国税庁のHPによると、『国税庁は令和7年1月から、申告書等の控えに収受日付印の押なつを行わない方針です。』としています。
その趣旨は要約すると、『国税庁においては、政府の「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を踏まえ、納税者の利便性の向上等の観点から、「あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会」を目指し、申告手続等のオンライン化、事務処理の電子化、押印の見直し等、国税に関する手続や業務の在り方の抜本的な見直しを進めているところです。
令和4年度のe-Tax利用率は、所得税申告で65.7%、法人税申告で91.1%に達しており、今後もe-Taxの利用拡大が更に見込まれるので、国税に関する手続等の見直しの一環としての措置です。』としています。
では、紙で提出している、個人で約3分の1、法人で約1割の納税者はどうしたらいいのでしょうか。国税庁は、『書面申告等における申告書等の提出(送付)の際は、申告書等の正本(提出用)のみを提出(送付)していただきますよう、お願いいたします。申告書等の控えへの収受日付印の押なつは行いませんが、必要に応じて、ご自身で控えの作成及び保有、提出年月日の記録・管理をお願いいたします。』としています。
つまり納税者の自己責任での管理を求めています。確定申告の内容を証する公的な書類が必要な場合はどうしたらいいのでしょうか。次の方法がありますが、いずれも納税者の時間と費用が発生します。①申告書等情報取得サービス(オンライン請求のみ)…マイナンバーカードが必要。②保有個人情報の開示請求・・・有料で300円(オンラインは200円)、取得に1ヶ月程度かかり、法人は使えません。③税務署での申告書等の閲覧サービス・・・閲覧先は税務署窓口のみ、写真撮影は可、申告当日は対応しない。④納税証明書の交付請求・・・有料で税目ごとに1年度一枚につき400円(オンライン申請は370円)となっています。
税理士会もこの国税庁の方針に異を唱えました。その反対に対して国税庁は、当初令和6年4月と予定をしていた実施期限を、令和7年1月と9ヶ月延長をしました。
多くの反対の中で、国税庁の方針に柔軟化がみられます。令和7年1月以降、当分の対応として、窓口で交付するリーフレットに申告書等の提出を収受した日付や税務署名を希望者に渡すというものです。そんなめんどうなことをするなら、従前通り収受日付印の押なつの対応をすればすむことです。ほかの省庁では、収受日付印押なつは継続するのに国税庁だけが異例の方針を決めています。
インターネットやパソコン等の情報技術を利用できる人とできない人との間に生じる格差をデジタルディバイドと言います。利用の格差は、高齢者、低所得者、ひとり親層、単身者に多いと言われています。省庁の中でも総務省は、インターネットにアクセスできないことで生活に必要なサービスにアクセスできず、負の連鎖を生むことを懸念しています。
そうした中で、国税庁が今般の収受日付印押なつの廃止措置により、e-TAXに半ば強制的に誘導することは総務省の考え方に反すると言わざるを得ません。大いに異議ありです。