月別: 2020年12月

政治家とお金~知られていない官房機密費の実体~

年の瀬も押し迫って、吉川貴盛元農林水産大臣が21日に議員辞職を表明しました。氏をめぐっては、河井前法相夫の捜査中に浮上した広島県内の鶏卵生産大手のアキタフーズグループ元会長から、大臣室で数回にわたり現金500万円を受け取った疑惑が生じています。疑惑が発覚した当初は、不整脈を訴えて入院し「ご心配をかけていることをおわび」して自民党選挙対策委員長代行や北海道連会長、所属する二階派の事務所総長を退いていました。不整脈は慢性心不全となり、さらに手術を受けることになるとの報道です。役職の辞任も議員辞職もあくまで病気を理由にしていますが、いささか首をかしげてしまいます。

また、安倍前首相の「桜を見る会」をめぐっては、安倍氏側が前夜祭の参加費とホテルでの実費の差額が910万円余りあったにもかかわらず政治資金収支報告書にその記載がなったことで秘書が略式起訴されそうですが、本人の起訴はどうやら免れるようです。しかし、氏が国会で「明細書はない」「事務所は関与していない」「差額は補填していない」と合計118回の答弁をしました。自民党はこの間の内閣支持率の低下を危惧し、菅総理の政権運営に支障が起きないように、検察の捜査や本人の意向を踏まえ年内の国会での答弁をせざるを得ない状況になっています。

これ以外にも今年も政治とお金をめぐる事件がありました。IR汚職事件で起訴された担当副大臣の秋元司被告や公職選挙法違反事件で公判中の河井夫妻などは氷山の一角です。

いずれの事件についても政治家としての責任を明確にして、その説明責任を果たしてもらいたいものです。そして、具体的にどのような責任をとるか明言をすべきでしょう。それが議会制民主主義の根幹だからです。

政治とお金の問題と言えば、国民に余り知らされずに悪しき習慣と入れるものが官房機密費の存在です。Wikipediaでは、「内閣官房報償費は、国政の運営上必要な場合、内閣官房長官の判断で支出される経費。 内閣官房機密費とも呼ばれる。 会計処理は内閣総務官が所掌する。支出には領収書が不要で、会計検査院による監査も免除されており、原則使途が公開されることはない。」とされています。言い換えれば、『ヤミ金』です。

菅首相が官房長官時代(2012年12月から今年9月半ば)に受け取った機密費の総額はなんと86億円を超えます。1年で11億円を超えます。一体何に使ったのでしょうか。

機密費をめぐっては、市民団体が情報公開を求めた訴訟で最高裁は一部の開示を認めました。その際、原告と弁護団は管氏に、政治家・公務員・マスコミ・評論家に支出しないことと、使途を非公開にする期間を決めその期間が過ぎれば公開することなどを提言していますが、管氏はまるでそれに答えていません。

政治とお金をめぐる不正の根底には、領収書の要らない経費である機密費の存在があるのではないでしょうか。菅首相が「日本学術会議は、年間約10億円を使っている。国民に理解される存在でなければならない」と発言していますが、機密費についてはどう弁明するのでしょうか。批判されるのは、日本学術会議ではなく首相自身ではないでしょうか。

マイナンバーカードの強要の危うさ~普及が進まないのは政府に対する信頼感のなさか?~

管政権はデジタル社会の推進を旗印として、デジタル庁の創設を軸に公的な申請のデジタル化を推し進めようと躍起になっています。

その中で、マイナンバー制度(以下制度とします)を「デジタル社会のパスポート」と位置づけて、マイナンバーカード(以下カードとします)に銀行口座をはじめ、健康保険証や運転免許証などを無理やり紐付けしてカードをすべての国民に持たせることで、国民のプライバシーを脅かし、監視型社会の拡大をしようとしています。その狙いを紐解いてみます。

導入当初は、コロナ禍で延期になった東京オリンピックの競技会場での本人確認をカードでするといったことも検討されていましたが、その普及は一向に進んでいません。現在の普及率は全国で22%しかありません。この普及率を2022年度末までに100%に引き上げる目標を立て、ありとあらゆる手を考えています。

