選択的夫婦別姓は、婚姻関係にある夫婦が別姓を望む場合に、同姓・別姓のいずれかを強制するのではなく、改姓するかどうか(結婚後も夫婦がそれぞれ結婚前の姓を称するかどうか)を自ら決定する選択の自由を認めるものです。
最近の各種世論調査において選択的夫婦別姓制度の導入に賛成する割合は、反対の割合を大きく上回っています。朝日新聞の世論調査(7月22日付)では制度導入に「賛成」とこたえたのは73%、自民党の支持層でも64%にとぼっています。地方議会においても、国に対して選択的夫婦別姓制度の導入を求める意見書を採択する動きが加速(今年10月現在426件)しています。
経団連も10月1日、「選択的夫婦別姓の早期実現を求めるシンポジウム」を開催しました。選択的夫婦別姓をめぐっては、経団連は6月18日に提言「選択肢のある社会の実現を目指して~女性活躍に対する制度の壁を乗り越える」を公表しています。
女性への差別撤廃を目指す国連の委員会は、ジェンダー平等に向けた日本政府の取り組みに対する見解を発表し、夫婦が同じ名字にすることを定めた日本の民法について、改正を求める勧告を出しました。国連の委員会が夫婦同姓を定めた民法について勧告を出したのは、今回で4回目です。
かつてない世論の高まりを前に、自民党総裁選で制度導入に「選択的ということなんだから、それを拒否する必要はない」と積極的な姿勢を示していた石破茂氏も、首相就任後は、国民の間にさまざまな意見があるということを理由に「さらなる検討を」と慎重姿勢に転じてしまいました。
そもそも、自民党はなぜ反対を続けてきたのでしょうか。それは保守派の強い反発があるからです。その背景には「日本会議」があります。日本会議は、美しい日本の再建と誇りある国づくりを掲げ、政策提言などを行う民間団体です。その主張は、「家族の一体感を損なう」などです。そこには古い家族観・価値観に固執する姿勢があります。
世界で夫婦同姓を義務づけているのは日本だけです。民法は婚姻時に「夫又は妻の氏を称する」と定めていますが、改姓をするのは現在も95%が女性です。姓を選択する権利が事実上否定され、改姓や旧姓の通称使用による不便や不利益の多くが女性に押しつけられています。
氏名は個人の人格の象徴です。姓を変えることはアイデンティティーが奪われると感じるなど個人の尊厳を脅かしています。そのため、夫婦同姓でなければ結婚できない現行制度は「法の下の平等」「婚姻の自由」をうたう憲法に反するとして、多くの訴訟も起こされてきました。
世の中の流れは明らかです。石破氏は所信表明演説で冒頭、「民主主義のあるべき姿とは、多様な国民の声を反映した各党派が真摯に政策を協議し、より良い成案を得ること」と述べました。選択的夫婦別姓が建設的な論議を通じ早期の実現ができることを切に願います。