ここにも監視型社会が~税理士だって監視されている~

弁護士の場合は、弁護士自治により、弁護士会や日弁連が懲戒権を持っています。ところが、税理士の監督は税理士会、日本税理士会連合会、税務署、国税局、国税庁が担当しています。広島国税局に対応する中国税理士会は約3,000人の会員を擁していますが、以前はその監督役として税理士監理官1人でした。その後、総務課に税理士専門官を配置し、2名体制になりましたが、現在では、もう1名増員して3名体制で税理士も管理されています。

その管理は、税理士システムで行われています。「税理士システムは、税理士等に関する情報を管理することにより、税理士制度の適正な運営確保を図ることを目的とする。」と明記されています。「税理士システム事務処理要領(税務署用)の制定について(事務運営指針)」(官総-83、官参5-2 平成20年6月27日付)の冒頭のシステムの概要のところで記載されています。

事務運営指針は、「事務処理の範囲」のところで、税務署において「税理士システム」を行う事務として(1)入力事務、(2)検索・照会事務、(3)帳票出力事務が掲げられています。

興味深いのは、(1)入力事務として、①税理士会支部の役職歴情報入力②文書情報入力③税理士等の関与先・使用人情報入力④税理士等の指導監督状況入力があります。同じような内容が、 (2)検索・照会にあるにかかわらず、(3) 帳票出力事務にはこれらが掲げられていないことです。

さらに、(1)②の文書情報入力として「附加情報メニューの文書情報更新画面において、指導・監督等を行う上で参考となる情報を文書(全角600字以内)で入力とするとあります。いわゆる定性(個人)情報、例として税理士等情報連絡せんの情報、調査等で把握した情報、部外情報等」とあります。

残念なのは、これらの内容が帳票出力されないので、非公開情報として、開示請求がかなわないことです。こういう現象を「情報の非対称性」と言うのではないでしょうか。つまり、一方(国税局)がそれぞれの税理士の情報を所有していて、仮にその情報が誤りであったとしても、もう一方の当事者(税理士)には、それを正す権能さえないことです。

日頃から税理士の社会的使命を全うしようと努力している会員からすれば、自浄効果が期待される内容(税理士が税務当局から、どのように判断されているか。)が開示されず、不意に懲戒処分されるのではないかという一抹の不安が払拭できないのが私の思いです。

税理士には、税理士法第1条においてその使命が規定されています。それは、「税務に関する専門家として、独立した公正な立場」において、「申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ」、租税に関する法令に規定された「納税義務の適正な実現を図る」ことです。

このため、税理士には様々な義務と責任が課されており、これに違反した場合には、懲戒処分等に付す規定が設けられています。

税務当局が作成した資料から、非行事例に以下のものがあります。

1 脱税相談等

2 故意による不真正税務書類の作成

3 過失による不真正税務書類の作成(相当の注意を怠った場合)

4 自己脱税

5 多額かつ反職業倫理的自己申告漏れ

6 業務懈怠

7 その他反職業倫理的行為

8 2か所事務所設置違反

9 使用人等に対する監督義務違反

当然ながら多くの税理士には心当たりのないことばかりと思いますが、実際、私たちは税務当局からどのように見られているのでしょうか。

「独立した公正な立場」を堅持しながら、マイナンバー等これからも法令の遵守がますます求められる立場として、税理士システム等の開示請求がなされることで、「自律・自戒に基づき適正な業務遂行に励める」環境づくりがなされていくことを強く望みます。