平成29年確定申告を終えて思うこと~医療費控除とふるさと納税について~

3月15日、所得税の確定申告の期限です。毎年毎年、早く終われるような工夫をしています。「これは」という特効薬はありませんが、PCの普及、進化などICT社会の到来により相対的に確定申告の作業時間は短縮していると思います。若い頃に、1週間分の下着をもって事務所へ泊まり込みをしたことを思い出すと隔世の感があります。

さて、この確定申告で医療費控除のシステムが大きく変わりました。今までは、医療費の領収書を手計算やエクセル等で集計していましたが手間がかかる割に還付額は少なく、なかなか割に合わない内容でした。最大のショックは、若いスタッフに集計作業をお願いし苦労してやっと終わったところ、いざ税額計算作業をしてみると事業の業績が悪く納める税額がゼロだったため、医療費控除をしても還付額はなく、その作業がまったくムダになったことです。このショックは幾度も経験しました。

平成29年分の確定申告からはこの面倒な作業を劇的に簡略化できるようになるはずでした。

従来はすべての領収書やレシートを申告の際に添付して提出する必要がありましたが、今年からは不要になりました。その代わりとして医療を受けた人と、病院や薬局ごとに医療費をまとめた明細書を添付することとなりました。これだけだとあまりメリットは大きくありませんが、この明細書の代わりとして健康保険組合や国民健康保険から送られてくる「医療費のお知らせ」を添付書類として利用できることになりました。「医療費のお知らせ」は加入者と扶養家族が医療機関にかかった日付や医療機関名、医療費の額がリスト化された書類です。

送付される時期は健康保険により異なりますが、協会けんぽであれば2月中旬に勤務先にまとめて送られてきます。今回送付される明細に記載されるのは前年10月から本年10月までの受診分なので、本年11~12月分の受診分は自分で追加する必要があり結構面倒くさくこのやり方でやった納税者は少数派だったのではないでしょうか。

因みに、「医療費の抑制」を意図していると思われる「セルフメディケーション税制」は、ドラッグストア側の宣伝が悪いのか納税者には余り浸透されていないようで、結局この制度を活用した人は1人もいませんでした。

一方、ふるさと納税をする納税者は増えてきています。かなりの納税者の申告書にこの寄付金控除の記載をしました。

ふるさと納税とは『ふるさとや応援したい自治体へ寄付をした個人や法人の納税額を軽減する制度で、公益にかなう寄付をした納税者の税額を減らす寄付税制の一種です。平成16年に長野県泰阜(やすおか)村が導入した寄付条例が前身で、改正地方税法が施行した平成20年から個人向け制度が始まりました。

自分の育ったふるさとを応援するという趣旨から「ふるさと納税」という名称でよばれていますが、全国どの自治体へも寄付できます。個人は寄付額から2,000円を差し引いた額について、年収などに応じて限度額まで個人住民税や所得税から控除されます。

寄付先から返礼品として高級和牛、温泉宿泊券などの特産品や特典をもらえることもあるため人気をよび、導入当初の納税額は年100億~150億円でしたが平成26年に388億円、平成27年は1653億円と急増しました。

被災地支援を目的とした寄付が納税額を押し上げた面もあります。ふるさと納税は使い道を指定できる唯一の税で、都市と地方の税収格差を是正する効果があると政府は説明しています。また、欧米に比べて遅れぎみの寄付文化を醸成する役割があるとの指摘もあると言われています。

一方、自治体の特典競争が過熱し、納税額の多くが高価な特産品購入に消えて自治体財政に寄与しない例も出ています。都市部自治体の住民税は平成28年に998億円減り、ふるさと納税は「受益者負担の原則」に反するとの批判が出ています。所得の多い人ほど控除額が多くなるため、「富裕層の節税対策」に使われているとの指摘もあります。総務省は平成27年、28年の2年にわたって換金性の高い返礼品や高額返礼品を使わないよう全国の自治体へ要請をしています。』(日本大百科全書(ニッポニカ)の解説引用し、一部改編しました)

この寄付金控除を受けるためには、確定申告書に「寄付金の受領書等の記載事項」という添付資料をつけないといけません。添付資料の(注)に、「上記、寄付先の所在地に代えて、電話番号(市外局番から)を入力していただいても構いません。」との記載があります。しかし、寄付した自治体から送付される「寄付金受領証明書」には、その自治体名と市町村長名の記載はあってもなぜか電話番号の記載がないのです。仕方ないのでその自治体のホームページで電話番号を調べることになってしまいました。しかし、もともとホームページに電話番号を載せていない自治体も散見されました。

総務省と財務省とその外局である国税庁とのコミニューケーションが上手くいっていたとしたら、こんな手間も省けたと思います。