがありリタイア、前日には本人が風邪と下痢のためリタイア、結局私と私の「日本100名山」達成するために大変尽力をしてもらった、私よりちょっとだけお姉さんで山登りにかけては知識も技術も体力も凌駕されている女性税理士(以下師匠と呼びます)と2人での山行となりました。

以前は「晴れ男」と言われていましたが、最近は「雨男」とか「嵐を呼ぶ男」とか言われているのが今回の山行でも現実になりました。「週間天気予報」通り前日から雨模様で、師匠もご主人(師匠の話では、今でも岩登りや沢登りなどを休みのたびに楽しみ、そのための体力を付けるために毎日の通勤は徒歩で1時間半かけるという山登りの神様のような方だそうです)から「今回は天気も相当悪いし、やめた方が良いんじゃない」と言われたそうですが、師匠は私が既に前泊して富山にいましたので、朝一番の新幹線で富山に駆けつけてくれました。

一方、私は師匠と落ち合う前日の9月2日午後3時前の新幹線で新大阪まで行き、特急サンダーバードに乗り換えて金沢へ、その後高速バスで富山に入りました。富山駅前のホテルには夜の8時半過ぎに到着し、ゆっくり体を休めました。

翌日21日の朝10時前に富山駅で師匠と待ち合わせた頃は曇り空でしたが、電車からバスを乗り継いだ頃から、天気予報がズバリ的中して雨模様になりました。折立の登山口では雨具を完全装備して、12時過ぎから歩き出しました。テレビで見たことのある有名な山岳ガイドが団体客を引き連れわれわれの後からついてきました。辺り一面はすっかりガス模様で、われわれが休憩する度に団体さんが追いついてきて、それを機にわれわれが再び歩くと言うことを3回繰り返し、16時半に山小屋1泊目の太郎平小屋(何度も泊まっている馴染みの山小屋)に着きました。

雨の予報と既に登山のハイシーズンの終わりかけの頃なので余り登山客が多くなく、4人部屋に2人という快適な場所を確保できました。因みにハイシーズンの頃の北アルプスの山小屋では、1枚の布団に2人が寝ることも珍しくはありません。そんな時は、山では何泊も着替えをしないことは珍しくなく、その汗の臭い、疲れからくると思われるいびきなどで神経質な人は一睡もできないという人もいます。

また、この日の夜中は、風雨がひどく次の日の天気を気にしながら、師匠と山登りのための体力増強法やストレッチの方法などもしましたが、いつの間にかいつものように税理士業界やそれぞれの事務所の運営や業務上の悩みなどの情報交換が会話のほとんどを占めました。もちろん、歩行中でも急登や危険な場所以外での会話も同じような仕事の情報交換の会話に終始しました。師匠は、その荒れた天気のせいかもしれませんでしたが、あまりよく寝られなかったそうです。

二日目も朝からかなりの雨模様でしたが、ゆっくりとしかし確実に師匠の後についてひたすら歩を進めました。特に薬師沢小屋からの登りが大変でした。急なはしご、雨のため滝の裏を渡るかのような吊り橋、そして岩ごろごろの急坂、しかも登山道は沢のように水が流れジャブジャブの状態がかなりの時間続きました。それでも11時頃に急坂を登り終え、雲ノ平の端っこに飛び出したときには雨も嘘のように止み、ピーカンの青空になりました。

私のすぐ後をついてきた山ガールと会話が弾みました。薬師岳や黒部五郎岳の山容が堂々たる顔を見せましたが、彼女はハイスペックの一眼レフをザックに入れていて「良い写真が撮れそうです」と大はしゃぎでした。

雲ノ平山荘に着くまでは心の弾む木道歩きでした。13時に雲ノ平小屋に到着しましたが、ここで大きなトラブル発生しました。日頃は余り使っていなかったザックカバー(リュックザックに入れてある衣類などの中身に雨水が浸透しないようにザック全体を覆う防水カバー)のバックル(留め具)が破損しており、そのためにザックの中がかなり湿ってしまいました。

