カテゴリー: 経営環境

安倍元首相の国葬の是非を考える~二度にわたる消費税増税で国民・中小零細企業が窮地に~

参議院選挙後半戦の7月8日、遊説中の奈良市で凶弾に倒れた安倍晋三元首相には、謹んで哀悼の意を表します。このような暴挙は断じて許されるものではありません。

ところで政府は7月22日の閣議で、安倍首相の国葬を9月27日に日本武道館で実施すると決めました。その名称は「故安倍晋三国葬儀」で岸田文雄首相が葬儀委員長を務め、費用は全額国が負担と言う内容です。

そもそも国葬というのは、民主主義社会においては国家が主体となり、国民も政府も納得した上でその人を顕彰するために行うべき儀礼のはずです。安倍元首相の政治的な立場・姿勢に対する評価は人によって大きく分かれます。国葬をするということは、国家としてそれを全面的に公認し、賛美・礼賛することに繋がるのではないでしょうか。

国葬の閣議決定について、中日新聞と南日本新聞は「LINE」を使ってアンケートを実施していますが、両新聞とも反対が7割を超えました。保守層や自民党支持層についても国葬に懸念や違和感、疑問を呈する声も広がっています。

岸田首相は国葬をする理由について、「日本経済の再生」「日米関係を基軸とした外交の展開」「東日本大震災からの復興」をあげていますが、消費税の観点から考えてみます。

NHKの「日曜討論」(6月19日放送)で、野党が「消費税減税をしないのはおかしい」と追及すると自民党の高市早苗政調会長は、「消費税が法人税の引き下げに流用されているかのような発言がこの間から何度かあったが、全くの事実無根でございます。消費税の使途は社会保障に限定されている。でたらめを公共の電波で言うのはやめていただきたい」と反論しましたが、その発言は消費税法1条2項を根拠にしています。

たしかに同条項は「年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てるものとする」と定めています。2014年4月にこの条項は追加されましたが、これは不況に喘ぐ国民からの非難を抑えるための苦肉の策でした。

しかし、いくら法律で使途を規定しても、消費税は特定の経費に充てる目的で課す目的税(都市計画税・入湯税など)ではありません。使途を特定せず一般経費に充てる目的で課す普通税です。高市氏の全く根拠のない発言は、ネット上でも大炎上を余儀なくされました。

そもそも日本経済を決定的に悪化させた要因は、安倍政権下における2014年4月と2019年10月における2度にわたる消費税の増税であることは明らかです。大企業や大資産に対する減税の穴埋めにこの消費税増税は使われ、もともと不況が長期化していて脆弱であった個人消費はさらに落ち込み、中小零細企業はさらに痛めつけられました。

1989年の消費税導入から34年で消費税の総額は476兆円です。他方、法人税(法人地方税も含む)は324兆円の減収、所得税・住民税は289兆円も減収になっています。

日本を成長しない国にした元凶は、消費税の導入、とりわけ不況時における2度にわたる増税は安倍政権下の失策だといえるでしょう。そうした意味で、安倍元首相が「日本経済を再生した」とはとうてい評価できるものではないといえます。

インボイス制度導入は消費税減税で不必要に~参議院選挙で野党が減税を公約に掲げています~

参議院選挙の投票日(7月10日)が迫ってきました。大きな争点として国民生活を直撃している急激な物価高から国民生活をいかにして守るかの課題があります。

生活必需品の多くのものがものすごく値上がりをしています。私が健康のために愛飲している豆乳も4月から6%上昇しました。朝食で食卓に登場する食パンも9.4%、休日の昼食でよく食べるスパゲッティは11.3%、野菜炒めの材料になるキャベツは40.6%、タマネギに至っては何と125.4%の値上げです。エネルギー関連の値上げも深刻です。猛暑が心配な今年の夏ですが、電気代は約20%、ガス代、ガソリン価格も大幅に上昇しています。

