月別: 2020年3月

中小企業大臣の設置が焦眉の急ではないでしょうか!?

政府は、2010年6月18日政府は閣議決定で「中小企業憲章」を制定しました。

その前文では『中小企業は、経済を牽引する力であり、社会の主役である。~中略~政府が中核となり、国の総力を挙げて、中小企業の持つ個性や可能性を存分に伸ばし、自立する中小企業を励まし、困っている中小企業を支え、そして、どんな問題も中小企業の立場で考えていく。これにより、中小企業が光り輝き、もって、安定的で活力ある経済と豊かな国民生活が実現されるよう、ここに中小企業憲章を定める。』

基本理念では『中小企業は、経済やくらしを支え、牽引する。~中略~難局の克服への展開が求められるこのような時代にこそ、これまで以上に意欲を持って努力と創意工夫を重ねることに高い価値を置かなければならない。中小企業は、その大いなる担い手である。』

と高らかに表明しています。

最新の中小企業白書(2016年)によると、中小企業の数は357.8万社、うち小企業(商業・サービス業は5人以下、製造業その他は20人以下)は304.8社、大企業は1.1万社、わずか0.3%です。したがって、中小企業の占める割合は99.7%です。また、そこで働く人の割合は約70%と言われています。

「中小企業憲章」では「中小企業は、経済を牽引する力であり、社会の主役である。」と言いながら、2020年度の予算で付いた中小企業対策費は一般歳出のわずか0.27%で1,753億円(19年度比37億円減)です。1社あたり4.9万円しかありません。驚くことに賃上げ対策費は11億円、1社あたり300円という驚愕の数字です。中小企業庁は経済産業省の外局ですがその定員は195人、防衛省の外局である防衛装備庁の1,813人の約1割です。本当に「中小企業憲章」の理念通りの政策を取るとしたら、大企業におもねる政策ではなく、中小企業の懐があたためられるような政策と予算と人員配置をして欲しいものです。

昨年の消費税を期に事業を廃業された方もこの確定申告で垣間見られました。そこに、新型コロナウィルスでの「自粛騒動」でその数は加速度的に進むでしょう。

「オーバーの上からから背中を掻く」のようなやり方ではなく、正面から中小企業の廃業等極小化する構えが政治の世界で必要でしょう。ただでさえ、後継者不在率は全国平均で65.2%です。地元の山口では、全国ワースト3の74.7%です。私見ですが、中小企業大臣を新たなポストに置き、一桁多い予算と定員にすべきではないでしょうか。

不要不急な予算はたくさんあります。その最たるものが防衛費です。この歳出は、8年連続の増額で、はじめて、5兆3,000億円にもなりました。なんと中小企業関連予算の30倍です。例えば、戦艦大和とほぼ同じ大きさの「いずも」型護衛艦を空母に改修する費用は31億円です。賃上げ対策費「業務改善等助成金」は11億円の約3倍です。また、その空母に載せる戦闘機のF35Bを6機793億円出してトランプ大統領から押しつけられて買います。こうした攻撃型の防衛費は本当に必要なのでしょうか?多いなる疑義があります。

ヨーロッパの小企業憲章には「Think small first」と言う考えを表明しています。是非、政治家や官僚の皆さんはそれを見習って欲しいと切に願っています。

2020年予算を考える

2020年の予算を深掘りすると

(1)2020年度予算は過去最高のものとなった

①歳入の102.6兆円の内訳は税収入63.5兆円(61.9%)うち所得税19.5兆円(19.0%)、法人税12.0兆円(11.7%)、消費税21.7兆円(21.1%)、その他10.2兆円(9.9%)税外収入6.6兆円(6.4%)国債発行32.6兆円(31.7%)となっています。

②一方、歳出102.6兆円の内訳は、社会保障費35.9兆円(34.9%)、公共事業費6.9兆円(6.7%)文教科学振興費5.5兆円(5.4%)、防衛費5.3兆円(5.2%)その他10.0兆円(9.7%)地方交付税交付金15.8兆円(15.4%)、国債費23.4兆円(22.7%)となっています。政府が言う「プライマリーバランス」とはほど遠い予算です。