中に入れていた手帳や財布まで湿っていました。ザックに収納していたすべての中身を天日干ししました。お天道様の力はたいしたものでザックの中身だけではなく、ぬれていた登山靴やソックス、カッパなどはすぐ乾きました。しかし手帳だけ手の施しようもなく下山後ドライヤーで1ページごとに乾かしました。

登山者からからかわれたのは、財布の中のお札を乾かしていたことでした。山小屋ではクレジットカードが使えないので、福沢諭吉や野口英世を何枚も乾かしていたら、「見張り番をしようか」と何人にも声をかけられました。

下山後で、その破損の原因を見つけてもらおうとその製品のメーカーであるモンベルに現品を送付しましたが、自分では比較的新しいものだと思っていたら、10年以上前に購入していた製品であり、ずっと使わずにパックの中にカバーを押し込んでいたので、経年劣化が激しくなったのが破損の原因だと担当者から詳しいメールをもらいました。

それは、カッパやスパッツ(足首と靴との間に砂や小石が入るのを防止する覆い)も同じで、その担当者のアドバイスでは、使用しないときはパック中に入れない方が経年劣化の進行が遅くなるとのことでした。そのアドバイスを受けて、パックに入れていたものはすべて出して、衣類ケースに収納することにしました。

さて、雲ノ平山荘は、2010年に新築されたとても綺麗な山小屋で収容人員は70人の小屋でした。夕食は、山小屋で初めて体験した「石狩鍋」のごちそうでした。19時から小屋主の話がとても面白く、この小屋ができた経緯や苦労話を聞いて山小屋が果たすべき役割と国立公園なのに僅かな補助金(僅か10億円だそうです)で登山道の整備も委ねている政府の予算の使い方を変えるべきだと思いました。イージス・アショアに使う予算(6000億円が必要だと報道されています)を使わなければ、北アルプスのなど国立公園などの整備をきちっとでき、外国人登山客も増え、国も結果として潤うのではないでしょうか。

三日目からは、昨日までがウソのような快晴となりました。まさに「天空の楽園」と言われる雲ノ平を出発しました。標高2,500㍍位から3,000㍍の光景は今まで何度も通った北アルプスでも最高の景色でした。北アルプスの象徴である槍ヶ岳をずっと眺めながらの尾根歩きはこれまでで味わったことのない最高のものでした。

今まで幾度か泊まったことのある三俣山荘、双六小屋を経て、宿泊予定の鏡平小屋に着きました。実は、この小屋には初めて泊まりましたが、鏡平には、池塘(「ちとう」と読み、高層湿原に点在する小池と言う意味です)が点在し、その一番広い鏡池には、木製のテラスがあり、東正面に見える槍ヶ岳の絶好の展望台となっています。そこで、山小屋で購入した本格的なコーヒーをすすりながら、その雄大な景色に圧倒されました。

「逆さ富士」は有名ですが、ここでは「逆さ槍」が眺められます。雄大な槍・穂高連峰は、長く眺めても飽きません。この山小屋での夕食は4時半からでした。それは、夕映えで赤く染まる穂高連峰が現れたときは一斉に宿泊者が食事の手を止めて、外に出てしまうから、早い時間に食事を提供することになっているそうです。この日は、その風景は残念ながら見られませんでしたが、「逆さ槍」は何とかカメラに納めることができました。

最終日は、緩やかな下りをゆっくりおりました。おそらく軽四で運んだ思われる一個100円の冷え冷えのトマトを食し大満足でした。下山予定地の新穂高温泉には10時に着きました。そこで久しぶりに風呂に入り、前泊を含め4泊の山旅を振り返りました。バスの時間が、オフシーズンなので便が少なく、その待ち時間に手打ちそばに舌鼓を打ちました。

新穂高温泉からのバスは、ほとんど登山客でいっぱいでした。平湯温泉でまた1時間の待ち時間がありました。平湯温泉は、岐阜県高山市にある乗鞍や上高地の中継地で、大きなバスターミナルになっています。そこで、NHKの朝の連続TVドラマ「半分、青い。」で有名になった五平餅を食しました。「あと5個で完売ですよ」と言う焼き手の青年の声についつい買ってしまいました。青年曰く、「最近はすっかり有名になっていつも完売ですよ」と思わず笑みを漏らしていました。

