みなさん、明けましておめでとうございます。今年こそ、世界が平和で紛争のない社会になることを念願しています。しかし、それは多くの人類の「希望」ではありますが、実態はそれとは反対の方向に向かう蓋然性が高いと思うのは私だけではないと思います。
無料のスマホのアプリに「らじる☆らじる」という便利なものがあります。都会ならクリアに聞こえるNHKのラジオが田舎やそもそも電波が入りにくい山の谷筋など不自由を感じる方も多いと思います。わが家も、FM放送が入りにくいのでケーブルテレビから配線をしています。するとものすごくきれいな音が聞こえます。特に音楽を楽しむためのFM放送に雑音が入っていたら興ざめです。
ところが、AM放送は雑音が入り聞くに耐えないような不快感があります。ところが「らじる☆らじる」は、全く雑音がないばかりか、「HHKラジオ第一放送が「R1」、同じく第二放送が「R2」と「FM」の3放送が今、どんな番組を放送しているかも表示されます。それだけではありません。番組表や聞きたい放送局の選択はもちろんのことチャンネル予約や曜日選択、通知タイミング、チャイム音の選択、バイブレーション機能など満載です。
まだまだ付加機能があります。「読むらじる。」という機能では、ジャンルごとに文字で表記されます。例えば、「エンタメ・音楽」「子ども科学電話相談」「くらし・健康」などのジャンルがあります。これがあると「聴覚に障がい」がある方でも使えます。
私が重宝しているのは、「聞き逃し」機能です。日頃は片道65㎞の自動車通勤をしているので、聴きたい番組をダイレクトに聴くことは事実上不可能です。そこで重宝しているのは、その分野の専門家がわかりやすく話してくれるビジネスに役立つものや川柳などの趣味に関するものの、高齢者の隠れたヒット番組の「ラジオ深夜便」、古典朗読などメニューは豊富です。
私が時々利用しているのが、「NHKマイあさラジオ」の「社会の見方・私の視点」です。その中の番組で新年の2日~4日まで3人の論者が「新春シリーズ2019年の経済展望」を番組のパーソナリティとインタビュー形式で放送していました。その要約を紹介します。
1日目は、立教大学大学院特任教授の金子勝さん、2日目は、慶應義塾大学名誉教授東洋大学教授の竹中平蔵さん、最終日は一般財団法人日本総合研究所会長の寺島実郎さんでした。
まず今年の経済を4文字で表現するという問い(宿題になっていたようでした)には、金子さんが「長期衰退」、竹中さんが「消長遷移」、寺島さんが「実事求是」でした。
金子さんの「長期衰退」の意味合いは「経済が国際的にみて長期衰退に入ろうとしているが、今の経済政策のやり方を変えて是非くい止める必要性があること」の意味合いを主張されていました。
竹中さんの「消長遷移(しょうちょうせんい)」の意味合いは、「第4次産業革命の中で、伸びていく企業とそうでない企業、伸びていく産業とそうでない産業、伸びていく国とそうでない国が出てくる、混沌とした時代」であることを主張されていました。
寺島さんの「実事求是(じつじきゅぜ)」とは、漢書に書いてあるように「事実に即して心理・真実を探求する年であり、過去のようなインチキやごまかしを捨てて物事の本質をえぐり出すことが大事だ」と主張されていました。
それぞれの論者の主張を要約すると、金子さんは、「リセッション(景気の後退局面)に入っていることは確実で、自動車産業以外の産業は衰退している。これをくい止め貿易収支の赤字をなくさないとバブル崩壊になってしまう可能性がある。円安・株高・貿易黒字の時代は終わった。日銀の大量金融緩和は、出口のないネズミ講のようで、止めたとたん、金利高などものすごいダメージがくる。マイナス金利政策で、高く国債を買っているので、満期償還後の差額は10兆円ある。いわば、政府の財政赤字を日銀に付け替えていることはあまり知られていない。その国債で日経平均株価などに連動した投資信託を大量に買って日本の株価を支えている。このまま株価が下がると日銀が債務超過に陥ってしまう。
それを防ぐためには、原発輸出や官民ファンドなどの失敗から学び、エネルギー・シフトや情報産業、バイオ医療に舵を切ることが必要。また、地域経済の内需や雇用を良くして地域分散型の社会へシフトする必要がある。格差の固定化を是正するためには、軍備に偏重した予算を捨て、子育て支援など国民が安心できる予算に組み替えていく必要がある」というものでした。
竹中さんの主張は「日本経済について強気の論者も多いが、昨年に比べその数は少なくなっている。アメリカ経済は良い。経済は、実物経済と金融経済に分けられるが、特に実物経済には死角がない。引き続き好調さをトランプ大統領が政策を総動員させて経済はますます良くなる。大幅な減税とFRB(日本で言えば日銀のような組織)にも口を出してこれ以上金利を上げさせない。
一方、金融経済は弱気である。株価は将来を見定める先行指標だが昨年はボラタイル(不安定という意味)の変動が大きくなって上値が重くなってきた。そのため、新興国のお金が大量に米国に流れ、その国はインフレになり、そのために世界経済自体が悪くなっている。アメリカがねじれ議会になってもやや強気の見方の方が多い。ただ、あまり楽観的になってはいけない。ここは、慎重にみておく必要がある。保護貿易主義や米中の貿易戦争が、世界経済を収縮させる。2019年にそれがスタートする。そういう意味では、やや弱気に立つことが必要。
日本国内は、10月に消費税が増税されるのが重要なポイント。これまで2回消費税の増税を引き延ばしてきたが、これ以上の引き延ばしは、総理やその取り巻きは増税したくないと思ってもこれ以上引き延ばすことはできない状況にある。消費税増税で、5.7兆円民間から吸い上げることになり、GDPを1%引き下げる要因となる。そうならないように、マイナス効果を打ち消す対策を取っている。食料品の軽減税率で1兆円位は国民にもどり、幼児教育の無償化などの社会保障は2兆円弱がもどってくる。プレミアム商品券、住宅減税などで消費税の増税とチャラになる政策を打つ必要がある。駆け込み需要で1.5兆円~2兆円があるが、マイナスの影響もある。来年度1.3%成長の強気の予測が出ているが少し慎重にみておく必要がある。」というものでした。