これらの原因は、異常な円安、ロシアのウクライナに対する軍事侵攻、世界(日本を除く)の景気回復などと分析されています。物価高の最も効果的な対策は消費税の減税です。その効果は消費に占める生活必需品の割合が大きい低所得者ほど現れます。そこで、政権与党(自民党と公明党)以外の政党が、多少のニュアンスの違いこそあれ消費税の5%への減税を公約にしています。

他方、与党の言い分は「消費税は社会保障の財源である」と言ってはばかりません。確かに消費税法の第1条には消費税収について「年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てる」と明記されていますが、この規定は消費税を段階的に引き上げる2012年に増税の言い訳として書かれたに過ぎません。

もともと、消費税導入は1986年に経団連が政府に提言した、法人税と所得税の引き下げの財源として「国民が広く薄く負担する税体系の構築」を端緒にしています。この提言を受け、自民党は1988年6月に税制改正大綱に「直間比率の是正」を掲げ、同年7月に当時の竹下首相が消費税法案を国会に提出して、翌年1989年4月1日から導入されました。

消費税が導入されて以後、消費税は国と地方を併せて476兆円の税収をもたらしましたが、法人税(法人地方税を含む)は324兆円、所得税・住民税は289兆円の減収になっています。つまり、消費税は、社会保障のためではなく、大企業や大金持ちの減税に使われたことになります。

自民党の茂木幹事長は、「消費税の減税を実施すると、現在の社会保障財源は3割以上カットしないといけなくなる」との問題発言をしています。そればかりか、岸田首相は、防衛費を現在のGDP(国内総生産)比1%から2%にすると国際的に「公約」しました。財源はどうするのでしょうか。「消費税を増税する、医療費負担を大幅に増やす、年金をさらに削る」いずれにしても負担は、この20年間賃金が下がり続けている唯一の先進国に暮らしている人々にしわ寄せがくることになるでしょう。

消費税を減税し、庶民の懐を温かくして経済の好循環を進めていくことが急務になっています。消費税を減税すれば複数税率は解消され「インボイス制度」の論拠が崩れてしまいます。既に、世界では90を超える国や地域が消費税(付加価値税)の減税を実施・予定しています。日本でできない理由はありません。審判の時が刻々と近づいています。

メデイアはなぜインボイス廃止法案を取り上げないのか~メデイアはインボイス制度の本質について取り上げるできです

NHK政治マガジンは、立憲民主党が提出したインボイス廃止法案について次のような報道をしています。

『事業者の納税すべき額を正確に把握するため、消費税の税率や税額を記載する「インボイス」と呼ばれる請求書の作成が、来年から事業者に求められる制度について、立憲民主党は、3月30日、中小・零細事業者などの大きな負担になるとして、廃止するための法案を国会に提出しました。

~中略~立憲民主党はインボイスの作成は、中小・零細事業者などの大きな負担になり、コロナ禍や物価の高騰で直面している厳しい状況に追い打ちをかけることになりかねないなどとして、制度を廃止するための法案を衆議院に提出しました。

立憲民主党の末松義規衆議院議員は記者団に対し「現在の制度でも、事業者の納税額は適正に把握できるので、インボイス制度は不要だ。立憲民主党としては、短期的な経済対策として、消費税率の5%への一時的な引き下げも主張していく」と述べました。』という事実関係だけを述べた記事です。

実際、インボイス制度で大きな影響を受ける人は、消費税の免税事業者(推定1000万人超)だけでなく、そうした事業者と取引をしている課税事業者も含め社会的な大問題です。

この制度により影響を受ける業種は、一人親方などの建設関連の下請け業者、外注化された社員、赤帽など軽トラックの配達請負業者、ウーバーイーツなどの宅配業者、個人タクシー、英会話学校や塾の講師、映画・演劇の俳優や声優、編集者、音楽家、漫画家やイラストレーター、農家、生命保険・損害保険の代理店、貸家や駐車場経営者、電気やガスのなどの検針員、内職者、ヤクルトレディー、シルバー人材センターの会員など多岐にわたります。