松本行きのバスに乗れない人が続出してすぐに次の臨時便が出ましたが、われわれはザックを乗り場においてゆっくりしていましたので、先頭から二組目で幸いにも良い席に乗ることができました。しかし、三連休の最後の日の午後と言うこともあって松本行きの道路は渋滞していました。

松本駅で「特急あずさ」に乗り帰路につく予定でしたが、この列車は松本駅始発ではなく白馬駅始発だったので、松本駅では「既に自由席は、ほぼいっぱいです。30分後に臨時便を出しますので自由席の方はそちらの電車もご利用ください」という放送が流れました。その放送が流れても列から離れる人は少なく長蛇の列でした。なるべく早く帰りたかったのでこのあずさに乗りましたが、まさかと思いきや本当に自由席が満席状態でした。デッキでずっと立ちっぱなしかと諦めていましたがさすがは、師匠、次の塩尻駅でおりそうな人をリサーチしていました。僅か10分で座ることができました。

うらやましいと思ったのは、首都圏に住んでいる人は日和を見ながらアルプスなどに行けるのと、日帰りでかなりの日本100名山が登れると言うことです。反対に、人がやたらと多く電車は座れないのが当たり前、週末のラッシュ時の高速道路は30㌔くらいの大渋滞は当たり前の世界です。

中国地方にある日本100名山は、鳥取県の大山だけですが、山口から大山の登山口までは車で約6時間はかかります。東京からだと、飛行機で米子空港まで僅か1時間でいけます。やはり、東京一極集中は登山の世界でもあるのですね。「地方創生」という課題をどうするかも考えた山旅でした。

活用する値打ちのあるビジネスマナーと人生訓~なかなか奥深い語呂合わせ~

よく使う語呂合わせとしてすっかり定着しているビジネスマナーに「ほうれんそう」があります。

ほう…報告する

れん…連絡する

そう…相談する

誰が考えたのか知りませんがビジネスの世界だけでなく、「コミュニケーション」の手段として多くの人が使っています。

過日、とある税務署の幹部の方から時代は「『ほうれんそう』からさらに進化をして『おひたし』になっているんですよ。署内でもこれを使った研修もやってるんですよ。」と聞いた語呂がなかなか奥深いのです。

私は、この『おしたし』は、なんだかんだと否定的に使われた「ゆとり世代」に対する配慮なのかもしれません。

お…怒らない

ひ…否定しない

た…助ける(困り事あれば)

し…指示する

「詰め込み教育」が否定され、「ゆとり教育」が始まった時代の若者を「ゆとり世代」と呼んでいます。そして「ゆとり世代は何かと使いにくい」と世の大人たちはよく言います。

しかし、いつの時代も何かと言われるものです。私が社会人になったときも先輩たちは、ひと世代前の「団塊の世代」のときに学生運動が盛んだった頃の反動として「しらけ時代」と昭和30年世代を揶揄してきました。それは、政治・経済・社会的な環境がどんどん変化しているので仕方ありません。

ただし、誰もがそれぞれ個性を持っています。ある世代の人たちを「ひと括り」にして、それを評価することは決して良いことではないと私は考えます。まるで、「血液型占い」の如くです。私の妻や二人の娘は、全員「A型」ですが、4人とも性格や思考に共通点はありません。確かに「真面目」という面では共通していますが、「几帳面」という点ではかなり温度差があります。言葉遊びで「血液型占い」をすることについて全面的に否定をするものではありませんが、何らの「科学的根拠」もありません。

話をもとに戻すと、「ゆとり世代」は、「打たれ弱い」「マイペース」「プライベート優先」「コミュニケーション能力がない」などと言われています。言われてみればそうかもしれませんが、前述した社会環境の変化によるもので「おひたし」を知っていて実際に頭の中にインプットしておくことで損をすることはありません。