(2) プライマリーバランスとは

プライマリーバランス(Primary Balance)とは、国や地方自治体などの基礎的な財政収支のことをいいます。一般会計において、歳入総額から国債等の発行(借金)による収入を差し引いた金額と、歳出総額から国債費等を差し引いた金額のバランスを見たものです。プライマリーバランスがプラスということは、国債の発行に頼らずにその年の国民の税負担などで国民生活に必要な支出がまかなえている状態を意味します。

逆に、プライマリーバランスがマイナスということは、国債等を発行しないと支出をまかなえないことを意味します。

近年の日本は、プライマリーバランスがマイナス(赤字)の状態が続いています。国債残高の増加傾向に歯止めがかからない状況からも、早期のプライマリーバランスのプラス(黒字)化を目指していますが、政府が掲げている2025年度の黒字化の実現も困難だということが2019年1月の経済財政諮問会議に提出されました。(SMBC日興證券ホームページより)

(3)1990年度決算(消費税導入時)と2020年度予算との主な税収の比較

1990年決算 2020年度予算 増減
所得税 26.0兆円 19.5兆円 ▲6.5兆円
法人税 18.4兆円 12.0兆円 ▲6.3兆円
消費税 5.8兆円 21.7兆円 +15.9兆円

             

このデータから言えることは、①消費税が主要3税の中で一番大きくなったこと、②この30年の中で消費税が+15.9兆円になり、それが所得税と法人税の減税に使われたこと、③このままの流れで行けば、特に法人税の減税の財源として消費税が使われる可能性が大であることです。

(4)消費税を0%にするという声

新型コロナウイルスの感染拡大を受けた経済対策ついて、自民党の安藤裕衆院議員ら有志議員が3月11日、西村康稔経済再生担当相に、当分の間、消費税率を0%とすることなどを求める提言書を手渡した。

提言では、消費税は当分の間、軽減税率を0%にした上で、全品目に適用するよう求めた。6月頃には減税が実施できるよう調整を速やかに行うべきとした。

また減税分も含めて総額30兆円規模の補正予算を編成することも盛り込んだ。財源には国債を充て、政府が掲げる基礎的財政収支(PB)黒字化目標は、「当面の間延期」とした。提言には有志41人が賛同している。

安藤氏は政府の緊急対策について、「今の日本経済の影響を見ていると、とても規模が小さいし遅い」と指摘。1-3月期の国内総生産(GDP)も大幅なマイナスになることが予想されるとして、「今までにないような規模、発想の大胆な経済政策を打つべきだ」と述べた。

提言を受けた西村再生相は、新型肺炎の感染拡大は「経済に相当厳しい影響を与えてきているという認識」と述べ、「前例にとらわれず思い切ったことをやらないといけないということを頭に置きながら取り組んでいきたい」との考えを示した。(ブルームバーグより引用)

もちろん、野党の方からも当面5%に戻すことが現実路線として出されています。

個人的には、日本経済が大恐慌になる前に思い切って0%にして、新たな財源として消費税導入前の物品税への先祖返りをすべきだと考えております。その理由は、広く、薄く取る消費税より、消費者の購入の代替可能性、選択可能性が可能だからです。例えば1,000万円をする高級外車なら25%、軽自動車だったら5%という税率にすれば、「逆進性」の解消にもつながります。

(5)財源はどうするの(いずれも公平な税制を求める会の試算)

①所得税の税率を消費税増税前に引き直すと

申告所得税(最高税率75%)の増収13.4兆円+源泉分離課税(35%)の増収5.5兆円

②相続税を消費税増税前(最高税率70%)に引き直すと1.1兆円の増収

③法人税を現在の所得税並みの累進課税(5%、15%、25%、35%、45%)にすれば21.0兆円の増収

④①~③の合計41兆円の税収増が見込まれ消費税を0にしても19.3兆円の財源が生まれ2020年度当初予算の国債費23.4兆円をほとんどまかなえることができる。

ドイツにおける新型・コロナウイルス対策

ドイツで働いている娘からのLINEによる情報を提供します。既に、中国からヨーロッパに感染対策は移行しています。なぜかイタリアがもの凄いことになっていますね。

日本では『新型・コロナウイルスで休校やイベントの自粛が要請されている中、椎名林檎率いるバンド「東京事変」が2月29日、3月1日とライブを決行したことに「自己責任とかの問題ではない」「ウイルス封じは足並みそろえて徹底的にやらないと意味がないと思うけど」など、批判の声が殺到し、ついにその後の5公演が中止に追い込まれることになった。』(夕刊フジより抜粋)などあくまで「自粛要請」となっています。