メデイアは前回の総選挙後から特に「野党は批判ばかりだから選挙に負けた」との主張を繰り返しています。野党の役割は権力の監視で、政府・与党の追及です。それこそが民主主義を機能させることに繋がります。野党が批判を加えてからこそ、行政の歪みなどが国民へ知らせることになります。議会制民主主義の母国であるイギリスでは、野党のことを「オポジションパーティ・反対党」と表現するそうです。

他方、メデイアの「批判ばかり」は事実なのでしょうか。2017年11月に開会された第195国会から2021年6月に閉会した第204国会までの政府提出案のうち賛成した主な野党の賛成率は、立憲民主党82.6%、日本維新の会88.7%、日本共産党53.9%です。また、165本の対案となる法律も提出しています。このことからメデイアの野党批判は相当とはいえません。

さて、参議院選挙が間近に迫ってきました。この選挙で大きな争点の一つが小規模事業者に新たな税負担と事務負担を強いるインボイス制度です。メデイアには大きな社会問題として既に野党が提案している法案を形式的な論評だけでなく、その本質をえぐるような報道をすることを期待しています。この制度が導入されたら、やがて消費税の税率はヨーロッパ並の20%になるのではないかと危惧しているのは私だけではないと思います。

官房機密費は今年度末も使い切るのでしょうか?!~そのどす黒い闇に迫ってみます~

わが国の会計年度は4月から翌年3月となっています。大企業を中心に多くの企業や団体などがこの会計年度をとっているのは、国や地方自治体の会計年度と合わせているからだといわれています。

ところで日本の予算制度は、単年度主義をとっています。使い切れなかった予算は、次年度に繰り越されます。つまり、実質的に新たな予算が少なくなってしまうのです。これでは削減できる良いアイデアがあっても削減しようという発想にはなりません。

その予算制度の弊害の最たるものが「内閣官房機密費」です。「内閣官房機密費」の正式名称は「内閣官房報償費」といいます。この予算は、国政の運営上必要な場合において、内閣官房長官の判断で支出される経費に当てられとされています。国政を円滑に運営する支出される趣旨から「権力の潤滑油」などとも揶揄されています。会計処理は内閣総務官が所掌しています。

問題は、その支出には領収書が不要で、会計検査院による監査も免除されており、使途が公開されることがないことです。この不透明な使途に国民からその支出の開示を求める声が多く上がっています。

近時、国民の知る権利について政府や企業は不十分ながらもその開示に対応をしつつあります。定量情報(数字で表せるこことが可能なもの)だけでなく定性情報(数字では表せないもの)もどのように開示すべきかについて腐心をしています。

そうした動きに逆行するのが「官房機密費」です。その歴史は古く最初に計上されたのは1947年です。戦後の混乱期においては「表に現せない支出」も一定程度必要だったかもしれませんが、その支出は年々増加をし、2016年には年14億円を突破して、財政が逼迫をしている中でも、減額にはなっていません。そもそも、国民の税金であるにもかかわらず開示できないことについて、大きな疑問が生じます。

さらなる問題が、年度末に使い切ると言うことです。もともとこの支出は、必要な都度に内閣官房長官の判断で機動的に使用することが趣旨の経費です。つまり、使うときもあれば使わないときもあるということです。ところが、度末の3月になると毎月の倍近いお金を支出しています。その結果、余ったら本来国庫に返納された金額はここ数年間、少ない年で僅か1万円、多い年でも13万円しかありません。

政治資金の問題に詳しい浦野広明税理士は「『機動的に』使うといいながら、毎年3月に支出が増えるのは明らかにおかしい。この支出が必要な場面が3月に集中するとでもいうのだろうか。しかも、予算ぎりぎりに使うというのは、狙ってやらないとできない。目的外の支出、私的流用の疑いがある」と指摘されています。

河井克行元法相夫婦の広島買収事件でもこのお金が使われたいという疑惑が濃くなっています。税金の私物化の疑いがきわめて強く、自民党の選挙対策、はたまたマスコミ対策等に使われているといわれているこの支出です。「クリーン」を売り物にしたい岸田首相、「聞く耳を」をもって、このどす黒い闇支出をいい加減やめせんか。