「それもそうだな」と思った言葉がありました。テレビ東京系で放映された「ラストチャンス、再生請負人」というとても面白いドラマを観ました。主人公の仲村トオルがピンチに陥ると、ある「いかがわしい占い師」にすがるのですが、その占い師が言った言葉が「人生七味トウガラシ」です。その意味は、人生を生きて行くには「七つの『み』をくぐり抜けないといけない」と言うものです。

1.うらみ

2.つらみ

3.いやみ

4.ひがみ

5.ねたみ

6.そねみ

7.やっかみ

最後に、10月21日に観た「新婚さんいらっしゃい(萩市で収録されたもの)」で出演されていた看護師の奥さんが今まで一度も恋愛経験がなくて「男性をとりこにさせる『さしすせそ』を実践すると良いよ」と同僚に聞いて夫になる薬剤師さんをその通りにさせた言葉が印象的でした。

さ…流石ね

し…知らなかった

す…凄いわね

せ…センスいいね

そ…そうなんですかぁ

なるほど、自分の言った言葉に「さしすせそ」と言われると誰でも「とりこ」になるのも分かります。しかし、めでたく結婚して子どもさんができたら奥様が豹変して、言い出した言葉が実にユニークでした。

さ…触わらんで

し…しろうしい(山口弁です。標準語では、うるさい)

す…すぐ動く

せ…洗濯物、入れちょういて

そ…そうじゃない

語呂合わせって、実に奥深く、ユニークですね。

 

二女から聞いたドイツと日本の働き方事情~比較の対象とされる両国の文化の違い~

まず、はじめに私も含めて多くの国民が今の政治の姿勢について多くの不満を感じていらっしゃるのではないでしょうか。

森友学園や加計学園問題での首相の絡んだ問題について、財務省という「最強の省庁」の文書改ざん問題など2017年の流行語大賞になった「忖度」問題(実は私はそれまで私の語彙の中に「忖度」という単語は入っていませんでした。)や「働き方改革法案」や「カジノ関連法案」などについて世論調査では、約7割の人が真相を究明すべきだとか、もっと審議を尽くすべきだという実状でした。にもかかわらず、なぜ拙速な対応をするのか私には理解しがたい問題がうごめいています。

さらに死者・行方不明者が200人を超えるほどの甚大な被害を出した西日本豪雨(平成30年7月豪雨)、気象庁が異例の緊急会見を行った7月5日から、政府が非常災害対策本部を設置する7月8日までの間に約66時間も要しており、政府の対応の遅さが大きな非難を浴びました。

また、その対応が遅れただけでなく、気象庁が緊急会見を行った後の7月5日夜に、自民党議員が国会議員宿舎で開かれた「赤坂自民亭」という懇親会を開催し、安倍首相や小野寺防衛大臣も参加、そのドンチャン騒ぎしている様子を参加した議員たちがSNSにアップし、大きな非難を浴びていました。
同様に、被害が拡大している7月7日、安倍首相が午前11時に私邸に戻っていたことも非難を浴びていました。

「被災地のことを話し合うべきだ」という野党の反対を押し切り、この「働き方関連法案」も「カジノ法案」も強行したことは、政府が災害対応をおざなりにしているのではないかという疑念を強く抱かせる結果となりました。(スマダン・ホームページ参照)

人命救助より、様々な問題点が指摘されている両法案が審議不足な上にさらに強行採決をする必要があったのでしょうか。疑問を呈さざるを得ません。

「働き方関連法」の問題点がどこにあるのかをつぶさに論じませんが、日本は同じような「勤勉な性格」だとか、同じ第二次世界大戦の敗戦国だということで比較されることが多いですが、以前このブログでも書きましたが、私の二女は中学校の英語の教諭をわずか2年で辞めて、ドイツの国際人道団体の職員として働いて5年になります。

ところが、二女は今年になって体調を壊しその原因がかかりつけ医の診断で貧血であることがわかり、食生活を改善するなどの努力をしましたが一向に改善しませんでした。主治医は、もしかして他の何かの病気が「わるさ」をしているかもしれないと婦人科の受診を勧められました。

