月別: 2021年2月

税理士新聞で扱った消費税関連の記事は5回~多くの税理士は消費税減税などを求めている~

(株)エヌピー通信社が発行している税理士新聞は「1974年の発行以来、税理士業界のパイオニアとして最も読まれ、信頼される職業会計人の羅針盤」とされています。

 その税理士新聞が毎月一回、二者択一形式で税界の世論を浮き彫りにするアンケートコーナー「振り子時計」を実施しています。2020年の12回中5回が消費税関連の質問でした。消費税について多くの税理士が注目していることがわかります。その質問を時系列的並べ、それぞれの意見の特徴を抜粋しました。

 1月号、Q消費税のさらなる引き上げは不可避だ。Yes43%、No57%とわずかに反対派が多い。賛成のコメントは「世界各国の消費税率を見れば日本は低すぎる。思い切った財源確保を講じるべき」、反対のコメントは「安易に消費税率を引き上げるべきではなく、もっと無駄を省く行政改革を進めるべきである」

 3月号、Qインボイスは必要な制度だ。Yes10%、No90%を圧倒的に反対派が大きい。賛成のコメントは「免税業者の問題はあるが、避けては通れない道」、反対派のコメントは「帳簿方式で十分。消費税の複数税率をやめるのが先」

 5月号、Q今こそ消費税率を引き下げるべきだ。Yes60%、No40%と賛成派がやや多い。賛成のコメントは「消費税はすべて法人税の減税に化けてきた。大企業が当たり前の税率で法人税を納めれば消費税は廃止できる」、反対派のコメントは「軽減税率をやめて必要な財源に充てるべき」

 6月号、Qキャッシュレス・ポイント還元を延長すべきだ。Yes44%、No66%と反対派がやや多い。賛成のコメントは「消費者の購買意欲を喚起する結果にもなっているので、ぜひ延長すべきだ」、反対派のコメントは「年寄りや子どもなどカードを持っていない人が差別される」

 10月号、Q消費税の減税を断行すべきだ。Yes76%、No24%と圧倒的に賛成派が多い。賛成派のコメントは「国民や中小企業の現状を見れば当然」、反対派のコメントは、将来の日本国民に負債を引き継ぐな!」

 以上の結果となりました。特に注目したいのは、圧倒的にインボイス制度について反対が多いことです。

 インボイスを発行することができる「事業者登録制度」が今年の10月より開始されます。懸念されるのは、現行の制度で免税事業者とされる課税売上高が1000万円以下の事業者に「過酷な選択」を促すことです。すなわち、取引先が仕入れ税額控除を行うために「課税事業者」であることを要求されやむなくそれを選択せざるを得ないことです。換言すれば、それに抗えば、即取引の停止を意味するということです。

 現在、フリーランスで働く人が300万人を超えたという統計もあります。その多くは、収入が1000万円以下です。ただでさえ不安定な労働環境にもかかわらず、税の上でも悲劇な集団にならないか危惧をします。

立ち止まってゼロベースで考えるべきでは?~東京オリンピックの開催ありきは改めるべきでは~

「『選手だけがやりたいと言うのはわがまま。皆さんに五輪が見たい、選手が輝く瞬間を見たいと思わせないと』昨年12月、陸上の東京五輪選考会で女子1万㍍の日本新記録を18年ぶりに更新し、日本代表に決まった新谷仁美選手は喜びとともに現状を冷静に口にした。

五輪を史上初の延期に追いやった新型コロナウイルスの猛威はいまだに収束せず、国内の大会機運もしぼんだままだ。緊急事態宣言が再発令された直後に共同通信が行った世論調査では、中止と再延期を求める声が合わせて80.1%に上った。不安を打ち消そうと、政治家や主催者が揺るぎない姿勢を口にするほど、国民との温度差が広がる悪循環。そのはざまでスポーツ選手は身を小さくしている。」と報じています。(1月29日付、日経)

また、日本オリンピック委員会(JOU)理事で元柔道選手の山口香さんは、国民の大半が五輪の再延期・中止を求めていることについて「新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言の発出や変異型への懸念もあり『残念だけど、難しい』というのが冷静で、現実的な感覚だろう」と語っています。(1月26日付、朝日)

ところが菅首相は1月7日に緊急事態宣言を発出した際に、ワクチンの普及によって「(五輪に対する)国民の雰囲気も変わってくるのではないか」と述べていましたが、ワクチン頼みが無理なのがわかると「ワクチンも前提にしなくても安心・安全な大会を開催できる」と何も根拠を示さず言い出しました。そして、政府は東京五輪を「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証し」にすると開催の姿勢を崩していません。

この夏のオリンピック開催にはさまざまな問題点があります。

第一にワクチンの問題です。一部の国ではすでにワクチンの接種が始まっていますが、集団免疫については世界保健機構(WTO)が今年中に達成することが困難だとしています。

