20世紀は「戦争の世紀」と言われましたが、21世紀は「アジアの世紀」と呼ばれています。 それは、新しい世紀に入ってアジア諸国が大きな発展を遂げているからです。
20世紀のアジアの経済秩序は日本が握って成長を遂げてきましたが、一極から多極へと変容しています。この要因は、①日本の経済成長が停滞していること、②日本を除くアジア諸国が豊かになったことで、その国内市場が拡大し地場産業が台頭するようになったこと、③グローバル化が進展し、アジア諸国がものづくりになくてはならない「世界の工場」となったことなどが考えられます。
因みに、2000年のアジア主要国の一人当たりのGDPのランキング(単位千ドル)の上位5カ国を上げると、1位日本38.5、2位香港25.6、3位シンガポール23.8、4位台湾14.9、5位韓国11.9でした。
それが2016年になると1位シンガポール53.0(222.6%増)、2位香港43.5(170.2%増)、3位日本38.9(101.0%)、4位韓国27.5(230.0%)5位台湾27.5(230.0%増)と日本は3位に転落し、伸び率はほぼゼロです。
伸び率上位5カ国は、1位中国の846.0%、2位ベトナム540.5%、3位インドネシア414.2%、4位タイ290.9%、フィリピン277.2%となっています。もっと新しいデータがあれば、中国の伸び率はさらに上昇していると思われます。
この数字を見ると、日本がアジアの成長に乗り遅れた「成長停滞国」となっていることがわかると思います。その原因のひとつが、日本がアジア諸国を部品の供給基地としていることと、もう一つが企業の内部留保を増やし新規の投資を控え、さらに労働力を正社員から派遣等に切り替え人件費を相対的に抑えていることにあると考えられます。
このコロナ禍でも、大企業の内部留保は増え続けています。財務省が発表している法人企業統計から計算すると、2020年1月から3月までの内部留保の金額は487.6兆円と過去最高になり、この1年間で40兆円近く積み増しています。その理由は、2001年をピークにした人件費の削減と1997年から始まった法人税の減税によってもたらされたものです。
この内部留保は、新たな設備投資に使われ雇用を生む「健全な内部留保」と租税回避地などに金融投資をしたり、自社株買いをして雇用や市場の拡大につながらない「不健全な内部留保」がありますが、日本の大企業の内部留保は「不健全な内部留保」となっています。
現金・預金と売却可能な有価証券を併せたものを手元流動性と言います。財界は、「手元流動資金はすぐに使える性格ものではない」言っていますが、日経新聞によると日本の手元流動性が総資産に占める比率は12%で、世界平均企業の6%の倍にあたります。
この資金を臨時的にコロナ対策資金として課税をすることが必要ではないかと思います。この内部留保課税は台湾や韓国でも実施されています。「富の偏在」をコロナ禍で破綻寸前の企業の救済や職を失ったり、大幅に賃金が下がっている人たちに給付金としてお金の循環を作り出して行くことこそ、「成長をする国」への回帰につながり「税の正義」にもかなうのではないでしょうか。