安倍首相は9月25日の記者会見で衆議院の解散を表明しました。それによると同月28日の臨時国会の冒頭で何の審議もなく衆議院を解散し、10月10日公示、22日投票・開票をするという異例な解散です。これは、マスコミによると、戦後4回目の異常事態だそうです。
森友学園問題や加計学園問題に見られる安倍首相や首相夫人の昭恵さんが直接関わる疑惑については、ほとんど解明されないまま通常国会は閉会しました。
野党は、憲法53条にもとづき6月22日に臨時国会の召集を要求し疑惑の徹底究明を求めましたが、これを3ヶ月以上放置したまま臨時国会の冒頭で解散することは、マスコミ報道などにもあるように「疑惑隠し」を狙ったものと言われても仕方ない暴挙です。自民党の内部でも同じようなことを言う人もあり、決して「安倍首相の一枚岩」ではありません。
さらに、解散の最大の理由がとってつけたような「消費税の使い道を、人づくり革命にシフトし、当初の借金返済を先送りするというもの」です。
元々、消費税はその税の性格上極めて「逆進性が高い」別の言い方をすれば、「富裕層に優しく、中間層や低所得者層に大きな影響を与える」という弱点を持っています。
アベノミクスの最大の目標は2%の物価の上昇です。一言で言えば国内の景気回復をすると言うことです。確かに、大企業の業績は4年連続最高益を更新していますが、IMFは「賃金の伸びは弱く、消費の拡大につながっていない」と評価をしています。現に、「実感なき景気回復」という言葉が巷では溢れています。私たちに身近なコンビニの値下げ競争やイオンなど大手のスーパーでも日用品の値下げが起きています。
その被害を被っているのが、コンビニやスーパーに関わっている中小企業なのです。つまり、コンビニやスーパーの戦略の陰で、なけなしの利益をはき出して、赤字覚悟でも付き合わないといけない重層構造に日本経済はなっているのです。因みに、日本の中小企業の占める割合は99%以上であり、そこで働く人は約7割を占めています。こんな状態で消費税の税率アップをし、しかも以前からの公約である消費税の増税は、借金の返済と社会保障に当てるという約束をかなぐり捨てて使途を変えるなんてとんでもないことです。
今やるべきは、消費税の税率アップではなく、むしろ景気が実感できるまで少なくとも凍結することだと考えます。租税の大原則である「累進課税」を強化しこの難局を乗り越えるべきことが本筋ではないでしょうか。
デフレから脱却していない状態で、消費税率を上げると、景気はさらに減速し、家計がますます苦しくなり、子づくりや教育にお金がかけられなくなり、安倍首相の言う「人づくり革命」は、上手くいったとしてもおそらく限定的にしかその効果は得られないでしょう。
経済格差や教育格差など格差問題が言われ出してから久しいですが、このままの途を突き進めば、消費税がこの国を破壊してしまう気がします。
本来ならば、406兆円もの内部留保をため込んでいる大企業やタンス預金を875兆円もしている超富裕層から課税をして、いったん消費税を8%から5%に減税すれば、日本全体の景気が浮揚して、格差問題も解消するかもしれません。