婦人科の医師はポーランド人で母国のポーランドの病院で働くよりもドイツの病院で働く方がかなり高い給料をもらえるのでその病院で働いているらしいのです。その女医の診断で、女性特有の病気で腹腔鏡を使った手術と3日位の入院の必要があることがわかりました。もちろん、ドイツでは治療費も手術費用も入院費も無料です。二女が働いている職場で、このような場合の対応が日本の研究データと合っているかどうか検証を試みました。

その研究データは、世界の働き方シリーズを特集している「Fujitu FSAS Portl For clood」のホームページを使いました。(一部改変しています。)早速、その中身を見てみましょう。

世界の働き方

世界の働き方“ドイツ”編

 

 

先進国の中でも、最も労働時間が短いと言われているドイツです。OECD(経済協力開機構)が年間平均労働時間を調査したデータ*1を見ると、ドイツは1,363時間、日本は1,713時間とおよそ350時間の労働時間の差がでています。

2016年、ドイツの1日の労働時間はおよそ6.11時間。日本の1日の労働時間はおよそ7.32時間になります。*2

1日約1.21時間の差が出ているにも関わらずGDP(国内総生産)では、一人当たりドイツでは41,902ドル、日本は38,917ドルと2,985ドルもの差が生まれています。また、ドイツ人口の約8,000万人に対して、日本人口は約1.27億人です。

日本はドイツに比べて1.54倍も人口が多いので、データからみて、いかにドイツのGDPが日本を上回っているかが分かります。同じ「物作り大国」を目指すドイツと日本です。なぜ、ここまでの差があるのでしょうか?それにはドイツの徹底された“働き方”があったのです。

 

 

厳格な労働時間の管理

ドイツでは1日10時間を越える労働は法律で禁止されています。
仮に、1日10時間以上の労働を従業員に強いた場合や、週末に働かされたことが発覚してしまうと経営者のポケットマネーで最高1,500ユーロ(日本円で225万円)の罰金を支払うことになってしまいます。また、最悪なパターンだと経営者が最高で1年間の禁固刑を

厳格な労働時間の管理

ドイツでは1日10時間を越える労働は法律で禁止されています。仮に、1日10時間以上の労働を従業員に強いた場合や、週末に働かされたことが発覚してしまうと経営者のポケットマネーで最高1,500ユーロ(日本円で225万円)の罰金を支払うことになってしまいます。また、最悪なパターンだと経営者が最高で1年間の禁固刑を科せられる場合もあります。

1日の労働は10時間まで許されますが、6ヶ月間の平均労働時間は1日8時間以下にしなければなりません。このため、管理職は繁忙期でも社員が10時間を越えて仕事をしないように細心の注意をはらいます。

それならば、“労働が1日10時間まで可能なのに、6ヶ月間平均で8時間以下にするのは無理なのではないか?”という疑問がでてくるかと思います。それが可能なのです。

効率的な労働時間貯蓄制度

ドイツでは「労働時間貯蓄制度」というものがあり、2時間残業した場合、別の日に2時間早く帰ることができます。残業した分の時間を貯蓄し、必要な時に早く帰ることができるので6ヶ月間で平均8時間以上の労働時間を上回ることがないのです。

このような時間にしばられない働き方の柔軟性が長時間労働につながらず、なおかつGDPが上がるキーポイントではないのでしょうか。

充実した有給休暇

ドイツの企業は週5日勤務であれば、年間に最低24日間の有給休暇を取れるよう法律で義務付けられています。(大半の企業は有給休暇を30日間設けています。)休暇を取るのは当然の権利だという考えを持っており、有給を消化するのは普通です。有給で1ヶ月程度、旅行に行くことも珍しい事ではありません。

プロジェクトごとに進歩状況やタスクが共有されているので、担当者が長期で会社を空けていてもプロジェクトに影響することはありませんし、長期で休暇を取ることは当然の権利なので、取引先の担当が休暇で不在でも怒りはしません。数週間待つことになっても、“休暇だから仕方がない”と考えます。