まずは、銀行口座との紐付けです。1人当たり10万円の特定定額給付金を支給する際に、カードを使ったオンライン申請でシステムダウンがおき、その事務にあたった市町村が大混乱になりました。自民党などはこの不備を逆手にとって、給付金の口座と制度とを紐付けしようとしています。また平井デジタル相は、義務化と罰則をセットにするという見解を示しています。もとより、制度は住民基本台帳を基礎としていますから、一番に手をさしのべなくてはならないホームレスのような住民票のない弱者には手が届かない仕組みになっていることも問題です。

カードは2021年3月から本人が希望すれば健康保険証の機能を上乗せするような制度設計をしています。病院や診療所、調剤薬局で顔認証付きのカードリーダーにかざすと本人確認ができ、薬の利用歴を本人や医療機関が閲覧したり、医療費情報を確定申告でも活用できるようです。その機器は医療機関に無償で配布しますが、現時点での申し込みは2割に満たない状況です。笛吹けども踊らぬ状況なので、将来は保険証の交付をやめることで、カード利用を促進する戦略です。

運転免許証もカード普及の対象です。運転免許証は国民の3人に2人が持っているいわば顔写真付きの身分証明書です。法律ではカードの取得は任意ですが、警察庁が検討しているようにカードのなかに免許証情報が入るとなれば、事実上、運転免許をとりたければカードを取得せざるを得ません。デジタル化と運転免許証の連結という意味で言えば、既に今の免許証はICカード化されています。仮に免許証がカードと一体化されれば、免許の有効期限、眼鏡等の条件が表から消えてしまいます。交通取締りに当たる現場のためにカードリーダーが必要になりますし、セキュリティー対策も必要になります。

かなりの予算をかけてCMもしているマイナポイントの普及も9月から開始していますが、利用見込みの4,000万人に対して、申込者は約500万にも満たないという不人気です。理由は「複雑で面倒」が4割、「セキュリティー面で不安」が3割となっています。面倒な手続きまでしてやるほど劇的なメリットがないと言えます。

確かに行政のデジタル化は国の存亡をかけた大事業です。しかし悲しいかな、国民の政府に対する信頼感は著しく低下しています。例えば「モリ・カケ・さくら」問題での行政文書の改ざん、廃棄、虚偽答弁などが顕著にそれを物語っています。国民からの信頼無くしてデジタル化は遅々と進まないでしょう。

さらに、監視社会のさらなる強化も危惧されます。カードが義務化されれば、例えば警察官に職務質問をされたら、カードをかざしただけで、犯罪歴だけでなく健康状態などの個人情報が丸裸になります。韓国のような住民登録番号が流出して悪用されることも想定しなくてはなりません。もちろん、カード所有者の「カード閲覧履歴をいつでも見られる権利」の確保も重要な課題です。カードに個人番号を書かない工夫やハッキングに対する対応策も講ずるべきです。

先進国のなかでかなり遅れている行政のデジタル化を進める手段として不可欠なのは、「急がば回れ」の諺のごとく国民の理解と協力を得ながら国民目線の制度を進めることが必要です。

聞きやすく、伝わりやすい話し方~口癖にしたい3つの話術~

コロナ禍で私の講演がビデオ収録になりました。それを聞き直してみると、言葉に詰まると「えっー」を乱発していました。恥ずかしい限りですが、自分の講演を自分で聞くことが今までなかったので早速この悪い癖は直す努力をしたいと思います。

先日行われた日本シリーズ第3戦で7回をノーヒットで抑えてヒーローインタビューを受けたソフトバンクのムーア投手も、会話の内容はよく分かりませんが「You Know」という言葉を連発していました。

会話などの途中でなかなか言葉が出ないときについつい出てしまい、それを多用すると聞きづらい表現になる言葉があります。日本語では、「えっー」「あー」「まあ」「なんか」などです。英語だと「You Know」「Well」「Let Me See」「But」などがそれに当たります。

