菅新内閣の予算編成について考える

新型コロナウイルスの影響で日本経済はかつていない脆弱さを露呈しました。その要因となったのが新自由主義的思考です。新自由主義的思考とは、政府などによる規制の最小化と自由競争を重んじる考え方で大企業と富裕層の利潤を最大化し、社会保障など公的サービスを切り捨て、自己責任を押しつけるものです。

この考え方の弊害の具体例がコロナ禍で必要とされた保健所の数です。1990年には850ヶ所だったものが、2020年までの30年間で469ヶ所と約半数近くに激減しました。この減少が、PCR検査が十分に行われなかった要因のひとつです。

この思考は中曽根元首相から始まり、歴代1位の在位を成し遂げた安倍前首相に脈々と受け継がれ、菅新首相もその後継者として「自助・共助・公助」を掲げ、露骨に新自由主義剥き出しの路線を継承しています。

そんな菅内閣が発足して初めての予算編成です。その内容と特徴は菅政権の今後を占うような内容になっています。

各省庁が提出した21年度の概算要求・要望の合計額は約105.4兆円で、100兆円を超えるのは7年連続です。新型コロナウイルスへの政府対応が優先され、提出締め切りは例年より1ヶ月遅い9月末となりました。

要求額を算出する基準も簡単にして、前年度の当初予算がベースになっています。コロナ対応など「緊急な経費」は別枠で、上限なく要望が出せます。その結果、コロナ対策費は、現時点で金額を示さない「事項要求」が多いことが特徴です。

事項要求とは、各省庁が概算要求を行う際に個別政策の予算要求額を明示せず、項目だけ記載することを言い、政策が細部まで決定されておらず予算額が不明な場合などに用いられます。その結果、年末に閣議決定される予算案は歳出総額が過去最大を更新する見通しです。

内容をみると無駄な公共投資は相変わらず続いており、人口減少と都市と地方の格差はますます開き、大手ゼネコンばかりが超え太るような内容になっています。

国民に対する監視の強化や個人情報の漏洩が危惧されているマイナンバーカードの普及促進のために1,451億円を要求しています。それにより、健康保険証、運転免許証、国税、年金などの情報を無理やり紐付けしようと画策しています。

コロナ対策では、行政検査としておこなうPCR検査の半額を自治体が負担していることへの解決策を提示していません。

中小企業対策費は、事業者の経営の下支えや支援ではなく、事業承継等の新陳代謝に力点が置かれています。日本の企業の99.7%、雇用の7割を占める中小企業が光となるような予算規模になっていません。逆に中小企業の生産性を高めるためにその再編を積極的に打ち出している菅政権の姿を投影した予算です。

防衛費は総額5兆4,898億円で前年度予算の3.3%増です。辺野古新基地建設経費やイージス・アショアの代替経費は事項要求になり、具体的な予算を計上しないでも9年連続で前年を上回り7年連続で過去最大を更新しています。新たにステルス機F35を6機購入し666億円を計上しています。これにより、後年度負担額は5兆4,585億円にものぼり予算が固定化しています。