監視型社会と人権を考える!~税法にも忍び寄る内心の自由の侵害~

IT型社会の進展に伴い私たちの暮らしは飛躍的に便利になっています。多くの事業所でも家庭でも監視カメラを置いています。弊事務所でもわが家でも管理システムで守られています。スマホのGPS機能を使えばカーナビの代わりになります。また、超方向音痴の愚妻は道案内に便利に使っています。このように私たちの生活は安全になり、そして便利になりました。

でも、こうした情報を誰がどのように管理しているのでしょうか?私たちが知らない間にその情報が利用されているかもしれません。どこもかしこにもある監視カメラで警察は犯人を割り出すのに役に立っているのかもしれませんが、冤罪を起こす可能性もあります。現に、山口県長門市のパチンコ店で女性が財布を盗んだとして警察に逮捕されました。それはたまたま店内の防犯カメラに彼女がその財布が置かれていた隣の席で遊んでいた姿が映っていたからでした。そのため、新聞にも大きく載り、警察にも8日間拘留されました。それが「誤認逮捕」とわかったのは店内のゴミ箱から財布が見つかり、それも防犯カメラに映し出された映像からまったく別の人物だったことがわかりました。「自分が取ったと言えば楽になると思った。」と報道もされました。もし彼女が警察の厳しい取り調べに屈服していたら、またまた冤罪を引き起こす可能性もあったのです。

「テロを未然に防止する」という名目で「盗聴法」「共謀罪法」が強行採決されましたが、「共謀罪法」が施行されているフランスでもテロは未然に防げていません。こうした個人の内心に踏み込むものが国税通則法改正に伴い来年3月から施行されます。改正通則法の126条には「扇動罪」なる規定が盛り込まれました。126条は「納税義務者が国税の課税標準の申告をしないこと、虚偽の申告をすること又は国税の徴収若しくは納付しないことを扇動した者は、3年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。2項は、納税者がすべき申告をさせないため、暴行又は脅迫を加えた者も、前項と同様とする。」と規定しました。

「扇動」とは、「そそのかすこと。おだてたりあおりたてたりして、ある行動を起こすようにしむけること。アジテーション。教唆。」(日本国語大辞典より)と言う意味です。そうなってくると、税理士業務にも多く影響する可能性もありますし、ましてやこの中身を知らない人は処罰される危険性を孕んでいます。

また、この法律が「共謀罪法」の277ある対象犯罪の中の、地方税法、関税法、所得税法、法人税法、消費税法(なぜか相続税法が入っていません。富裕層に対する忖度なのでしょうか?)とリンクしているのではないかと思えて仕方ありません。

いずれにしても、これらの「内心の自由」に深く入り込んだ法整備は、戦前の最悪の法律と言われた「治安維持法」を彷彿させます。こんなことが、政府の手で着々とやられていくことに恐怖感を覚えます。ドイツの神学者ルター派の牧師、反ナチ運動家でもあるマルティン・ニーメラー牧師の言葉に「ナチスが最初共産主義者を攻撃したとき、私は声をあげなかった。私は共産主義者ではなかったから。社会民主主義者が牢獄に入れられたとき、私は声をあげなかった。私は社会民主主義ではなかったから。彼らが労働組合員たちを攻撃したとき、私は声をあげなかった。私は労働組合員ではなかったから。そして、彼らが私を攻撃したとき、私のために声をあげる者は、誰一人残っていなかった。」と名言がありますが、この国の進む方向がこれで良いのかもっと論議を重ねないといけないと思います。