確定申告も後半戦に突入しました。3月4日衆議院本会議にて来年度の予算案、税制改正法案が、政府当初案を修正して可決し参議院に送られました。衆議院で、政府の当初案が修正されるのは29年ぶりです。それでも、早急に対応すべき国民生活に重要な物価対策など国民生活関連問題は置き去りのままで、防衛費などの問題にはほとんどメスが入ることなくことが進んでいます。
今回の予算案では、所得税をめぐり大幅な改正がされます。従来の「103万円の壁」を「160万円の壁」に引き上げるものです。所得税では、所得から一定額を差し引く「控除」の仕組みがあり、現在の制度では、給与を得て働く人は「基礎控除」の48万円と「給与所得控除」の55万円をあわせた103万円を年収が超えると所得税が生じます。与党は、この税制関連法案の修正で、年収200万円以下の人は、非課税枠を160万円に引き上げられます。ただし、年収によって引き上げ幅が異なる、かなり複雑な内容となっています。
さて、日本の所得税の基礎控除の水準が極めて低いことが明らかになっています。主な国では、イギリス237万円、アメリカ209万円、ドイツ184万円、フランス179万円です。今般の改正では基礎控除はわずか10万円の引上げで58万円になるだけです。
所得税には「生計費非課税」の原則があります。少なくとも生活費には税金をかけないことを求めており、生存に必要な所得には課税すべきではないとされています。この原則は憲法の要請であり、基礎控除としてすべての納税者の収入から差し引かれるべきです。
さて、給与所得者は給与所得控除がありますが、事業所得者にはそれがありません。不平等です。どの所得でも同じ控除を受けられることができるように給与所得控除を廃止して、基礎控除をせめて160万円にしたらどうでしょうか。すると欧米並になります。また、それによって高額所得者に有利になる部分は、税率のアップで税収が落ちないようにすべきでしょう。さらに不公平税制である「金融所得課税(基本的に20%の分離課税)」も見直し、総合課税にすべきです。
基礎控除を引き上げても根本的な問題は解決にはなりません。というのは、住民税非課税世帯だけでも約1,500万世帯、それ以外の所得税非課税の人が900万規模、生活保護世帯が165万世帯あります。
所得税は累進課税が原則ですが、消費税はそれとは逆に所得の低い人ほど負担が重い逆進性が大きな問題です。負担能力に応じて税負担をするというのは憲法25条の生存権を税制の面から保障するための原則です。消費税を現行の10%(食料品は8%)から5%に減税すれば、国民の購買力は向上し結果として経済は上向きます。
財源はあります。最も有効なものは、防衛費の削減です。国は、航空戦力の質・量をさらに洗練・強化するため、戦闘機などの爆買いをしています。例えばF-35Aだけでも8機、1,120億円の予算です。防衛費増大より国民の暮らしや命が大事と思うのは私だけではないと思います。日本の経済浮揚には、基礎控除の大幅な引上げと消費税減税が最も有効です。