心ある政治家に提言する4つの税制改革~格差是正と庶民にやさしい税制をめざして~

日本の税制の大きな転換点になった消費税導入(1989年)から32年間の特徴は次の3点に要約されます。

①法人税・所得税・相続税の最高税率は大幅に引き下げられました。その結果それぞれの税収は大きく落ち込みました。同時にその不足分を補うように新規国債の発行は増えました。

②消費税は度重なる税率の引き上げが行われ、各種の零細事業者を配慮する制度の見直しがはかられました。消費税は補完税から基幹税へと姿を変え、いつのまにか税収のトップの地位を占めるようになりました。

③その結果、大企業と富裕層はその果実を受けましたが、その一方で多くの庶民と中小零細企業は増税にあえいでいます。つまり、個人・法人ともに、所得格差はこれまでにないほど拡大しています。

ところで、租税のあり方に「応能負担の原則」があります。「応能負担」とは、負担能力のない者には税を少ない負担率にし、所得の高い者にはより高い負担率で税を課すことによって、所得を再配分する機能を与えるという考え方です。

具体的には(1)間接税ではなく直接税(所得課税)を中心にする。(2)各種の所得を総合化して、所得が多くなるに応じて高い税率(超過累進税率)を課す。(3)生活費は非課税とする。(4)勤労所得(給与所得や事業所得など)には軽い税金を、不労所得(株式の配当や譲渡など)には重い税金を課す、などを言います。

改革の4つの提案は、消費課税、法人課税、所得課税、資産課税のそれぞれの分野です。

まず、消費課税は、逆進性(所得の低い人ほどその負担率が高い)の強い消費税を当面5%に減税し、将来は廃止することです。その代替財源の一部として、新しい形の物品税(大企業のメーカー、例えば自動車産業などに出荷の時点で一定税率を課す)を創設してはどうでしょうか。さらに、免税事業者だけでなく課税事業者も大混乱に陥るインボイス制度への移行をやめることが喫緊の課題です。

次に、法人課税は、企業規模が大きくなればなるほど税率が低くなる仕組み(租税措置法などが原因です)を改めなければなりません。また、課税の仕組みを比例税率から所得税のように超過累進税率に変えることが必要です。

そして、個人課税では、消費税導入後に下げられた超過累進課税を強化することです。健康保険料に対する負担率を上限なしにすることも課題です。さらに、金融資産(株式の譲渡や配当など)を総合課税にすることです。不動産の譲渡も総合課税にすることも検討が必要です。

最後に、資産課税は、相続税の累進課税を強化することが大事です。併せて、超富裕層(具体的には、金融資産を5億円以上所有している個人)から低率でも良いので課税する仕組みを創設という発想はどうでしょうか。

総選挙の日程が10月31日で決まりました。それぞれの政治家(所属政党は問いません)が信念を持ってその世界に入られたのだろうと思います。日本は異常なまでの格差社会になっています。

政治家の皆さんには初心を忘れず、国民目線でこの格差社会を解決するための税制のあり方に目を向けてもらえればと願います。市井の税理士からのメッセージです。