(株)エヌピー通信社が発行している税理士新聞は「1974年の発行以来、税理士業界のパイオニアとして最も読まれ、信頼される職業会計人の羅針盤」とされています。
その税理士新聞が毎月一回、二者択一形式で税界の世論を浮き彫りにするアンケートコーナー「振り子時計」を実施しています。2020年の12回中5回が消費税関連の質問でした。消費税について多くの税理士が注目していることがわかります。その質問を時系列的並べ、それぞれの意見の特徴を抜粋しました。
1月号、Q消費税のさらなる引き上げは不可避だ。Yes43%、No57%とわずかに反対派が多い。賛成のコメントは「世界各国の消費税率を見れば日本は低すぎる。思い切った財源確保を講じるべき」、反対のコメントは「安易に消費税率を引き上げるべきではなく、もっと無駄を省く行政改革を進めるべきである」
3月号、Qインボイスは必要な制度だ。Yes10%、No90%を圧倒的に反対派が大きい。賛成のコメントは「免税業者の問題はあるが、避けては通れない道」、反対派のコメントは「帳簿方式で十分。消費税の複数税率をやめるのが先」
5月号、Q今こそ消費税率を引き下げるべきだ。Yes60%、No40%と賛成派がやや多い。賛成のコメントは「消費税はすべて法人税の減税に化けてきた。大企業が当たり前の税率で法人税を納めれば消費税は廃止できる」、反対派のコメントは「軽減税率をやめて必要な財源に充てるべき」
6月号、Qキャッシュレス・ポイント還元を延長すべきだ。Yes44%、No66%と反対派がやや多い。賛成のコメントは「消費者の購買意欲を喚起する結果にもなっているので、ぜひ延長すべきだ」、反対派のコメントは「年寄りや子どもなどカードを持っていない人が差別される」
10月号、Q消費税の減税を断行すべきだ。Yes76%、No24%と圧倒的に賛成派が多い。賛成派のコメントは「国民や中小企業の現状を見れば当然」、反対派のコメントは、将来の日本国民に負債を引き継ぐな!」
以上の結果となりました。特に注目したいのは、圧倒的にインボイス制度について反対が多いことです。
インボイスを発行することができる「事業者登録制度」が今年の10月より開始されます。懸念されるのは、現行の制度で免税事業者とされる課税売上高が1000万円以下の事業者に「過酷な選択」を促すことです。すなわち、取引先が仕入れ税額控除を行うために「課税事業者」であることを要求されやむなくそれを選択せざるを得ないことです。換言すれば、それに抗えば、即取引の停止を意味するということです。
現在、フリーランスで働く人が300万人を超えたという統計もあります。その多くは、収入が1000万円以下です。ただでさえ不安定な労働環境にもかかわらず、税の上でも悲劇な集団にならないか危惧をします。