新しい資本主義を考える!~分配重視の好循環を~

岸田首相の看板政策は「新しい資本主義」です。この言葉は、衰退しつつあるわが国の経済を再び好転させてくれるのではないかという前向きで明るいイメージが感じられ、万人が好印象をもつ、とても響きの良いキャッチフレーズです。

経済学の通説では、市場での自由な競争に委ねれば、経済格差が拡大し、人類の存亡にかかわる環境破壊にもつながるとされています。

こうした「新自由主義のシステム」から脱却して、持続可能な社会を実現するという高い志からの発言であればまっとうなものであり、ぶれずに実行して欲しいと願うばかりです。

ところがこの首相肝いりの「新しい資本主義」に対してマスコミは酷評しています。例えば3月9日付けの朝日新聞では次のように言及しています。

『~そもそも、新自由主義からの脱却を掲げ、中間層の所得向上をめざすと宣言した「ビジョン」づくりは漂流しかかっている。昨秋の自民党総裁選挙で公約した看板が先行し、「ビジョン」が後回しになっていることが原因だ。~

「新しい資本主義」をめぐる国会論議も低調だ。首相は「成長と分配の好循環」という基本的な答弁を繰り返すばかりで、活発なやりとりには発展しない。

その一方で、政治決断が必要な問題は先送りし続けている。分配の目玉として訴えていた富裕層増税のための金融所得課税強化は、首相就任直後の株価下落を受けて早々と棚上げ。二酸化炭素(CO2)の排出量に応じて課税をする炭素税は、産業界の反発を考慮して見送った。~』

「成長と分配の好循環」を税制でどう解決をすれば良いのでしょうか。日経新聞2月23日号の「好循環生まぬ企業の分配」に次のようなくだりがあります。

「~賃金や配当、投資に回らない資金は積み上がっている。財務省の法人企業統計によると、日本企業(金融などを除く)の利益剰余金(内部留保)は20年末に484兆円と過去最高を更新した。手元にある現預金も259兆円に膨らんだ。~」

つまり、大企業を中心に税制上の優遇措置の追い風も受けて莫大なお金が蓄積されているという現実が横たわっていると言うことです。企業が儲かれば個人所得も増加し、経済全体が良くなるという「トリクルダウン」は起こりませんでした。敷衍すると、富が一部の大企業や大資本家に偏在し、世の中にお金が回らなくなり、内需が停滞して、日本経済は長きにわたり停滞をして、先進国の中では類をみない「成長できない国」と化したのです。

この悪循環をただすためには、お金を循環させる政策への転換が必要です。人件費削減を目的にした労働法制の規制緩和による非正規化の抜本的な転換が必要です。

さらに、労使折半となっている社会保険料の割合をEU並に改め、労働者の手取り賃金を増やすことが有効です。もちろん、財務体質が不十分な中小企業には国からの直接的な支援が必要です。

財源は、大企業の内部留保に対する応分の課税と金融所得課税の適正化でまかなえます。税の公平性を担保し、結果として労働者の賃金に回る好循環をつくり出す政策は有効です。

小選挙区制度は廃止すべきです!~人物本位で選ぶ中選挙区制度と政党本位で選ぶ比例代表制度の組み合わせがベスト~

「1票の格差」が最大2.08倍だった2021年10月の衆院選は「投票の価値の平等に反し違憲だ」として、弁護士グループが岡山県内の選挙区選挙の無効を求めた訴訟の判決が、2月10日広島高裁岡山支部であり、裁判所は「合憲」と判断しこの請求を棄却しました。

昨年の衆院戦での一票の格差をめぐる訴訟の判決はこれで6件目になりますが、「合憲」と「違憲」がそれぞれ各3件となりその判断が大きく分かれています。訴訟は全国14の高裁・支部で提起されており3月までに判決が出そろいます。その後、最高裁が年内にも統一判断を示す見通しになっています。