ところがドイツでは事情はかなり違います。ドイツの正式名称はドイツ連邦共和国です。16の連邦州があり、ベルリンとハンブルクは都市州と呼ばれ、単独で連邦州を形成しています。ドイツの人口は約8000万人、面積は日本より少し小さい位ですが山間部が少ないので人口密度は全然違います。

ドイツは州に強い権限を集中させています。娘が住んでいるノルトライン=ヴェストファーレン州(州都はデュッセルドルフで、ケルンやボンも同じ州です。長いのでNRW州と略されることもあります。)

余談が長くなりましたが、娘のLINEを忠実に再現します。

『本日、NRW州保健省が新たに施行した政令は以下のとおりです。

○16日(月)以降、全ての遊興のための施設(バー、(ナイト)クラブ、ディスコ、カジノ劇場、映画館、美術館、博物館)を」閉鎖する。風俗施設も閉鎖される。

○17日(火)以降、フィットネス・ジム・プール・浴場施設、サウナも閉鎖される。

○17日(火)以降、スポーツ団体はじめ全てのスポーツ、レジャー施設における会合、市民大学、音楽教室、その他の公営・民営の教育施設の開校を禁止(注:13日に発出された政令により、一般の学校・幼稚園の休校・休園はすでに措置済み)。

○ショッピングセンター・ショッピングモール・家具店・アウトレットのへの立ち入りはどうしても延期できない。必需品のみ、厳格な体制の下、認められる。これにより、学校が休校になった子供たちがこれらの施設に集まることを防止する狙いもある。

○食料品、現金、衣料、医薬品、その他の日用品の安定的な供給を確保するため、銀行、商店(特に食品や飼料を販売する店)薬局・ドラッグストアの営業は継続される。

○図書館、レストラン、ホテルの営業については、新型・コロナウイルスの拡大を防ぐため厳格な制約を課される。

○これらの措置は当面4月19日まで行われる。その後の対応はロベルト・コッホ研究所(ドイツの感染症研究・対策機関)の現状分析を踏まえて決定される。』

さまざまな国の人を乗せた豪華客船が事故に遭って沈みだしました。船長は、速やかに船から脱出して海に飛び込むように、乗客たちに指示しなければなりません。それぞれの外国人乗客に何といって説得するでしょうか(早坂隆『世界の日本人ジョーク集』中公新書ラクレ)。

アメリカ人には「飛び込めばあなたは英雄ですよ」と言い、イギリス人には「飛び込めばあなたは紳士です」と言います。ドイツ人には「飛び込むのがこの船の規則となっています」と言えばOK。イタリア人には「飛び込むと女性にもてますよ」、フランス人には「飛び込まないでください」と言うのがよいそうです。では、私たち日本人には、何と言えばよいでしょうか。答えは「みんな飛び込んでいますよ」です。

日本ではマスクや消毒液不足やはたまたトイレットペーパーまでなくなってしまうこの国、「みんな飛び込んでいますよ」を地で行っています。

「情報の隠蔽・破棄・改ざんなど」が当たり前になっているこの国を憂うのは、私だけではないでしょう。「鯛は頭から腐る」と国会で質問をして、「意味のない質問だね」と平然と言える政治体制と決別しないといけません。そうでないとこの国は、昨年10月の消費税増税、そして新型・コロナウイルスによるダブルパンチで「大恐慌に」なる可能性も大いにあり得るのではないでしょうか。

税理士カネコは考えた!商工会議所での出来事

確定申告の初日2月17日(月)私は地元の商工会議所の会議室にいました。税務援助の一環です。その日の開始30分前の午後1時に会場の会議室に入ったら10人位しか席がないのに既に満杯でした。商工会議所の職員が「1時半からの案内なので、その時間から始めてください。」との指示だったので、それまで、消費税については手書きで申告書を書いたことがなかったので、目を皿のようにして読みましたが私の理解力が悪いのか要領を得ませんでした。因みに、消費税の申告の手引きも国税庁が慌てて作ったのか誤植が2カ所ありました。

