平成30年度(第68回)税理士試験が今日(8月7日)~明後日(8月9日)にかけて実施されます。税理士試験は年一回しかないため受験者は相当のプレッシャーの中でラストスパートをかけていることと思います。
弊事務所でも数人の受験者がおりますが、ここが踏ん張りどきです。自分の受験科目が始まるまであるだけの力を発揮して欲しいと願っています。
今までは、合格点に達していなかった科目のある者に対してA(59~50点)からD(29点以下)のランクが本人に通知されてきました。
私が、受験をしていた30年以上前は、確か「あなたが受験された科目に合格に達したものはありませんでしたのでお知らせします。」という通知しか郵送されてこなかったのでこの間、受験者に対する通知については一歩前進したのだろうと思います。
しかし、今年からさらに総得点が仕組みになる改正が行われます。これで、また一歩不透明さが緩和されることになるのかもしれませし、現状の税理士制度そのものの抜本改正につながればよいと思っています。
この試験は税理士法施行令6条で合格基準が60点となっていますが、これは全く当てになりません。この試験のほとんどの科目で理論問題が50点、計算問題が50点です。私の経験では、合格する前年のある科目では、計算の最終値が受験予備校の模範解答と合っていました。途中の計算過程も問題はありませんでした。つまり、計算問題では50点のはずです。理論問題は、2問出題され、解答用紙はそれぞれ2枚ずつの4枚で、不十分ながらも4枚とも全部埋め尽くしました。それで、10点以下はないだろうと思っていましたが、まさかの不合格でした。いまだに、あれは何だったのかと思う時があります。
この試験は、模範回答もなければ配点基準もわからないと言った極めて閉ざされた試験です。過去には受験予備校から、明らかに出題ミスだとか解答が複数あるという指摘も幾度もありました。この改正でも、模範解答や配点基準はないようです。
一方、昨年の一般試験で出題ミスがあった京都大学では、来年の一般試験から、これまで非公開だった解答例や出題意図を全科目で公表するそうです。また、記述式の問題も多いため、一義的な解答を示すのが難しい場合は、意図だけを公表するケースもあるとしています。(2018年7月20日日経新聞)
少なくとも京都大学のような方向性に向かうのが当たり前だと思いますし、現行の試験のように、暗記力といかにそれを素早く解答用紙に埋めるのかの理論問題やアクロバット試験のような計算問題をやめて、税理士としての適性があるのかどうかの試験問題にして欲しいし、司法試験など他の士業試験にあるような口頭試問も必要でしょう。さらに、既得権益化している税務署に23年間勤務していた人にも、少なくとも一般試験を1科目合格するか、または、それに準じた何らかの試験を課しその結果を公表すべきだろうと思います。よく世間で言われている「税金取りの税法知らず」という言葉を、税理士になるためには何が「公平化」を議論すべきだろうと考えます。
また、今回の改正で、受験手数料が1科目当たり500円引き上げられます。昨年までなら1科目の受験で3,500円、1科目増えるごとに1,000円プラスになる手数料体系で、5科目受験すると7,500円(3,500円+1,000円×4科目)でした。改正後は1科目なら4,000円、1科目増えるごとに1,500円と科目当たり500円上積みされることになり、5科目受験すると10,000円(4,000円+1,500円×4科目)になりました。私が受験していた四半世紀以上前は何科目受けても同一料金(私の記憶では2,000円だったように思います。)随分高くなったように思います。この値上げで、受験者の減少が加速しなければ良いなと思います。
因みにほかの資格の受験手数料は公認会計士19,500円、司法試験28,000円、弁理士12,000円、司法書士8,000円、土地家屋調査士8,300円、日商簿記1級7,710円なので税理士試験は意外に安いのではないかと思います。税理士試験の受験手数料がまだ安いのは、上述した口頭試問がないからだと思います。
さらに、この試験の特徴は、試験日から合格発表までの期間がやたらに長いことです。今年は平成30年12月14日(金)に行います。
これはあらかじめ合格率を約2%と決めておいて、多くの試験科目で得点調整をしているからだと思います。私の経験はまさしくそれだったのではないかと思います。なぜなら、その試験問題はやたらと難しく、しかも理論問題が3問出題されて解答用紙が6枚ありました。計算問題は40点で私は、前年と違い致命的なミスをしました。しかし、かなり難度の高かった理論問題は、ほぼ今までに出題予想もされていなかったので多くの受験者が相当手間取っていたらしいのです。
また、異常なまでの酷暑が続いているので、国税庁のホームページに「第68回税理士試験について、試験中の飲食は原則禁止としていますが、水分補給のため700㎖以下の蓋付きペットボトル1本に限り、試験中、自己の責任において、机上に置いて飲むことを認めます。ただし、必ず蓋を閉めて机上に置き、こぼしたり、水滴によって問題用紙や答案用紙を汚損しないよう十分に注意してください。万が一、問題用紙や答案用紙を汚損した場合においても、交換はいたしません。なお、ペットボトルカバーの使用及び缶、瓶、水筒等を机上に置いて飲むことは認めません。」との記載があります。私が、受験をしていたころはクーラーもなく、汗をかきながら2時間の試験時間に集中して、終わったらもう立てないくらいでした。暑いのが嫌いな人は、全国の試験会場で唯一クーラーが効いていた金沢会場で受験をしていました。
いずれにしても受験生の減少は、この業界での危機です。本当に、今の税理士制度が良いのかどうか、今般の改正を機に考えてみたいものですね。