豊かさとは何か~今必要なのは、自己肯定感、人権そして相互承認!!~

 

2024年6月21日付けの朝日新聞、オピニオン&フォーラムに暉峻 淑子(てるおか いつこ)先生へのインタビューが載っていました。11面5段の紙面を使っての特集でした。

先生が一躍脚光を浴びたのは岩波新書から出版された「豊かさとは何か」でした。ちょうどバブルの最盛期1989年に出版されました。

その内容は、『 モノとカネがあふれる世界一の金持ち国・日本。一方では、環境破壊、過労死、受験競争、老後の不安など深刻な現象にこと欠かず、国民にはゆとりも豊かさの実感もない。当時の西ドイツでの在住体験と対比させながら、日本人の生活のあり方を点検し、真に豊かな社会への道をさぐる。』と言うものです。

実は先生とは、曰くがあります。総合会計を開業して程なく、新入職員向けの独習文献にこの本を指定しました。中学生時代につらい目に遭い、自らの進路に思いあぐねていた二女に、この本を手渡すとものすごく興味を持ち、未来へ一筋の光明が見いだされました。

私は先生の自宅の住所を調べ、早速、彼女は先生に長い手紙を出し、先生からの返事が来ました。先生のアドバイスは「大学でドイツ語専攻したら」という内容で、それを機にがむしゃらに勉強を始め、とうとう大阪外大ドイツ語学科に進学することができました。先生が大阪で講演されたときには、わざわざ出向き、控え室で先生と直接話す機会を得て、勉強のモチベーションを高めました。今でも先生とはメールで繋がっているそうです。

先生は96歳ですが、バリバリの経済学者です。朝日新聞のインタビューには、いつも怒っておられますね、という質問に「私は日常生活の中では、決して怒りっぽい人間ではありませんよ。しかし、人権や民主主義を踏みにじり、ないがしろにする政治を承認できますか。貧困化してフードバンクの列に並ぶ人々がいるのに、一方で政治家たちは何億のカネを裏金にして私物化する。子どもの義務教育の場がブラック企業のような労働現場になっているのに、ほぼ放置したまま。どうして起こらずにいられますか。笑ってみていなさい、という方が不自然ではないですか」と答えておられます。

「バブルが自信過剰の絶頂期だったとすれば、いまは逆に、自信喪失の時代です。でも変わっていないものもあります」と続けられ、具体的には「例えば、労働時間は相変わらず長く、社会保障も削減される一方です。新自由主義によって非正規労働が広がり、フリーランスや、ギグワークなど生活の計画を立てられない働き方が多くなりました。偏差値重視の教育もそう。私たちの意識の画一化、つまり権力持つものになびきやすいという特徴も変わっていません」と指摘されています。

「10年近く『安倍一強』が続く中で起きた民主主義の毀損は、今も回復されていません」その流れを変えるには「多くの人が、社会参加し、そこに連帯が生まれれば、恣意的な権力を止めることができると信じています」と締めくくられています。

この記事のタイトルになっている「誰もが自己肯定感,他者の人権を考える、相互承認を起点に」は実に素晴らしく、多くの人々がこの感覚を持てば社会は変わるでしょう。