来月(10月)からの実施が予定されている消費税のインボイス制度に、今多くの個人や団体から反対の声が上がっています。インボイス制度は免税事業者だけでなく、課税事業者にも、税負担をもたらす制度です。しかし、一番の当事者である事業者だけでなく、間接的に影響を受ける一般消費者に対してもその仕組みは浸透していません。
過日、自宅のピアノの調律をして頂きました。このフリーランスの調律師さんは私のギターの個人レッスンの先生でもあります。1時間の調律が終わってコーヒーを飲みながら雑談。即座にその調律師さんからの質問がありました。とある文化事業団体から「もうインボイスの登録はしましたか?」という連絡が入ったというのです。何のことだかわからないのでいったんはその返事を保留して、ネットでいろいろ調べたが、調べれば調べるほど訳がわからなくなったのでわかりやすく説明をしてもらえないかという話になりました。その調律師さんの年間の収入は300万円に届かないと言うことでした。
まずは、消費税の簡単な仕組みを説明しました。さらにインボイス制度をわかりやすく短時間で理解してもらうのは至難の業でした。この制度は、この調律師さんのような免税事業者が課税事業者になっても、取引先である文化事業団体のような課税事業者がその消費税相当額を負担しても新たな税負担をすることになる恐ろしい制度であることを強調しました。財務省は税率のアップをしないで、160万人の免税事業者が課税事業者を選択して、増収額は7700億円になるとも話しました。
私は「もし課税事業者を選択したら、課税事業者への収入が約半分として、消費税の負担は年間10万円くらいになる」と試算をしました。調律師さんは「大きな負担になりますね。調律の10回分が消費税で吹っ飛びますね。それは、大変だから登録はやめると文化事業団体に返答をします。」と言う結論になりました。
話しは続き、2019年に安倍政権が、国民生活が困窮する中で国民の反対を押し切る形で強引に消費税の増税と複数税率を実施して、インボイス制度の導入を決めたこと。あれから4年近くの歳月が経過しましたが、複数税率による税の現場での混乱はないこと。現行の「帳簿及び請求書」の制度で消費税の税収の毀損はないこと。これだけ数多くの事業者が反対しているにもかかわらずインボイス制度の導入を強行する根拠が薄いことを言及しました。
究極、この制度の真の狙いは消費税の大増税の下準備であること。消費税の税率を1%あげれば、2兆円の税収が見込まれること。既に消費税の税収は、法人税や所得税を抜いてトップの基幹税になっていること。防衛費を今後GDPの1%から2%に倍加すること。子ども・子育て支援を異次元にするとアドバルーンを上げたが税収の見込みが立っていないこと。赤字国債の残高が半端ではないこと。財界は消費税の増税を提言していること。などの理由からこのままいくと消費税はそう遠くない時期に増税になることになると続けました。
一番の懸念は日本が「先進国」から「先進衰退国」になることで話しは瞬く間に終了しました。この国の将来を考えて、税の在り方を多くの国民が自らのこととして考えるべきです。