なくて七癖という諺もあるように、誰もそれぞれ話し方に癖があります。それが個性という程度であれば良いのですが、どうも聞きにくいと思えば、万人が聞きやすいように改善する必要があります。その癖を他人から指摘されることは少ないので、自らが自らの癖に気づき矯正していく努力が大事だと考えます。染みついた癖はなかなか直りませんがその努力が大事です。

さて、聞きやすく伝わりやすいしゃべり方としては、短い表現で分かり易い表現を使いたいものです。仕事でもプライベートでも、やたらと話は長いけれど、何を言いたいのか、結論は何なのかが分からない人が少なくありません。このような「だらだら表現」を治すために、癖にしたい魔法のような表現方法があります。それは、次の3つです。

1つに目は、「結論から言えば……」と結論から言うことです。例えば、顧客からの苦情処理のことを上司に報告するケースで考えてみると、話の下手な人は、「朝10時位に電話で連絡があって、それは……だから……つまり……」などと報告します。上司が聞きたいのは時系列の事柄ではなく、苦情処理が上手くいったのかどうかです。話のうまい人はズバリ、結論から言います。そのことにより、上司は安心します。その後に、その経過や対処法を報告します。すると話は短くなり、上司との関係も良好に行きます。

2つ目は、「伝えたいことは3つあります」と言う表現です。これはナンバリングという手法ですが、複数のことを要領よく伝えたいときに有効です。すべての事柄を3つに要約して行く手法です。「伝えたいことは3つです。言いたい事柄の1つ目は○○○です。2つ目は△△△です。3つ目は□□□」と言ってから、それぞれの事項を話すか、それぞれの事項の頭に「1つ目は」「2つ目は」「3つ目は」と言い項目を話すことも有効です。この手法を用いることで、自分の言いたいことの論点整理になるし、聞く側にもスムーズにその内容が入ってきます。

3つ目は、「話は3分間」でまとめることです。3分あれば、かなりの情報量を聞き手に伝えやすくなります。朝礼の一言スピーチなどで、砂時計などを用いて上記の2つのことを織り交ぜて訓練すれば相当の訓練になります。そのことの応用として、与えられた時間以内で話を終えることにつながります。プレゼンや営業トーク、講演会などでも役に立ちます。

菅新内閣の予算編成について考える

新型コロナウイルスの影響で日本経済はかつていない脆弱さを露呈しました。その要因となったのが新自由主義的思考です。新自由主義的思考とは、政府などによる規制の最小化と自由競争を重んじる考え方で大企業と富裕層の利潤を最大化し、社会保障など公的サービスを切り捨て、自己責任を押しつけるものです。

この考え方の弊害の具体例がコロナ禍で必要とされた保健所の数です。1990年には850ヶ所だったものが、2020年までの30年間で469ヶ所と約半数近くに激減しました。この減少が、PCR検査が十分に行われなかった要因のひとつです。

この思考は中曽根元首相から始まり、歴代1位の在位を成し遂げた安倍前首相に脈々と受け継がれ、菅新首相もその後継者として「自助・共助・公助」を掲げ、露骨に新自由主義剥き出しの路線を継承しています。

そんな菅内閣が発足して初めての予算編成です。その内容と特徴は菅政権の今後を占うような内容になっています。

各省庁が提出した21年度の概算要求・要望の合計額は約105.4兆円で、100兆円を超えるのは7年連続です。新型コロナウイルスへの政府対応が優先され、提出締め切りは例年より1ヶ月遅い9月末となりました。

要求額を算出する基準も簡単にして、前年度の当初予算がベースになっています。コロナ対応など「緊急な経費」は別枠で、上限なく要望が出せます。その結果、コロナ対策費は、現時点で金額を示さない「事項要求」が多いことが特徴です。

事項要求とは、各省庁が概算要求を行う際に個別政策の予算要求額を明示せず、項目だけ記載することを言い、政策が細部まで決定されておらず予算額が不明な場合などに用いられます。その結果、年末に閣議決定される予算案は歳出総額が過去最大を更新する見通しです。