何故なら、そのクライアントと、その先のクライアントもみんな同じ考え方だからです。

また有給休暇と病気休暇は厳密に区別されており、社員が病気や怪我で働けなくなった場合、有給休暇のほかに6週間まで病休をとることができます。もちろん診断書は必要ですが、6週間は給与の保証があります。そのため、病気で有給がなくなった・・・ということはありません。
そもそも有給休暇は「健康な状態でとるもの」という考え方なので、病欠を有給にあてることはありません。

 


出展:Expedia URL:https://welove.expedia.co.jp/press/

 

日本の有休消化率は、2012年のドイツと比較してあまり取得されておりませんが、「有給休暇国際比較調査2017年」では、取得率が少しづつ改善されつつあります。しかし、未だ有給取得率50%の日本は、世界各国と比較すると最下位となっているのが現状です。

日本のこれから

ドイツの高い生産性の鍵は、いかに効率よく仕事をするか。「短時間労働で仕事を終わらせるか」ではないでしょうか。

また、従業員ごとのニーズに合わせた働き方を尊重していることも結果的に生産性向上につながっているように見受けられます。

日本がこれから「働き方改革」を推進していく上で避けて通れない課題は「労働生産性の向上」です。

労働時間の短縮・残業削減がキーワードになっている今、無駄な時間をいかに削れるかが重要なポイントだと思います。

ドイツと全く同じ働き方にするのは難しいと思いますが、良い部分は積極的にどんどん取り入れ、“仕事の量”を重視する日本から、“仕事の質”を重視する日本に。少しずつ変えていくことが、働き方改革の一歩だと思います。

企業側が従業員の“仕事の質”を向上させる環境を整えていくことで、企業全体の生産性も向上させていく。働き方改革が叫ばれている今、企業側にも努力が求められているのではないでしょうか。

*1 グローバルノート 世界の労働時間 国別ランキング2016

*2 有給休暇国際比較調査2016 (日本の有休消化率は平均50%消費のため、データブック国際労働比較の有休日数を半分にして計算しています。)

 

さてこの分析で不十分なのは、ドイツの場合には有給休暇の次年度の持ち越しがありません。また、祝日が州によって違いますが多くの州が9日だそうです。その祝日には振替がないそうです。その祝日もキリスト教の祭日にちなむもので、振替休日はないそうです。

反対に日本の場合15日の祝日があり、振替休日もあります。最近では2016年から「山の日」が設けられました。これで、お盆の長期休暇(公務員にはありませんが、民間の多くの企業は有給休暇とは別に休暇にしているところがほとんどです。)と連動できる会社が増えてきました。政府は「山の日」は12日にしたかったようですが、世界一の航空事故といわれている日航機墜落事故の遺族に配慮した経過があるようです。

ここで、二女から聞いた話ですが、100人程度の職場なのでうまく調整がとれず、前年の有給取得が全部できなくなり、トップが不利益を被ったので、今年は全部取得するように「キツく」注意されたと言っておりました。そこで、11月に日本びいきの友人と大相撲九州場所と東京見学をメインに帰国する計画のようです。

また、お子さんがいる家庭を最優先に夏休みと併せてまるまる30日の有休取得をする慣習のようです。休暇は、長期で取ることが当たり前のようになっているので、日本のように有給休暇を取ることに対する罪悪感はまるでないようです。

日本の場合には、正月休みやお盆休み、ゴールデンウィークなどのような祭日等で多くの国民が大移動して交通機関の大渋滞や特に航空機に見られる高い料金、それからレジャー施設の大混雑が問題になっていますが、ドイツの場合にはまるでないようです。結局、ドイツの労働者全員が休暇をシェアすることがモチベーションを高くしているのではないかと思います。

