最近多くの自治体で納税者の実態をつかまないまま差し押さえをするケースが増えています。『多くの自治体では、公的な保護・援護等として支給されたもの給付は差押禁止財産だが、これらが預貯金の口座に入った時点で、“受給者の預金債権に転化し、受給者の一般財産になるから、この預金債権は原則として差押等禁止債権としての属性を承継しないとした平成10年2月10日の最高裁判決をもとに、差押えが可能との立場をとっていました。』(土佐のまつりごと 鳥取県の児童手当差し押えは違法 判決が確定 2013年12月16日ブログ記事より引用)
『税金の滞納を理由に鳥取県が、禁止されている児童手当の差し押さえをしたのは違法だとして、鳥取市内に住む自営業の男性(40)が県を相手取り、処分の取り消しと損害賠償を求めた訴訟の判決が29日、鳥取地裁(和久田斉裁判長)でありました。判決は差し押さえを違法と認め、「子を持つ父親として多大な精神的苦痛を被った」として慰謝料20万円と弁護士費用の支払いを命じました。
訴えていた男性は病弱な妻と子ども5人の7人家族(当時)で、本業の収入が激減したため、個人事業税や自動車税約24万円を滞納していました。2008年、2カ月半にわたり残高73円しかなかった銀行口座に児童手当13万円が振り込まれた9分後に、県は全額の13万73円を差し押さえました。児童手当は滞納していた子どもの教材費や給食費にあてる予定で、その後、子ども1人が高校中退を余儀なくされました。
児童手当が銀行口座に振り込まれた場合、「一般財産と混在」するとして最高裁は差し押さえを認める判例(1998年)をだしています。判決では、最高裁の判例を踏まえ、差し押さえは原則として許されるとしながらも、県が児童手当によって租税を徴収することを意図し、児童手当以外に預金口座への入金がない状況を知っているか、知りえる状態にありながら処分を断行した場合は、児童手当法の精神からの裁量逸脱であり、違法と認定し、県の処分を取り消しました。国家賠償法の違法があったとしました。』(しんぶん赤旗 児童手当差し押さえは違法 鳥取地裁「税金滞納理由」に断罪 2013年3月30日より引用)
『納期が過ぎても、国民健康保険料(税※)や住民税などの納付がない場合、自治体による資産差し押さえが許されている。ただし、そこには「生活を圧迫してはいけない」など、国税徴収法に基づいた制限が加えられている。滞納に詳しい角谷啓一税理士はこう話す。
「滞納している側にも問題がある場合が多い。しかし、そうした納税者を処分、処分で突き放すのではなく、地方自治体本来の機能を発揮して、生活改善を含め納税者に寄り添った徴収行政をやってほしい。ところが最近の徴収行政は、滞納者の個々の実情を見ず、売掛金や給与や預貯金など、事業の継続や生活の維持に打撃となる財産を差し押さえたり、「差押禁止財産」の児童手当まで差し押さえるといった違法とさえいえる事態が広がっているのです」』(サンデー毎日 怒・やり過ぎだろ!急増 年金・保険を差し押さえる役所の非道 2017年2月12日号より引用)