一票の格差については、最高裁大法廷が2009年以降の衆院選について、3回連続で「違憲状態」としました。それを受けて国会は16年、都道府県の人口比をより反映しやすい「アダムス方式」の導入を決め、経過措置として小選挙区の定数を「0増6減」としました。ただ昨年の衆院選ではこの方式の導入が間に合わず、2倍を超える格差が生まれました。

今後、衆院選挙区画定審議会(区割り審)は6月25日までに、新たな区割り案を首相に勧告する予定です。この案では「10増10減」を軸に調整が進められていますが、自民党の内部では異論が噴出しています。例えば山口県では、定数が4から1減少して3になり、安倍元首相(4区)と林外務大臣(3区)の公認争いになるとの見方も出ています。

朝日新聞は、2月11日の1面トップに、2040年「16増16減」という大見出しで「アダムス方式」を当てはめた試算がされていました。試算を都道府県別でみると、40年には東京が8増、神奈川が3増などで、山形、栃木、新潟、岐阜、長崎などが各1減となるとしています。この記事で減少となる16都県では、戦々恐々となっているのではないでしょうか。

いま小選挙区制度の矛盾が露呈しています。この制度にしがみつく限り、こうした問題は未来永劫続きます。小選挙区制度では、有効投票の多数で当選者が決定まり、当選者以外の候補者に入れた票は無かったこと、つまり「死票」となります。民意を歪め、その結果投票率をも下がり、さらに政権与党に圧倒的に有利な小選挙区制度は廃止し、多様な民意が正しく国政に反映される選挙制度に改革する必要性があるでしょう。

朝日新聞のオピニオンの投稿(21年11月6日付)でなるほどと頷かされた投稿があったので紹介します。「~前略~『田中角栄 戦後日本の悲しき自画像』」(中経出版)の一節を思い出した。中選挙区制の時代、旧新潟3区には、角栄氏のほか、社会党の三宅正一氏がいた。選挙戦の街頭演説で、角栄氏は『この選挙でわれわれは勝たねばならないが、農民の恩人である三宅先生だけは落選させてはいけない。もし落選させたら新潟県人の恥になる』と話したという。~中略~人物を選びやすくするためにも中選挙区制の復活を望む。その方が民意がより国会に反映されるはずだと思う」この意見に賛同します。

さらに、定数の半分を人物本位で選ぶ「中選挙制度」と半分を政党本位で選ぶ「全国区比例代表制度」の組み合わすのが理想の選挙制度だと思います。

こうした選挙制度の改革と併せて、有権者の権利でもあり義務でもある投票を必ず行い政治に自ら進んで参画する意識を持つことが大事です。

辺野古新基地建設の警備費、何と1日2750万円~住民運動の監視に巨額の税金~

防衛省沖縄防衛局が、沖縄県名護市の辺野古新基地建設の警備業務の費用についてコメントをしました。

その業務契約は陸上と海上とそれぞれ別にされていて、建設に着工した2014年7月から21年12月までで、陸上警備業務・海上警備業務それぞれ約300億円で合計約600億円が支出されています。さらに埋め立て工事契約の中にも警備業務が含まれています。その金額は約150億円で、合計すると750億円を超えます。これらを単純に契約日数で割ると、1日あたり約2750万円になります。地方の新築住宅1棟分に相当する金額ですから驚きです。

基地建設に反対する人からは「辺野古の海上では朝7時から1日10隻ほどの警備船が配置され、制限水域から『出てください』とアナウンスするだけ。10隻の必要はなく、税金の無駄遣い。警備費が膨大なのは、県民の理解が得られていないことの裏返しに他ならない。新基地建設に湯水のように税金を使うのではなく、沖縄の経済や医療に回すべき」との声が上がっています。

安倍・菅・岸田政権は、沖縄県民に「よりそう」と言ってきました。その本心は、「沖縄振興対策費は上積みするから、新基地建設には反対するな。」とでも言いたいのでしょうか。

