税務相談停止命令制度の創設は、納税者の重大な権利侵害の可能性あり?!~この法律を即座に廃止し、納税者権利憲章を制定する必要があります!!~

税務相談停止命令制度が2024年4月1日より創設されました。この制度は、税理士でない者が反復して税務相談を行い「納税義務の適正な実現に重大な影響を及ぼすことを防止するために緊急に措置をとる必要があると認めるときは、その税務相談の停止を財務大臣が命ずることができる」という内容です。

税務相談を行った者に対して、命令すべきか否かを照査する必要があるときに、質問検査権を国税庁長官・税務署に与え、帳簿書類(電磁的記録を含む)を検査させることができるとされています。命令違反には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金を、国税庁長官・税務署の質問検査の拒否や虚偽答弁は30万円以下の罰金を科すなど厳しい罰則で取り締まろうとしています。

この法律は、政府税資調査会で議論されて国会に提案されたものではなく、国税庁の要望で盛り込まれたものです。財務省は命令制度を創設する背景として「SNSやインターネットで『節税コンサルタント』を名乗り、不特定多数に脱税や不正還付の方法を指南して手数料を取るなどの事例が散見される」ことから、「相談活動を防止するための措置が必要」と説明しています。

しかし、懸念されるのは、「違反」とする対象や範囲が際限なく、あるいは恣意的に拡大され善良な個人や組織にも及ぶ恐れがあることです。

昨年3月の参院財政金融委員会での政府答弁は、「納税者同士で一般的な知識を学び合うといった、現在の税理士業務である税務相談に該当しないような取り組みを対象にするものではない。一般的な税法の解説になどにとどまる場合には、通常対象となる税務相談には該当しない」としたものの、「個別具体的な事実に基づき判断をする」という含みのある答弁をしました。つまり税務相談を行っている個人や団体について税務署員の判断によって恣意的な調査がなされることも否定できないのです。

ただ「違反」される者は、国会論戦の中で、脱税や不正還付の指南に該当し、納税義務の適正な実現に重要な影響を及ぼす者と言う二重の制約があり、処分前に弁明の機会が与えられることが明らかになりました。

なぜ、このような解釈によっては「弾圧法規」になりかねない法律が制定されるのでしょうか。それはわが国に「納税者権利憲章」がないからです。OECD加盟38ヶ国で「憲章」がないのは唯一わが国だけです。

国民は、納税者としての権利を憲法と法律で定めるところにより尊重、保障されなけれなければなりません。「納税者権利憲章」とは、税務行政における適正手続等、国が納税者の権利を保障することを宣言した権利の憲章です。税務行政の中で、人権を無視するような「抜き打ち調査」や「推計課税」が横行し、納税者は不安定な存在に置かれています。

「納税者の権利」をないがしろにしたままでの、この法律は今すぐ廃止すべきです。そして、自民党の裏金議員の税務調査と裏金作りの指南者に対する厳罰を強く求めます。