春闘が真っ盛りです。株価が史上最高値を記録し、好決算が予想される中で、今年の賃上げへの期待が膨らんでいます。大企業は大幅な賃上げと下請けへの価格転嫁を保証する社会的責任があるのではないでしょうか。
さて、岸田首相の政権発足以来の最重要課題が「賃上げ」です。ところが、世論調査では「今年の夏頃に」と掲げる「物価高を上回る賃上げ」の実現への期待を聞いたところ、「期待する」が約4割「期待しない」が約6割と、なかなか厳しい国民の目があります。
賃上げと同時に重要なのは、最低賃金の引き上げです。新聞は、各県単位で定められている最低賃金について、「全国一律」を求める意見書の採択が地方議会で広がっていることを報じています。この背景として都市との賃金格差で人口が流失して、地方の人手不足が進む危機感が強まっているとしています。換言すれば、地方はさらに衰退し、東京への一極集中に歯止めがかからないということです。最低賃金に地域差を設けている国はごく少数で、日本以外はカナダ、中国、インドネシアの4カ国しかありません。
先進国の最低賃金はどうなっているのでしょうか。2023年のデータによると、オーストアリア2,170円、イギリス1,728円、フランス1,670円、ドイツ1,662円、アメリカ1,380円(ただしニューヨークの実態は2,400円)、日本は加重平均で1,004円となっています。このデータを見る限り、失われた30年が如実に数字に表れています。
全国労動組合総連合(全労連)や日本共産党は、全国一律、1,500円という政策を掲げています。1度に引き上げるのは難しくても、政府が毎年100円ずつ引き上ると決めれば、2028年には1,500円になります。1日8時間、22日働けば、月264,000円になります。
現在、賃上げすれば法人税の税額が一定額安くなる制度があります。この制度の使い勝手がよくありません。それは、中小企業は赤字企業が7割程度と言われこの制度の恩恵にあずかれないことがあるからです。日本での中小企業の割合は99%を超え、そこで働く労働者は7割です。ここにメスを入れないといけません。中小企業の賃上げに対する支援は税制ではなく、賃上げに対する一定割合を直接支給するシステムにしたら効果が出ると思います。さらに、賃上げをするために融資を受ける場合の信用保証制度の拡充も必要です。
その財源は、大企業に対する優遇税制の廃止、法人税率の引き上げ(現在の23.2%ですが消費税導入前は43.3%でした)、法人税の累進課税化、企業に貯まっている内部留保(484兆円にも及ぶ)に対する課税、頭打ちがある社会保険料の負担も青天井にするなどが考えられます。歳出では、防衛費43兆円の増加をやめることが何より肝要です。それにより賃上げ支援だけでなく、少子化対策や大学授業料無償化、医療費の無償化、学校給食の無償化、消費税の減税、年金受給者の年金の引き上げをすることも可能になります。
全国一律での最低賃金のアップと併せて消費税の減税をすれば、景気の好循環が生まれます。また、拡がりすぎている格差の是正効果にも寄与します。そうすれば、巡りめぐって所得税などの税収増にもつながります。この国の「かたち」を変えるのは国民です。