しかも、埋め立て工事の海域には、「マヨネーズ並」といわれる軟弱地盤が存在し、それを改良するために当初5年としていた工期は9年3カ月に延び、工費も約2.7倍の約9300億円に膨らむことが伝えられています。

その渦中の名護市で、先月(1月)23日に市長選挙がありました。その結果は、自民・公明両党が推薦した現職の候補者が57.5%を獲得し再選されました。得票率は68.32%で過去最低になり、前回を8.6%で前回を大きく下回りました。また、期日前投票が投票総数の6割を超えるという異例の選挙戦でした。

その結果をどのように考えたら良いでしょうか。25日の朝日新聞の天声人語(抜粋しています)は次のように伝えています。

「~1997年、移設の是非を問う住民投票があった。反対票が賛成票を上回り、過半数をしめた。~しかし、その後の政府の振る舞いぶりをみると、直接民主主義であれ、間接民主主義であれ、移設への抵抗を示す沖縄の世論を切り捨て続けている。『オール沖縄』を掲げて移設に反対した翁長雄志氏が県知事に当選したときも、聞く耳を持たなかった。辺野古の海に土砂が投入された後の県民投票で、埋め立て反対が7割を上回ったが、作業をやめようとはしなかった。~相手が何を言っても無視するというのも、精神的な暴力にあたる。抵抗する意思を失わせるための手法である。基地を受け入れるとも、反対するとも言わない『沈黙』の市長が2期目の当選を果たした。反対しても無駄だと思わされてきた末の結末だろうか。過去最低であった投票率からも、諦めの気持ちがにじんでいる。」

やるせない名護市民・沖縄県民の思いを私たちも当事者意識を持って真摯に受け止め、この問題をどう捉え、どのように行動するかをわが身のこととして考える必要があります。

時代に取り残されないための30のワード~いなさら聞けない重要単語をひもときます~

「通販生活」というカタログハウス(ユニークな商品を通販で売っている会社で、テレビCMもしています)が刊行している季刊誌の2022年春号にカタカナ語辞典という付録がありました。日常生活で使う「カタカナ」から502語が厳選されています。それを参考に、30の単語を4区分にまとめてみました。

A+(知らないと時代から完全に取り残される)

ICU……集中治療室。大手術後の患者や重傷患者を特別な訓練を受けた医師や看護師が24時間交代で見守り、高度な治療を行う病室のこと。

インフルエンサー……世間に大きな影響を与える人で、芸能人、スポーツ選手、有識者やユーチューバーと呼ばれる人気動画投稿者のこと。

エッセンシャルワーカー……医療・介護、日用品店舗従業員、警察官、消防士、公共交通の運転士、ゴミ収集など社会生活に欠かせない職業に従事している人のこと。

クラスター……コロナなどの疾患が特定の条件下で蔓延する集団感染。

ジェノサイド……ある人種、民族、宗教、思想に属する人々を計画的に絶滅させること。

スクリーニング検査……地域、職場、学校、新生児、妊婦、高齢者などの集団の中から病気の疑いのある人を発見するための検査。ふるい分け試験ともいう。

バズる……短期間で爆発的に話題が広がり、多くの人の注目を集めること。

フェーズ……段階、局面。単位や数字で明確に区切れないが変化するものに使われる。

ボトルネック……障害、支障。円滑な進行や発展の妨げになるものや場所のこと

ポピュリズム……大衆主義。大衆の意見を尊重した政治的主張や政治運動のこと。

A(知るとニュースの理解が深まる)

