全国商工新聞という業者団体の機関誌の「税金相談コーナー」に数年間にわたり執筆したものの中からセレクトし、5回にわたり掲載をします。
第1回目は、意外に知られていない「有姿除却」についてです。
(Q)建設業を法人で営んでいます。設備を最新鋭のものにしましたが、古い同様の設備は使わないままにしています。この場合の税務処理はどうするのでしょうか。
(A)生産効率を上げるために最新設備にされたのですね。こうした場合には古い資産を廃棄等していないときであっても、その使用を廃止し、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないと認められるものについては、その固定資産の帳簿価額からその処分見込価額を控除した残額をその事実が生じた日の属する事業年度の除却損として損金の額に算入することができます。
これを有姿除却(姿があっても除却したと同じ状態のもの)といいます。有姿除却は、資金の支出を伴わない経費であり節税の観点からも有効です。
しかし後の税務調査で対策が重要となります。ポイントは、その資産が将来使用される可能性がないということを立証できるかにあります。外形上その使用ができるかどうか不明なときは、トラブルがないような書類等を残すことが良いでしょう。具体的には、新規設備を導入した経緯、除却した場合の見積もり書などが有効かと思います。
また、類似のものとしてソフトウエアも同じ考え方をします。つまり物理的な除却、廃棄、消滅等がない場合であっても、今後事業の用に供しないことが明らかな事実があるときは、そのソフトウエアの帳簿価額から処分見込価額控除した残額をその事実が生じた日の属する事業年度の損金の額に算入することができます。