年の瀬も押し迫って、吉川貴盛元農林水産大臣が21日に議員辞職を表明しました。氏をめぐっては、河井前法相夫の捜査中に浮上した広島県内の鶏卵生産大手のアキタフーズグループ元会長から、大臣室で数回にわたり現金500万円を受け取った疑惑が生じています。疑惑が発覚した当初は、不整脈を訴えて入院し「ご心配をかけていることをおわび」して自民党選挙対策委員長代行や北海道連会長、所属する二階派の事務所総長を退いていました。不整脈は慢性心不全となり、さらに手術を受けることになるとの報道です。役職の辞任も議員辞職もあくまで病気を理由にしていますが、いささか首をかしげてしまいます。
また、安倍前首相の「桜を見る会」をめぐっては、安倍氏側が前夜祭の参加費とホテルでの実費の差額が910万円余りあったにもかかわらず政治資金収支報告書にその記載がなったことで秘書が略式起訴されそうですが、本人の起訴はどうやら免れるようです。しかし、氏が国会で「明細書はない」「事務所は関与していない」「差額は補填していない」と合計118回の答弁をしました。自民党はこの間の内閣支持率の低下を危惧し、菅総理の政権運営に支障が起きないように、検察の捜査や本人の意向を踏まえ年内の国会での答弁をせざるを得ない状況になっています。
これ以外にも今年も政治とお金をめぐる事件がありました。IR汚職事件で起訴された担当副大臣の秋元司被告や公職選挙法違反事件で公判中の河井夫妻などは氷山の一角です。
いずれの事件についても政治家としての責任を明確にして、その説明責任を果たしてもらいたいものです。そして、具体的にどのような責任をとるか明言をすべきでしょう。それが議会制民主主義の根幹だからです。
政治とお金の問題と言えば、国民に余り知らされずに悪しき習慣と入れるものが官房機密費の存在です。Wikipediaでは、「内閣官房報償費は、国政の運営上必要な場合、内閣官房長官の判断で支出される経費。 内閣官房機密費とも呼ばれる。 会計処理は内閣総務官が所掌する。支出には領収書が不要で、会計検査院による監査も免除されており、原則使途が公開されることはない。」とされています。言い換えれば、『ヤミ金』です。
菅首相が官房長官時代(2012年12月から今年9月半ば)に受け取った機密費の総額はなんと86億円を超えます。1年で11億円を超えます。一体何に使ったのでしょうか。
機密費をめぐっては、市民団体が情報公開を求めた訴訟で最高裁は一部の開示を認めました。その際、原告と弁護団は管氏に、政治家・公務員・マスコミ・評論家に支出しないことと、使途を非公開にする期間を決めその期間が過ぎれば公開することなどを提言していますが、管氏はまるでそれに答えていません。
政治とお金をめぐる不正の根底には、領収書の要らない経費である機密費の存在があるのではないでしょうか。菅首相が「日本学術会議は、年間約10億円を使っている。国民に理解される存在でなければならない」と発言していますが、機密費についてはどう弁明するのでしょうか。批判されるのは、日本学術会議ではなく首相自身ではないでしょうか。