アナフィラキシーショック……アレルギーを起こす物質が体内に入ることで、急激に発症するアレルギー反応(じんましん、呼吸困難、腹痛、嘔吐など)をいう。

インボイス……商品名、金額、適用税率、消費税額が記載された適格請求書のこと。

M&A……企業の合併・買収のこと。相手方企業の資本や人材、経営手腕などを取り入れ、相互に自社の弱点を補うための手法。

デドックス……解毒・浄化。体内の有毒物や老廃物を排出すること。

パラダイムシフト……一般的、常識的とされる考え方や枠組みが劇的に転換すること。

フードバンク……製造や流通段階で出る余剰品や賞味期限が迫って廃棄される予定の食品を企業などから寄付を受け、必要な人や団体に無償で提供するボラティア活動のこと。

フェイクニュース……主にインターネット上で拡散される、事実とは異なる情報のこと。

プレゼンス……存在、存在感。個人や企業、国家に対して使われ、特にある地域に対して軍事的・経済的に影響力があることを指す。

ベーシックインカム……すべての個人が生活するために必要とする基本的な所得を無条件で現金給付する制度のことをいう。

リカレント教育……社会人になってから再度学校などの教育機関で学び、また社会に出るのを繰り返すこと。社会人の学び直し。

B(知ったら他人に教えたくなる)

EV……電気自動車のこと。ガソリンや軽油などの石油資源を使わず、車に搭載したバッテリーに充電した電気を使って走る。環境に優しい自動車として期待をされている。

クオータ制……政治、行政、企業の組織内で、役職の男女間格差をなくすため、事前に取り決めた一定数を両者に割り当てる制度のことをいう。

ダイバーシティ……多様性のこと。会社の組織管理や人事の分野では、性別・国籍・年齢・宗教などで区分せず、様々な人材を積極的に受け入れようとする考え方を指す。

デカップリング……連動性の強い二つのものを切り離すこと。経済成長や利便性を保持したまま消費エネルギーを減らした状態などのことをいう。

レガシー……遺産、語り継がれる業績のこと。東京オリンピックの時に多用された。

C(知らなくても暮らしに支障はないけど)

アンバサダー……大使、施設、代理人のこと。企業や組織の依頼を受けて商品やサービスの認知度を向上するために活動する人。

イシュー……議論すべき課題、問題点。長期にわたって検討するという意味合いが強い。

オルタナティブ……代替物。他の選択肢。元は二者択一の意味。通称オルタナ。

サステイナブル……環境破壊をせずに維持、継続する経済活動のことをいう。

バイアス……傾向、偏向、先入観、データ等の偏り、思考や判断に特定の偏りをもたらす思い込み要因、得られる情報が偏っていることによる認識の歪みのことをいう。

 

「思いやり予算」新協定で負担増~思いやるべきは米軍ではなく、国民の命と暮らしです~

日米両政府は今月7日、外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)を開催し、2022~26年度まで5年間の米軍に対する「思いやり予算」(在日米軍駐留経費負担)の新たな特別協定に署名しました。政府は17日からの通常国会にこの協定を承認案件として提出し、3月末までの承認をめざしています。

日米両政府は昨年12月21日、「思いやり予算」にかかわる新たな特別協定に基本合意しました。その内容によると、今後5年間の負担総額は、16~20年度より1086億円増の1兆551億円に及ぶ見込みです。

米軍駐留経費負担の根拠になっている日米地位協定は1960年に締結されました。その第24条では、米軍基地を提供するために要する地権者補償などを日本側が、それ以外に生じる全ての維持経費を米側がそれぞれ負担すると規定しています。

しかし、駐留経費の一部を日本が負担する仕組みは、米側の「円高・ドル安」を口実として78年から始まりました。この年は基地従業員の福利費、翌年には米兵用の住宅や学校などの施設整備費なども負担するようになりました。

当時の金丸信防衛庁長官が国会審議で「思いやりがあってもいい」と発言し、以来この負担は「思いやり予算」呼ばれるようになりました。同時に、政府はこれらの支出を「地位協定の範囲内」と拡大解釈をするようになりました。しかし、米国からの負担要求はさらに強まり、解釈では乗り切れなくなったために87年度からは「特別協定」を締結するようになり、現在のように労務費や光熱水費を負担するようになりました。96年からは、訓練移転費までも負担するようになりました。

「思いやり予算」は、90年代まで増え続け、99年には歳出ベースで2756億円にもなりました。さすがに米軍が使うボーリング場やゴルフ場の整備などに対する費用負担は批判の的となり、その後は無駄を削減せざるを得ませんでした。

