岸田首相、それを日和見と言うのではないでしょうか?!~金融所得課税について考える~

首相は、総裁選後の記者会見で「岸田文雄の特技は『人の話をよく聞く』ということだ」と自身のメモ帳を併せて国民に向けて発信しました。その「聞く力」が本物かどうか試されます。しかし、自身の公約でもあった金融所得課税については多くの国民の声でなく、少数の富裕層とそれを擁護する為政者の声を敏感に聞いたのではないでしょうか。

日経新聞(11月8日号)の「マネーのまなび」欄に金融所得課税が特集されていました。タイトルは「税率一定、高所得者は負担軽く」というもので、Q&A方式での解説でした。その解説の一つが『(Q)お金持ちは投資の税で得をしていると聞きました。(A)一般に所得の高い人が株式など金融商品を多く持ち、年収に占める投資の利益の割合が大きくなりがちです。所得税は累進課税で高所得者の負担が大きくなります。しかし、投資による利益を他の所得と分けて計算する税率は一律です。国税庁の資料によると、投資利益と他の収入の合計額に対して実際に払った所得税の割合を所得別にみると、ピークは1億円です。それを超えると割合が下がるため「1億円の壁」と呼ばれています。』としていました。

財務省によると、2019年時点で所得が5千万~1億円の層の所得税負担率は27.9%ですが、20億円~50億円の層だと18.9%に下がっています。この現象は、明らかに多くの金融資産を保有する富裕層に対して恩恵だといえるでしょう。

日経新聞は、『岸田首相は就任当初の記者会見で金融所得課税について検討の意向を示していましたが、わずか1週間で「当面は触ることはない」と前言を覆した。今回の首相の方針変更は、金融所得課税を警戒する株式市場の声に対して「聞く力」を発揮したともいえる。しかし、「こんなに早く主張を取り下げるのは今後の政権運営にとって不安のタネになりそうだ。」と報道していました。

岸田総理と同い年の私は、「聞く力」だけでなく、「涙する目」と「傾ける耳」と「差し伸べる手」が必要だと思います。

富裕層の金融所得が分離課税(国税15%、地方税5%)でなく、総合課税であれば他の所得と合わせて税率55%(国税45%、地方税10%)になるところが、一般勤労者の所得400万円の階層と同じ税率の20%というのはあまりにも不公平です。

配当所得だけでも税率20%の分離課税を廃止し、総合課税にすれば約1兆の税収が生まれると財務省は試算しています。また、自民党の高市早苗政調会長は「50万円以上の金融所得の税率を30%に引き上げれば約3,000億円の増収になる」とかつて発言していました。

米国の著名な投資家のウォーレン・バフェット氏は「過去20年間、階級闘争が続いたが、勝利したのはわれわれの階級だ。われわれの階級が税率を劇的に引き上げたのだ」(2011年9月30日付、ワシントン・ポスト紙)としていましたが、その流れとは逆にバイデン米大統領は4月の議会演説で「1%の富裕層に課税する。ここから税金を取らなくてどうするんだ。」と発言しました。岸田総理、「日和見」せずに、金融所得課税を実行してください。