第二に「フェアな大会」ができるかどうかの問題です。各国の感染状況による練習環境のなどの違いやワクチンの接種の先進国とそれ以外の国の格差の問題もあります。

第三に医療体制の問題です。熱中症対策だけで1万人の医療従事者が必要とされていますが、これにコロナ対策を加えれば医療体制逼化の中さらなる人員と費用がかかります。

オリンピック憲章はその根本原則の2において「その目標は、スポーツを人間の調和のとれた発達に役立てることにあり、その目的は、人間の尊厳維持に重きを置く、平和な社会推進することにある」とし、また4では「スポーツを行うことは人権の一つである。すべての個人はいかなる種類の差別もなく、オリンピック精神によってスポーツを行う機械を与えられなければならず、それには、友情、連帯、そしてフェアプレーの精神に基づく相互理解が求められる」としています。

新型コロナウイルスは、世界の格差をさらに大きくしています。今は少し立ち止まって、「五輪開催ありき」の前のめりの姿勢から、その是非をオリンピック精神に基づいて根本的に見直すことが必要ではないでしょうか。国際オリンピック委員会(IOC)を含め徹底的な論議をすべきでしょう。

敬愛していた野村監督が逝った日からはや1年~監督の生き様とその名言~

訃報があってからもそうでしたが、年末のテレビ番組でも野村監督の特集をしきりに放映していました。監督からは多くのことを学び生かしています。その足跡と名言を紹介します。

訃報は昨年の2月11日にありました。享年84歳、プロ野球ファンだけでなく多くの人々に影響を与えました。選手を引退してからは解説者を経て、長い間監督をされてその手腕が発揮されたので、私の世代より若い人は監督と言った方がなじみやすいのではないかと思います。しかし、プロ野球選手としても超一流でした。氏の足跡を時代ごとにまとめ、その名言にもふれていきます。

1935年、漁業が盛んな京都府竹野郡網野町(現在の京丹後市)で生まれました。家はとても貧しく、新聞配達などで家計を助けていました。中学校2年生の時に野球部に入りました。兄の大学進学を断念した結果、京都府立峰山高校に進学できました。しかし無名の高校だったので、54年に南海ホークスにテスト生として入団しましたが成績が振るわず、戦力外通告を受けました。ところが、正捕手の事故などにより残留が決まりました。

3年目の56年に一軍に抜擢され正捕手の座に座りましたが、カーブがまったく打てなく空振りを繰り返していました。そこで思いついたのが、投手のクセを徹底的に研究することでした。その結果、打撃力が飛躍的に向上しました。そして57年にはホームラン王に、65年には戦後初の三冠王に輝きました。ただ、「神様、仏様、稲尾様」と形容された稲尾和久投手には手も足も出ませんでした。打開策として、自ら16ミリカメラでそのフォームを撮影し、その細かなクセをついに見つけました。そのことが、その後の氏の人生を変えたと言われています。

同時期に活躍していた長嶋選手や王選手が脚光を浴びる一方で、マスコミで氏の露出が少ないので、考えたのが「長嶋や王がひまわりならば、自分は人目のつかない所でひっそり咲く月見草」という名言でした。以来「月見草」が氏の代名詞となりました。

70年には監督兼任捕手となり、2000本安打も達成しました。その後、ロッテ、西武と移り、80年には前人未踏の3000試合出場を達成し、45歳で引退しました。現役成績は、打率277、657本塁打、1988打点、首位打者1回、ホームラン王9回、打点王7回、まさに歴代最高の捕手でした。おそらく、このような捕手はもう現れないと思います。

現役引退後は9年間テレビ朝日の野球解説者をしました。そのときに使ったのが「野村スコープ」でした。ストライクゾーンを9分割にして、捕手として培ったインサイドワークで、投手が次にどこにどんな球を投げるのを予想し、それがズバリ的中。野球解説に革命を起こしたと言われています。このスコープは現在では広く世界で使われています。

監督としては、1968年~77年(選手兼任監督)南海ホークス、90年~98年ヤクルトスワローズ、99年~2001年阪神タイガース、06年~09年東北楽天ゴールデンイーグルスを率いました。ヤクルト就任時に「1年目に土を耕し、2年目に種をまき、3年目に花を咲かす」という名言通りに3年目にリーグ優勝をし、4年目に日本一に輝きました。「チームが勝つには現場と首脳陣が協力しないとダメ」と言い続けました。

師弟関係にあった古田敦也さん(通算2097安打、10度のベストナイン、2度のMVP、そして選手会長としても活躍)は、その訃報に際して「頭を使えば弱いチームが強いチームになることをたたき込まれた。影響を受けた野村さんの教えを次の世代伝えていくのが役割だったと思っている」と述べています。

