月別: 2024年9月

SNS社会、同じ過ちを繰り返してはいけません!!~関東大震災と福田村事件の歴史を振り返って~

「防災の日」は、台風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波などの認識を深めて備える日で、毎年9月1日に設けられています。1960年に、災害を未然に防止し、被害を軽減する目的で制定されました。「防災の日」が9月1日に制定されたのは、1923年9月1日に未曾有の大被害をもたらした『関東大震災』に由来しています。

その巨大地震により、東京府(当時)を含む関東地方は最大震度7の地震に見舞われ、死者10万5千人、家屋全半壊21万棟、地震関連の家屋焼失21万棟を記録しました。

その混乱の中、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」「朝鮮人や社会主義者が暴動を起こした、放火した」などのデマを妄信した官憲や自警団などが、関東各地で多数の朝鮮人、社会主義者、無政府主義者を殺傷した事件が発生しました。日本人や中国人も誤認により殺傷されました。現在放送中のNHK朝の連続テレビ小説「虎に翼」でも、関東大震災での朝鮮人虐殺にふれた場面がありました。その被害者は1,000人とも6,000人とも言われていますが、その数は判然としません。過去から学ぶために、しっかりと調査すべきです。

家電メーカー・シャープの創業者である早川徳次氏は「朝鮮人従業員の一人が亀戸の自宅を訪ねてきた。そこに町内の連中がやってきて『朝鮮人はいるか?いたら殺すぞ!』と。私は何も悪いことをしていない人を突き出すわけにはいかない。動揺した家族に口止めして彼をかくまった。街で朝鮮人が殺されるのを目撃したこともあった。歩きながら殺される人もいた。しかし、それを止めようとしたらこちらが殺されると。」と証言されています。

ところで101年前の9月6日、千葉県福田村(現野田市)で「福田村事件」は起きました。朝鮮人に対する流言蜚語がこの村でも飛び交い、香川県からやってきた薬売りの行商団に、緊急勅令で急遽結成された自警団は日本人かどうか疑念を抱きました。村の巡査が本署に行って確認してくると行って出かけた間に事件は起こりました。地元自警団をはじめとした群衆は行商団を取り囲み興奮のるつぼと化しました。エスカレートした彼らには、行商団の話す讃岐弁がよく理解できず、朝鮮人だと思い込み、15人のうち幼児や妊婦を含む9人を竹やりや鳶口(とびぐち)日本刀などで殺害し、利根川に捨てました。

この歴史に埋もれていた事実を映画化したのが映画「福田村事件」です。放映は昨年9月1日、100年前の関東大震災の日に放映されました。この映画を是非見たいと思っていたところ、マイナーな映画だったので都会の限られた映画館でしか上映はされませんでした。ところが、最近ふとネットでこの映画の検索をしていたらU-NEXTで見られることがわかりました。直ぐに登録して見ました。被害者目線でなく、ごく普通の人も加害者となりえるという視点でこの映画は作られています。

「流言蜚語=確証のないうわさ話、根拠のない扇動的な宣伝、デマ」は100年後のSNS社会でさらに大きくなっています。SNSの匿名性は誹謗中傷、差別的発言の温床になりかねないことから、実効性のある対策が講じられるべきではないでしょうか。私たちは、同じ過ちを繰り返さないよう、歴史に学ぶべきです。

防衛費の増加分は災害対策へ回すべきでは!!~戦争は最悪の人災です~

台風10号は、非常にゆっくりと日本列島を縦断して、多くの被害を発生させました。今度の台風10号は、台風の進路とその周辺だけでなく、東海地方や首都圏などでも大雨をもたらし、新幹線などの交通機関にも大きな影響を与えました。

プロ野球も屋根付きの名古屋のバンテリンドームでの試合が中止になりました。9月1日にKDDI維新ホールで開催が予定されていた「NHKのど自慢」も中止になりました。

ところで、災害には自然災害と人為災害があります。日本は自然災害が大変多い国です。古くからの格言に「地震・雷・火事・親父」というものがありますが、親父の由来といわれる説の一つに、台風説があります。昔の台風は『大山嵐(おおやまじ)』『大風(おおやじ)』と呼ばれていました。いつしかこれが親父に変化した、というのが台風説です。

自然災害のうち、地震は最新科学でも予知は不可能ですが、南海トラフ地震は今後30年のうちに70~80%の確率で、また、首都直下地震も今後30年のうちに70%の確率で起こると言われています。台風の、進路予想などの分析はできるようになりましたが、この台風に関してはままならなかったというのが実情です。いずれにしても、防災や減災は必須です。政府や地方自治体にできることは十分に予算を確保してさらに積極的に実行すべきです。まだ成すべき対策はあります。個人でも防災グッズの準備を含めて、対策が必要です。

一方で、人為災害には、戦争(紛争を含む)、公害、労災事故、交通事故などがあります。これらのうち公害は未然に防ぐ余地があります。労災事故、交通事故などもその発生を極限まで縮小できます。しかし、戦争を未然に防ぐには自ずと限界があります。

戦争は国際法上、一方の宣戦布告によって戦争状態となり、どちらかが負けを認めるまで続きます。しかし戦争にもルールがあります。世界的な戦争ルールの整備の先駆けとなったのが「ジュネーブ条約」です。1864年に赤十字国際委員会が提唱したものです。幾多の改訂と追加を経て、第二次世界大戦後の1949年に全面的に見直されました。2019年現在、世界196ヶ国と地域が批准しています。ロシアやイスラエルも批准しています。

その内容は、非戦闘員・施設の保護、捕虜の殺害の禁止、捕虜等への拷問又は非人道的行為の禁止、病院や救命隊員の保護、非戦闘員への避難径路の確保・提供、非戦闘員・負傷者等の人道支援物資入手の権利、使用兵器による過度な損失・苦痛の禁止です。

ところが、ウクライナでは捕虜や市民への拷問や虐待が確認されて、民間施設(病院、学校、原子力発電所にまで)への攻撃が頻発しています。中東でも子どもら大量の民間人が犠牲になっています。いったん戦争が起こると、もはや収拾がつかないのが現実です。

政府の概算要求が8月末に出そろいましたが、防衛費は今年度当初予算を約6千億円上回る約8.5兆円になりました。朝日新聞の9月1日の社説でも「膨張への一途 持続可能か」という見出しで、批判的な内容を掲載しています。防衛費は、「国を守る」ためのものです。同じ国を守る観点で言えば、「国防」より「防災・減災対策」です。「国防」は外交努力によって成すべきです。いつまでも米国の言いなりになることは人為災害を招きかねません。