岸田首相は年頭の会見で「『異次元』の少子化対策に挑戦する」と訴えましたが、1月23日の施政方針演説では「年齢・性別を問わず、皆が参加する、従来とは次元の異なる少子化対策を実現したい」と表現しました。
少子化対策の実現には「兆円単位」の財源確保が必要なため、「異次元」の表現が消費増税を思い起こさせるとして、「『異次元』は使うな」という声が官邸内で上がったようです。
さて、この降って湧いたような「少子化対策」は非常に違和感を覚えます。個人的には大軍拡とそれに伴う大増税を煙に巻く戦術なのかなと考えます。
「検討使」と揶揄されてきた首相が断固たる姿勢で「大軍拡と大増税」を前のめりになっている姿を見て、「首相は変わった」という人もいますが、果たしてそうでしょうか。金融所得課税の導入検討の際には、あれこれ迷ったあげく、富裕層に対して「聞く耳」を持って自らの「公約」を決めきれませんでした。
一方、強いもの「聞く耳」を持ったとたん一直線にすき進んでいるのではないでしょうか。首相にとって強いもの、つまりアメリカに媚びてしまう病に冒されているのでしょうか。名付けて「愛犬ぽち化症候群」です。
防衛予算案は時系列的には次の通りです。従来は、GDPの1%程度で推移をしていましたが、23年度から5年間で段階的に引き上げ、27年度に2%に倍加させるように首相が指示したのは11月28日、27年度以降の毎年度、約4兆円の追加財源が必要として、うち1兆円強を増税で賄う方針を示したのが12月8日、そして2023年度の財政改正大綱に法人税、所得税、たばこ税の3税目で増税措置を実施することを盛り込んだのが12月16日、同日に敵基地保有能力の保有や防衛費2倍化など、日本を「戦争をする国」をなりかねない、戦後の安全保障政策の大転換することに舵を切ることになる安保3文書も閣議決定しました。そして、年明けの1月13日にバイデン大統領と会談し、「歴史的だ」と天まで持ち上げられる程の賞賛を受けました。
首相は「1年以上、丁寧なプロセスを得た」と豪語していますが、その大半は密室での論議でその内容を国民は知る由はありませんでした。その間に参院選がありましたが、このことを全く公約に掲げませんでした。
この歴史的転換をすれば、わが国はアメリカ、中国に次ぐ世界第3番目の国防費を持つ国へと大変容します。このような国民にとって重大な事柄を参院選で争点化しなかったことは「異次元の公約違反」と言えるのではないでしょうか。
さらに、国会でまともな審議を経ずに閣議決定したことは国会軽視だし、国民よりも先にアメリカに大軍拡を約束したことは、「対米従属」のそしりを免れません。順番がまるで逆です。まさに「愛犬ぽち化症候群」だと言えます。
昨年末に放送された「徹子の部屋」にゲスト出演したタモリさんが、2023年について問われ「新しい戦前になるんじゃないですかね」と発言、この国が戦後の平和主義から一転して、戦前の軍国主義に似た状況になりつつあることを危惧したものと受け止められたようですが、「戦争か平和か」が問われる追われる緊迫した国会になりそうです。