寺島さんの主張は、「ロンドンエコノミストなどを観ていると、世界経済はすでに変調して、減速していると多くの識者が論点にあげている。IMFの発表では、昨年の地球全体の経済成長は3.5%、今年の予想は当初3.7%であったが、下方修正して3%前半になる見通しだ。実体経済が地球全体で3%成長するというのは、長い歴史を振り返ってもかつてなかったと言うことができる。
ではなぜ、経済の減速不安があるのかと言えば、株式市場の乱高下にある。2017年にトランプ大統領が就任してからアメリカの株価は24%跳ね上がった。実体経済が3%しか上がっていないのに、株価が跳ね上がるのはマネーゲームの加熱と言ってもよい。日経平均も一昨年20%ニューヨークに引きずられるように上がったこと自体が異常である。トランプ大統領になったらだめだと言っていたウォールストリートは一転して、減税やインフラ投資をしていることを理由に加熱と言えるほど株価を跳ね上げたが、昨年は年初の株価よりも年末の株価が下回るような水準でニューヨークダウも日経平均も年を越した。株価が跳ね上がっているから景気が良いという景況感が問題である。株価が下降をすると実体経済が3%上昇しているにもかかわらず非常に悲観的になっている。株価だけを持って景況感を観てしまうことを改めないといけない。
平成という時代の30年間を振り返ってみても、冷戦が終結し、グローバル時代が招来し、金融市場がマネーゲームと化した。アジア通貨危機、エンロンの崩壊、そしてリーマンショックをウォールストリートは金融市場を拡大することによってこの危機を乗り越えようとした。
今や世界のGDPの4倍の金融資産がある。借金をしてまで景気を拡大しようと世界中の国家、企業、個人が金融市場にどっぷりはまっている。経済の話をしているときに株価と為替だけでいいのか。本当に景気を支えている産業や技術について論議をしなくなっている傾向になっていることに気がついていない。本質はアメリカの変化だ。トランプ大統領1人が世界をかき乱している。創造的破壊をしているトランプでも悪くないと思っていた人の血を凍らせているのが、米中貿易摩擦だがデジタル覇権を巡っても大きな争いになっていることだ。ワシントンにおけるトランプが機能不全になっている。国境に壁ができないことも、ロシアゲートにトランプファミリーが関わっていていた疑惑など米国の政治が揺らいでいる。ロシア・中国が強権的になっている。他にも様々な国で自己主張の強い政権が誕生してきているのは、アメリカが鏡になっているからだ。アメリカが自国の利害だけに走れば走るほど他国でもそうなる傾向になってきている。リーダーに堪えることができなくなって世界全体がそうなってきている。日本はもはや耐久性が弱い状態でリセッションを迎えているが、それでもまだ、お金をジャブジャブにして金融政策で乗り越えようとしているが、もはやその余力はない。健全な資本主義を考えるときにきているし、いやでも事実を観ることが大事である。」というものです。
最後に、パーソナリティから「今年の株価や為替の動向についてどうなるか?」との質問に対してどの識者とも共通に「不安定な展開になる」との予測でした。
3人がそれぞれの経済の展望について論じられていますが、私が経済のオーソリティの見解について論ずる資質を備えているわけではないので個別的な論評は差し控えますが、共通しているのは決して経済は「バラ色」ではないことでした。
私の経済について思うことの根底にあるのが、消費税の増税をするかしないかによってこの国の経済の形が大きく変わってしまう大きなターニング・ポイントにあると言うことです。
日本経済も金融資本主義に取り込まれています。その典型が年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)です。私たちの大事な公的年金の運用のあり方を大きく転換して、リスクの高い株式に大きく転換したのです。株価が今年の秋口から大きく下落したのに伴い、昨年10月から12月までの資産運用で過去最悪の14兆円の損失を被ってしまったのです。アベノミクスの唯一の評価は株価の高さでした。それが、見事に瓦解してしまった形になりました。
もし、消費税の増税とそれに伴う軽減税率やそれを保証する日本型インボイス制度が導入されれば、金融資本主義にどっぷりつかりアメリカの言いなりになっているわが国は、財政が厳しくなれば魔法の杖である「消費税の増税」でその穴を埋めることになる構造ができてしまいます。おそらくそうなれば早晩、EU並の20%程度の税率になることになるでしょう。
もともと消費税は「逆進性」の強い税金です。したがって、消費税の税率が上がれば上がるほど富の偏在が際限なく起きてしまうでしょう。今でさえ、貧富の差が拡大しているというのに、とんでもないことになります。おまけに、消費税の税率が高くなればなるほど輸出免税で海外への輸出割合が高い自動車産業は、笑いが止まらない状態になるのではないかと思います。
本来の税制のあり方は、累進課税が基本です。にもかかわらず、消費税が導入されてから、累進税率にゆがみが出てきました。一部の大企業や超富裕層にその恩恵が受けられる仕組みがすでにできあがっています。
消費税の増税は、その道を加速させるのか、あるいは消費税増税を三度延期して、「本来の税制のあり方」をもう一度大多数の国民が主体的に参加して日本の「社会保障のあり方」や「財政の危機」をどう乗り越えるかを真摯に論議すべきする機会にするのかが問われているのだろうと思います。