254億円の寄付にびっくり仰天!!~そこで考えました。やはり資産家に対する課税強化は必要!~

新聞の記事をみて驚愕しました。宝塚市は2月3日、老朽化に伴う市立病院の建て替えに役立てて欲しいと、市内在住の高齢夫妻から250億円、そして手術用支援ロボットの購入費として約4億円、併せて254億円の寄付を受けたと発表しました。

このような高額の寄付をする人はごく少数です。わが国は欧米などと比べ寄付する文化や慣習が稀薄です。最新の報告資料によると、2020年時点でのわが国の個人寄付総額は1.2兆円と、2010年に比べて2.5倍に増加していますが、これは、特に東日本大震災の影響が大きかったとされています。また、寄付者の割合も増加傾向にありますが、2020年時点では44.1%でした。しかし、まだまだ寄付総額も寄付者の割合も低いレベルに留まっています 。世界的な視点で見た場合、日本は「World Giving Index(世界寄付指数) 2021」で114カ国中107位、つまり「世界で最も寄付に冷淡な国」の一つされています 。

この高額寄付で考えたのが、富裕層に対する課税のあり方です。税制調査会の資料では、資本所得(資産を元手に新たな資産を生むこと)の分布について分析したところ、全体では1,764万人が7.4兆円の資本所得を得て、そのうち上位0.3%の者(資本所得1,000万円以上を保有する者)が総額の53%(3.9兆円)を得ているという偏りがあります。

さて、わが国は最高税率が45%(所得が4,000万円を超える人に適用される)の累進税率になっています。ところが、1億円以上の所得がある人の場合、給与所得者のみの場合は少なく、株式等の売却益などの金融所得の割合が多くなっています。そして、株の売却益などの金融所得に対する課税は、源泉分離(他の所得とは分離して課税される)となっていて、金融所得がいくら多額でも原則一律20%の課税となります。これが、「1億円の壁(所得が1億円を超えることを境にその税率が下がる現象)」と言われるものです。高額所得者になればなるほど株式等の譲渡所得が高くなっています。

また、家計で保有する金融資産(貯蓄現在高)のうち、世帯主の年齢が60歳以上の高齢世帯の割合が増加し2019年には63.5%になりました。さらに、高齢階層を見てみると、最も少ない層(450万円未満)と最も多い層(3,000万円)の割合がそれぞれ高くなっていて、金融資産の保有が二極化していることがわかります。つまり金融資産の多くが高齢世帯に集中し、しかも偏在している事実です。

こうした現状を解決するには、現在の課税のあり方を根本的に見直す必要があります。つまりフローとしての「所得税」とストックとしての「相続税」です。

所得税は、株式等の譲渡所得を分離課税から総合課税にして、かつ累進税率を引き上げることで、公平で公正な課税が期待できます。相続税は、居住用の財産とその他の財産(金融資産を含む)を区分して、前者には軽い税金を、後者には重い税金を課して、かつ相続税がかかる人の割合を少なくし、全体として相続税の税収を上げる工夫をすべきです。

欧米のように寄付の文化や慣習を根付かせるとともに、税制の面で「富の偏在」を是正する措置を講ずる必要が問われています。