しかし、こなさなければならない仕事はたくさんあるので、就業時間中には無駄話は基本的に無いし、昼休みでもサンドイッチを片手にパソコンの前にいることもしばしばだそうです。特に生産現場などでは、午後4時(就業時間は午前8時から午後4時までが標準だそうです。)になったら帰宅することが当たり前のようになっているそうです。私もドイツに行ったとき、二女の住んでいるアパートは30万人の街の一番北の駅付近にありますが午後4時過ぎの電車に乗っても9両編成の列車なのにほぼ満員状態です。無人駅で改札口もありません。その駅だけではなく、大きな駅(例えば州都のディセルドルフ中央駅)でも改札口はあるのですが、日本のように改札券を通す必要もありません。要するに駅員がほとんどいないのです。

ただし、時々列車で改札をしていて、乗車券を持っていなければ、目の玉が飛び出るような罰金を取られるようで、無賃乗車をしている人はいないようです。少し不便と思うことは基本的に日本のような正確な時刻に運行はされていないことと、大幅に遅れる場合も車内放送もないことです。

また、電車のトイレは無料ですが、駅の中のトイレは10€(約120円くらいです)払わなければなりません。ベルリン中央駅では、2€かかりますが、そのうち1€はデポジット(預かり保証金)に似たような制度で、そこで発行されるチケットを加盟店に渡せば1€値引きしてくれます。

電車は確か9両のうち3両は2階建で、徒歩で降りてそのまま自宅に帰る人、自転車で帰る人、そのために自転車用の車両と自転車道が整備されています。片道3車線のアウトバーン(アウトは、英語ではオートを意味し、日本語に直訳すると「自動車が走る道」となります。

ヒットラーなどが飛行場に使おうと整備されたもので、無料です。速度制限がないと聞きましたが、正確には二女曰く、法定速度はないが、推奨速度は130㎞で坂道等は100㎞のところもあるようです。)を使わない人のために駅前に無料の駐車場がありますが、良くこれだけ詰められるのかという止め方をしています。

ちなみに、自宅には駐車場はなく路上駐車です。二女曰く、この駅の近くは割と高級住宅街だということですが、高級車のベンツやBMWはなく、フォルクスワーゲン(日本語に直訳すれば国民車)やオペル、マツダを初めとする日本車が多いです。洗車をする慣習もなく、バンパーなどのへこみも気にしていません。ただし、タクシーや二両連結のバスはベンツ製です。

これも文化の問題かもしれませんが、日本の場合には5分前にはアポイント先の場所に行くことがマナーとされていますが、ドイツの場合には5分遅れて行くことがマナーだそうです。二女に理由を聞くと、約束の時間までにここまでは仕事をこなしていこうという慣習があるとのことです。これも生産性を上げるには合理的な考え方です。

買い物は、コンビニはありません。スーパーも夜8時には閉まります。ガソリンスタンドや空港などの免税店などの例外を除き日曜日には営業はできない法律になっています。法律で決められた営業しても良い日時以外で営業すれば罰金を取られるそうです。

付加価値税(VAT日本で言えば消費税)は、標準税率は19%で軽減税率は7%ですが、日本で予定されている軽減税率8%のような食料品と新聞代のような狭い範囲ではなく、生活必需品と考えられるものはほとんど軽減税率の対象と言ってもいいくらいです。

ホテルの宿泊費も軽減税率なのには驚きました。そもそもドイツで住んでいる人は、レシートでどの商品が7%でどの商品が19%という意識がなく、物価として消費税を考えています。お店の開店時間は9時がほとんどですが、例外的にパン屋さんは5時に開店します。

買い物で驚くのは、包装をするという概念がないことです。日本のような何重にも包装した高級和菓子のような文化はありません。あるところでは、お土産にするのに包装を頼んだら別途料金を請求されました。包装も下手だし、時間もかかり多少いらいらしました。

レジも違いがあり、レジを打つ人は座っています。人に優しいのでしょうか。買い物をしたカートをベルトコンベアーのようなものに置き、仕切りをして他の人の買い物と区別しています。

