朝日新聞は、4月19日の一面トップに「法人税優遇 減収2.3兆円」との大見出しで『「租税特別措置法(租特法)」適用企業は非公開』の報道をしました。
リード部分で、『特定の企業や個人の税負担を優遇する「租特法」による法人税の減収額が、2022年度は2兆3015億円にのぼり、現行制度になった11年以降最高額になったことが財務省の試算でわかった』と記載しています。
朝日新聞によると、租特法とは『企業の設備投資を促すなど、特定の政策を達成するために、特別に税を軽減したり免除したりする政策減税の一つ。税制の原則とされる「公平・中立・簡素」の例外という位置づけで、法律で定められている。一定の期限を設けるのが原則だが、延長が繰り返され、何十年も続くケースもある』と解説しています。
記事の内容を要約すると『財務省は毎年、租特法によりどのくらい減収したかを国会に報告している。問題は、国が守秘義務の観点から、どの企業がどのくらい減税されているかなどを公開しておらず、どのくらいの政策効果があったのかを検証しにくいことだ。
「世界の税支出の透明性指数」によると、日本の順位は104カ国・地域中94位に沈む。1位は韓国で、主要7カ国(G7)では、カナダ(2位)、ドイツ(4位)、フランス(5位)、米国(6位)、イタリア(7位)、英国(27位)と比べて際立って低い水準だ。
投資額などに応じて減税規模が大きくになるため、結果として大企業に恩恵が偏る傾向にある。企業全体の0.2%しかない「資本金100億円超」の企業が研究開発減税の約65%、賃上げ減税の約24%を占めている』としています。
上場企業は従来、財務内容(貸借対照表、損益計算書など)を広くステークホルダー(利害関係者)に情報公開をすることが義務づけられてきました。さらに近年、企業評価においてESG(環境、社会、ガバナンス)などの非財務情報の重要性が高まっています。非財務情報とは、経営戦略や経営課題、企業が行うサステナビリティ(持続可能性)の取り組みなど、数値や数量で表せる財務以外の情報のことです。日本では2023年度から上場企業に対して、非財務情報を開示することが義務付けられました。
このように情報公開の適正化、迅速化が求められる昨今ですが、税情報だけが「守秘義務」を口実に公開されないことについて疑問が生じます。一部の大企業を優遇しているということが国民の目にさらされることを配慮、懸念してのことしか考えられません。
大企業の税負担は、実際には大きくないとの指摘があります。資本金100億円超の大企業の実際の税負担率は中小企業の軽減税率15%を下回っているとの試算結果もあります。このような指摘の背後にあるのが税制上の特別な措置です。
中でも、大企業の多くで活用され、影響の大きいものは、「租税特別措置」、「受取配当金の益金不算入」、「欠損金の繰越控除」の3つであると言われています。これらの特権的優遇税制を、資本金100億円超の大企業には適用しない措置を講じるべきです。「企業献金の見返りに、法人税を軽減する」というのは租税の原則から言っても許さざるべき行為ではないでしょうか。