内容をみると無駄な公共投資は相変わらず続いており、人口減少と都市と地方の格差はますます開き、大手ゼネコンばかりが超え太るような内容になっています。

国民に対する監視の強化や個人情報の漏洩が危惧されているマイナンバーカードの普及促進のために1,451億円を要求しています。それにより、健康保険証、運転免許証、国税、年金などの情報を無理やり紐付けしようと画策しています。

コロナ対策では、行政検査としておこなうPCR検査の半額を自治体が負担していることへの解決策を提示していません。

中小企業対策費は、事業者の経営の下支えや支援ではなく、事業承継等の新陳代謝に力点が置かれています。日本の企業の99.7%、雇用の7割を占める中小企業が光となるような予算規模になっていません。逆に中小企業の生産性を高めるためにその再編を積極的に打ち出している菅政権の姿を投影した予算です。

防衛費は総額5兆4,898億円で前年度予算の3.3%増です。辺野古新基地建設経費やイージス・アショアの代替経費は事項要求になり、具体的な予算を計上しないでも9年連続で前年を上回り7年連続で過去最大を更新しています。新たにステルス機F35を6機購入し666億円を計上しています。これにより、後年度負担額は5兆4,585億円にものぼり予算が固定化しています。

無駄遣い?新センチュリーが議長車に!

山口県が今年4月に貴賓車として2,090万円で購入した最高級車「センチュリー」をめぐって、県民から多くの批判を呼んでいます。また新聞報道もされ、TVのワイドショーにもとり挙げられ、村岡嗣政知事も対応に苦慮しています。新聞報道からこの購入の経緯などをまとめました。

この黒塗りのセンチュリーは5リットルエンジンに車内にはスピーカー20個、後部座席にはもみほぐしのマッサージ機能や11.6インチのモニターを備えています。

昨年度までに県が所有していたセンチュリーは3台、2002年に貴賓車として1,061万円で、07年に議長車と1,061万円、13年に副知事車として1,260万円でそれぞれ購入されています。

県は今年度からこの3台を一括して「皇室対応用車両」に見直して、一体的に管理する体制に変更するとしていますが、旧貴賓車は運転日誌が残る直近3年間で走ったのは13日間だけです。うち皇族の利用は18年10月に山口市で開催された全国都市緑化祭で秋篠宮ご夫妻を運んだのが最後となっています。

また、現時点で皇室からの来県予定はなく、「皇室から貴賓車の所有を求められたことはない」ということです。現在、県が所有する2台のセンチュリーは、議長と副議長の送迎等のために使われ続けています。

一方、知事の公用車は防府市に工場を構えるマツダ大型CSV(スポーツ用多目的車)のCX-8、購入価格は371万円です。他県の知事車は、セダンではなくミニバンのトヨタ・アルファードなどが主流となっており高級車よりは、より機動性が良いものになりつつあります。

県によると、新型コロナ禍で大幅な税収減が見込まれることなどから、現時点で来年度の財政不足は70億円を見込んでいます。

こうしたなかでのセンチュリー購入は、議案の議決権を握る議会への忖度ではないかとの声も出ています。知事車の5.6倍もする高級乗用車の購入は、無駄遣いのそしりを免れません。

知事は記者会見で「これまでの運用実績から従来通りとしたが、様々な観点で十分な比較検討を行う必要があった。今後は十分な精査をしていきたい。県民の皆様からの批判があるのも承知している。」との認識はありながら、売却して安い車に買い替えるかについては「考えていない。いろいろなご意見があると思うが、購入したものをしっかり運用し、有効活用をしていきたい」と苦しい胸の内をさらしています。

結局のところ、今回のセンチュリーの購入は、「皇室をだしにして、議長車を新調した」とみられても仕方がありません。

しかも、この20年間、県予算の説明資料に4台のセンチュリーの購入にかかわる記述はまったくありません。議会、県民にまったく説明しないまま、高価な買い物を続けていた県の姿勢が問われています。

識者も「財政難のなか、時代錯誤も甚だしい。」「黒塗りの公用車を権威やステータスの象徴とみる時代はもはや終わった。」「合理性を欠く支出と言わざるを得ない」とコメントしています。