他方、「思いやり予算」の通称について米国側は、日本による駐留経費負担は当然の「責任分担」であると不快感を示していました。そこで、政府は今回の特別協定から「自衛隊の能力強化へも資する」としてその名称を「同盟強靭化予算」と改めることとしました。おまけに、訓練機材調達費を新設し5年間で最大200億円の負担をすることになりました。

防衛省の試算では、日本政府の米軍に対する在留経費の負担割合は86%で同様の負担をしている韓国の40%やドイツの32%よりも突出して高いことはあまり知られていません。

沖縄や岩国だけでなく各地の在日米軍基地でオミクロン株の大規模な感染が相次ぎ、その地元で住民の感染が爆発的に拡大しました。米軍のずさんな感染防止態勢が明るみなっているにもかかわらず、政府の対応はきわめて及び腰と言わざるを得ません。

政府は社会保障費や教育費など生活予算を削減するばかりか、消費税の増税で国民は塗炭の苦しみを強いられています。米軍ばかりを思いやる政府の姿勢に国民の怒りが噴出するのは当然です。思いやるべきは、米軍ではなく国民の命と暮らしではないでしょうか。

インボイス制度廃止には消費税の減税が最も有効!~総選挙の公約を実現することが喫緊の課題です~

来年(2023年)10月1日からインボイス制度が実施されようとしています。すでに、昨年10月1日よりインボイス制度の登録申請が開始されましたが、その周知がされていないのが現実です。

日本商工会議所の昨年11月10日のアンケート調査によると、インボイス制度への準備状況で、「対応を始めている」と回答して割合はわずか6.4%で、「何もしていない」と回答した割合は59.9%にものぼり、実に92.7%の企業が具体的な対応をしていないことが浮き彫りになっています。

また、昨年10月11日号の納税通信では「内容を知っている」「対応を検討している」がいずれも1割台で「制度がわからない」「検討していない」がいずれも8割を超えています。

財務省の思惑は「論語」にある「知らしむべからず、由らしむべし」を地で行っているのではないかと疑わざるを得ません。つまり「人民大衆というものは、政府の政策に盲目的に従わせておけばよいので、彼らには何も知らせてはならない」、有り体に言えば「このインボイス制度の真の姿を中小零細事業者に知らせるとすったもんだの大騒ぎになる」ことを恐れているのではないでしょうか。

消費税は導入時の3%から、5%、8%、10%と順次引き上げられてきました。その都度、中小零細事業者は、消費税の欠陥の一つである「価格への転嫁」が力関係で決まることで、元請け先からの値引き要請に甘んじ、元請け分の消費税分をかぶらされてきました。今回のインボイス制度でも同様なことが繰り返されることが容易に想定されます。

このインボイス制度導入の理由として「複数税率」になったこととしていますが、今の帳簿方式で十分に対応できます。おそらく、現在の軽減税率(8%)と標準税率(10%)の差を遠くない将来に広げていく、つまり標準税率をEU並の20%位にしたいとの思惑が透けて見えます。

インボイス制度の理由が「複数税率」と言うなら、最も効果的なのが消費税を減税し、複数税率をなくすことです。

昨年10月末に実施された総選挙では、安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合と立憲民主党、日本共産党、れいわ新選組、社会民主党の4党による政策合意で、消費税の5%への引き下げが共通政策になりました。

また、躍進した日本維新の会も2年間、国民民主党も経済状況が好転するまでの間という限定付きですが5%に引き下げるマニフェスト(公約)を掲げて戦いました。政党として消費税引き下げを拒否しているのは自由民主党と公明党だけです。しかし、自民党の若手議員を中心として消費税の引き下げを支持している議員が相当数います。

経済格差を是正するためにも「逆進性」の強い消費税の減税は効果があります。国民の世論と運動をさらに大きくして、喫緊に消費税の減税を実現すれば、インボイス制度の導入理由が存在しなくなります。今年は、消費税の減税が実現できる年にしたいと願っています。