商工会議所の事績簿には、住所・氏名・屋号・売上金額・後継者の有無・その相談の必要性の有無の有無を書く欄がありました。

さて、いざ開始すると、職員の相談員が2名と補助の方が1名それに私の4人で対応に当たりました。あらかじめ職員から聞いていたのですが、「基本的に相談者は青色申告者で青色決算書や確定申告書に記載がされており、チェックを中心にお願いします。」とのことでしたので、少し安心をしていた矢先、最初の相談者が損失の申告でした。

(ケース1)年金の金額がたくさんあり、源泉徴収もされていました。ところが、ここ3年間事業所得がマイナスなのです。今年の収入はゼロで必要経費のみ計上されていました。事業の損失と年金所得を通算すればすべての源泉税が還付になります。少し首をかしげる申告書でした。相談者は納税者の奥様でした。その奥様に、本当に売上高がゼロなのか聞いてみたところ「主人はある大手メーカーで、機械のメンテナンスの仕事をしていていたのですが、営業をまるでしないのです。その結果、この一年はまるで仕事がなかったんです。」との返事でした。

(ケース2)ご主人が昨年11月に亡くなったので、事業を廃止するという相談者がありました。準確定申告の作成指導をしました。それなりに所得がある納税者でしたが、後継者がいないので廃業と言うことになったそうです。山口県は、後継者がいない県のワースト3位(因みに、ワースト1は沖縄県、2位は鳥取県です。)というありさまです。

(ケース3)製造業を営む方で高齢だし、後継者もいないので事業を10月にたたんだ人の事例です。事業は、償却資産の除却などでそれなりの損失が出でいました。一方で、小規模企業共済掛け金を最高額(月7万円)支払っておられました。30年近く加入があったのでそれなりの金額の給付金があり、ばっちり源泉税を取られていました。ご病気をされたのか医療費控除等もたくさんありました。事業所得の損失と退職所得の損益通算と多額の所得控除があって、かなりの還付金になりました。

(ケース4)職員が相談に途中まで乗っていて、また損失の申告だと言うことで私のところに回ってきた林業を営むアラサーの青年です。また損失の申告?と思いましたが、確かに青色決算書を見ると損失が出ていました。しかし、必要経費のところをよく見ると「土地」が必要経費になっていました。本人に聞くと自分が使っているPCのソフトに土地という項目があったのでそこに入れたと言うことでした。若いのでパソコンには習熟されているようで、このソフトも無償で手に入れたと言っていました。どうして、土地勘定が必要経費に設定できるのかは不明です。昨年に、脱サラをして下関市の中山間地で両親と一緒に暮らしているそうです。今の仕事が面白くて仕方ないと活き活きされていました。

時間があっという間に過ぎてしまい、時計を見たら5時を回っていました。この日は、11枚の申告書に目を通しました。しかし、懸念をしていた消費税とは縁がなく、やたらと損失の申告が多かった印象があります。そして、商工会議所が用意していた事績簿の「後継者がいる」の部分は/を入れるしかありませんでした。唯一山林業の青年のファイトに救われました。

下関市は平成の大合併で2005年(平成17年)旧下関市と郡部4町が合併して、新しい「下関市」が誕生しました。この合併により、新しい下関市は、福祉やまちづくりなどの権限が移譲される「中核市」の要件を満たし、その年の10月には中核市になりました。その当時は、合併によりバラ色の未来が切り開かれるような「マインドコントロール」をされていました。当時の人口は、301,097人(平成12年国勢調査)で、人口30万人以上という「中核市」の当時の要件すれすれでした。しかし、5年ごとに行われる国勢調査(平成17年)の確定値では、もはや人口は実際には30万人を割り込んでおり、290,693人でした。あれから15年、2020年3月の市報によるとその人口は、260,614人と最高時から40,483人、13.4%という急速な人口減少です。この街の特徴である水産業、観光業など衰退の一途です。

安倍首相の地元の下関市、「ふるさと創生」をスローガンにあげるのなら、自ら手本を示し全国一街作りの見本にして欲しいものです。