阪神タイガース時代は3年連続の最下位、それはオーナーが補強について積極的ではなかったからと言われています。その後、シダックスという社会人チームの監督になり都市対抗野球で弱小チームを準優勝に導きました。

次にプロ野球の監督をしたのが東北楽天ゴールデンイーグルスでした。新球団設立2年目のことでした。3年目にクライマックスシリーズまで進みましたが、3年目に退団しました。「マー君、神の子、不思議な子」と言われ時の人となった田中将大投手を育てました。入団1年目から打たれても、打たれても使い続け、11勝7敗、防御率3.82の成績で新人王に輝きました。田中投手はその訃報に際し、「野村監督には、ピッチングとはなにか。そして野球とは何かを一から教えていただきました。プロ入り1年目に出会い、指導してもらったことが野球人生における最大の幸運のひとつです」と述べています。

氏の名言は数多ありますが、そのいくつかを紹介します。

「失敗」と書いて「せいちょう」と読む。

「どうするか」を考えない人に、「どうなるか」は見えない。

「恥ずかしい」と感じることから進歩は始まる。

「失敗の根拠」さえはっきりしていればいい。それは次につながるから。

組織はリーダーの力量以上に伸びない。

部下を「信じる」というのは、リーダーの重要な資質。

不器用な人間は苦労するけれど、徹してやれば器用な人間よりも不器用な方が、最後は勝つ。

など、野球選手以外、特にビジネスに関わる人に通じるものばかりです。私は、氏の波瀾万丈の人生から大いに学びました。語録を思い出しては、自分自身の成長につなげていきたいと思います。

男は……~時代は変わりつつあります~

私の運転する車が新年早々渋滞に巻き込まれました。ふと目にした看板が印象的で、すぐに車内にあるメモ帳に書き留めました。「男と看板はだまってしゃべる。~書かんとわからんし、書きすぎても伝わらん~」これは、とある看板屋さんの玄関にある「看板」に書かれていた言葉です。なかなか、洒落たキャッチコピーで、看板の持っている本質を突いているのだと思います。しかし、「男は‥だまって‥」の部分は少し違和感を持ちました。

今や都市伝説化された「男は黙ってサッポロビール」のCMに大きな影響を多分に受けていると容易に思われます。このCMには今から半世紀前の1970年、当時の超大物俳優、故三船敏郎さんが起用され、一世を風靡しターゲットであった「お父さんたち」を刺激し、流行語にもなりました。しかし、今やターゲットは間違えなく「お父さん」から「全世代」へと大きく変化していて、最近のビールCMには有名な女優さんがたくさん出演しています。

「とき」はあれから半世紀経過し、今年の正月に高視聴率をたたき出した箱根駅伝のことです。最終区、まさかの逆転劇でした。テレビに釘付けだった私の妻が追い上げ、追い越す選手を伴走車から鼓舞した駒澤大学の監督の檄に不快感を抱き怒りをぶつけていました。その言葉は「男だろ!」「やったよ、男だ」ここぞの場面で「活を入れる」ために使った言葉だそうです。しかも、アナウンサーまでも「男をあげた」、選手も「監督を男に」やはり違和感があります。女子駅伝では「女だろ!」とは決して言いません。精一杯頑張る姿勢に、男も女もありません。

ところで「選択的夫婦別姓制度」を導入する世論は高まり、昨年11月の民間調査では7割を超えています。反対派は、夫婦別姓にすると「家族の絆が弱くなる」「子どもが不幸になる」と言います。しかし、社会は多様化しています。夫婦や家族にさまざまな形があります。世界では法律で同姓を強制しているのは日本だけで、外国では家族の絆が弱いとか、子どもが不幸だとかいうことはありません。

現在の日本では、離婚や再婚が増えていて、婚姻する4組に1組が双方か片方が再婚です。婚姻のたびに姓を変えることの不便さを感じる人は少なからず存在しています。また、独身の時に培ってきた姓を変えることへの不満もあります。私の知り合いの同業者が、結婚の際に、事務所名を含め手続きが煩雑だったと嘆いていました。

現行制度は、同姓を強制して、違う名前を選ぼうとする人たちに選ばせないことです。選択的夫婦別姓を認めるかどうかは、自分と違う生き方を尊重するかどうか、つまり多様な生き方を認める社会かどうかの試金石といえるでしょう。「男らしさ」や「女らしさ」だけでなく、自分らしく生きられる社会にしていかないといけないと思います。

菅首相にも責任があります。かつて選択的夫婦別姓を提唱していたからです。昨年11月の国会で「政治家としてそうしたことを申し上げてきたことには責任がある」と答弁しています。「先手・先手」は口先だけで、さまざまな対応が「後手・後手」になっているのではないでしょうか。