男は……~時代は変わりつつあります~

私の運転する車が新年早々渋滞に巻き込まれました。ふと目にした看板が印象的で、すぐに車内にあるメモ帳に書き留めました。「男と看板はだまってしゃべる。~書かんとわからんし、書きすぎても伝わらん~」これは、とある看板屋さんの玄関にある「看板」に書かれていた言葉です。なかなか、洒落たキャッチコピーで、看板の持っている本質を突いているのだと思います。しかし、「男は‥だまって‥」の部分は少し違和感を持ちました。

今や都市伝説化された「男は黙ってサッポロビール」のCMに大きな影響を多分に受けていると容易に思われます。このCMには今から半世紀前の1970年、当時の超大物俳優、故三船敏郎さんが起用され、一世を風靡しターゲットであった「お父さんたち」を刺激し、流行語にもなりました。しかし、今やターゲットは間違えなく「お父さん」から「全世代」へと大きく変化していて、最近のビールCMには有名な女優さんがたくさん出演しています。

「とき」はあれから半世紀経過し、今年の正月に高視聴率をたたき出した箱根駅伝のことです。最終区、まさかの逆転劇でした。テレビに釘付けだった私の妻が追い上げ、追い越す選手を伴走車から鼓舞した駒澤大学の監督の檄に不快感を抱き怒りをぶつけていました。その言葉は「男だろ!」「やったよ、男だ」ここぞの場面で「活を入れる」ために使った言葉だそうです。しかも、アナウンサーまでも「男をあげた」、選手も「監督を男に」やはり違和感があります。女子駅伝では「女だろ!」とは決して言いません。精一杯頑張る姿勢に、男も女もありません。

ところで「選択的夫婦別姓制度」を導入する世論は高まり、昨年11月の民間調査では7割を超えています。反対派は、夫婦別姓にすると「家族の絆が弱くなる」「子どもが不幸になる」と言います。しかし、社会は多様化しています。夫婦や家族にさまざまな形があります。世界では法律で同姓を強制しているのは日本だけで、外国では家族の絆が弱いとか、子どもが不幸だとかいうことはありません。

現在の日本では、離婚や再婚が増えていて、婚姻する4組に1組が双方か片方が再婚です。婚姻のたびに姓を変えることの不便さを感じる人は少なからず存在しています。また、独身の時に培ってきた姓を変えることへの不満もあります。私の知り合いの同業者が、結婚の際に、事務所名を含め手続きが煩雑だったと嘆いていました。

現行制度は、同姓を強制して、違う名前を選ぼうとする人たちに選ばせないことです。選択的夫婦別姓を認めるかどうかは、自分と違う生き方を尊重するかどうか、つまり多様な生き方を認める社会かどうかの試金石といえるでしょう。「男らしさ」や「女らしさ」だけでなく、自分らしく生きられる社会にしていかないといけないと思います。

菅首相にも責任があります。かつて選択的夫婦別姓を提唱していたからです。昨年11月の国会で「政治家としてそうしたことを申し上げてきたことには責任がある」と答弁しています。「先手・先手」は口先だけで、さまざまな対応が「後手・後手」になっているのではないでしょうか。