カートやペットボトルもデポジットになっています。ペットボトルの水もほとんど1.5㍑で統一されています。硬水で炭酸入りが主流です。飲み終わったペットボトルをスーパーにある回収機の中に入れてそこを通過すれば料金がもどってきます。いろいろな意味で合理的にできています。

さて、日本には「病気になるのは自己管理が悪いからだ。」換言すれば、自己責任=自業自得という思考回路があり、突然の病休した穴を埋めるのにオロオロし、病欠してたスタッフを恨んだりします。

しかし、ドイツにはそんな発想がなく「病気になるのは従業員のせいではない。」という風潮だそうです。二女が病気になったときも、休暇中のスタッフが当たり前のように出勤して対応したとのことです。日本の社会保障が大きく転換し、公序、共助自助から、自助、共助、公序になったのと似ています。

病欠の判断は、日本では会社の上司が判断しますが、ドイツでは医師が判断します。病状については、日本では自らが上司に説明することが一般的です。ドイツでは、本人のプライバシーは守られます。

また、日本では後日、有給休暇申請書を提出します。医師の診断書を提出させている会社もあると聞いたことがあります。ドイツでは、医師が書いた「就労不能証明書」を3日以内に提出し、その中に「何日間の療養期間が必要だ。」と書いてあるそうです。その療養期間は、有給休暇とは別に労働者に与えなければならないそうです。

二女の場合には3週間と書いてあったそうで、トップから「3カ所ある保養所のいずれかで静養するか、日本に帰国して静養しなさい。」と言われ帰国を選択しました。

以上書いたように、日本の労働生産性が低く、ドイツのそれがかなり高い理由を二女から聞いたことから書きましたが、キーワードになるのは、労働者に対する「優しさ」や「思いやり」ではないかと思います。

日本の場合は、いかに労働者を安く使うかを最優先として考えているのではないでしょうか。それが、この間の労働法制の改定にも垣間見られます。

日本の労働生産性を上げるためには、中小企業同友会も提唱している「人間尊重の経営」を大企業も含めて、憲法13条に明記してある「個人の尊重」『すべての国民は、個人として尊重される。

生命、自由、及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする』を尊重するような発想の転換が求められると思います。

 

参考に、中小企業家同友会の提唱する人間尊重の経営をそのホームページより紹介します。

人間尊重の経営(にんげんそんちょうのけいえい)

「人間尊重の経営」の考え方の基本となるのも自主・民主・連帯の精神で、それは次の三つの側面から考えることができます。

かけがえのない人生の全面開花を保障する―個人の尊厳(自主) 

人間は一人ひとりが皆違います。同時に、誰もが無限の可能性を持ち、その可能性への挑戦を自主的、主体的に継続できる環境の保障が大切です。社員が働くことを通じて自分の成長を見出し、働きがい、生きがいを実感できる企業こそ社員の自主性が発揮され、個人の尊厳(自主)が尊重される企業といえましょう。

生きること、平等な人間観が民主主義の根幹―生命の尊厳(民主)

人間が生きていくためには、最低限の生活保障が必要です。企業で働くことは、本人及び家族の生活を維持、安定させることが大前提です。企業としては、雇用を守り、賃金を保障する、安心・安全な労働環境を整備することが法的にも義務付けられています。

「人間一人ひとりの生命に軽重はない」といわれますが、これは人類が長い年月をかけて確立した生命の尊厳を守るという人間尊重の価値観であり、そこから平等な人間観が育まれ、民主主義の原点を形成してきたといえるでしょう。

あてにし、あてにされる関係を生み出す―人間の社会性(連帯)

人間は孤立して生きることはできません。人間がより人間らしく生きていくためには、相互に信頼し、「あてにし、あてにされる関係」を尊重することが大切です。このことで、お互いに手を携えあって社会を築いていくという、人間の社会性が高まり、ほんものの連帯をあらゆる組織の中でつくっていくことができます。

企業では、労使間はもとより、職場の仲間と信頼しあい、共に育ちあう関係が育まれることによって、お客様や地域社会からの信頼を高めることができます。

素晴らしい提言ではないかと思います。皆さんは、どう思われますか。