配当による大盤振る舞い、片や日本だけ賃金低下?~それっておかしくない!~

時事通信社の集計によると、東証一部に上場する2018年3月期決算企業の配当総額が、初めて10兆円を超えることがわかりました。18年3月期は前期比9%増の10兆3,500億円になり、5期連続で過去最高を更新しました。株主への利益還元をアピールするアメリカ企業と似たように日本企業もなりつつあります。10兆円と言えば法人税の税収とほぼ同じです。

増配を予定しているのは、全体の4割を超す591社です。鋼材市場の回復で業績が良くなっている企業や、資源価格の上昇で増益を予定している大手商社も増配です。12月決算法人や2月決算法人などを含めると17年度の東証一部上場企業全体の配当総額は12兆2,100億円にも達する見込みだそうです。

一方で「働き方改革」で労働分配率を下げたい財界の要望で、賃金上昇は低空飛行どころかますます下がるのではないかと危惧をしています。経済協力開発機構(OECD)の経済の見通しを見ても2018年の日本の経済成長率は1.2%と、世界全体の3.7%の3分の1以下です。米国や欧州と比べても異常に低くなっています。逆説的に言えば、特定の大企業は大もうけ、庶民の財布は冷えきっていると言えます。

その経済成長率の異常な低さは賃金の伸び率に垣間見えます。2012年と2016年を比較すると、先進国では、ドイツ6.15%、アメリカ4.34%、カナダ3.96%、フランス3.94%、韓国3.57%、イタリア2.48%、イギリス1.19%、そして我が国日本△1.05%です。

また、最低賃金を比較したOECDの資料でも、円換算で1位はオーストラリア1,456円、2位ルクセンブルグの1,355円、3位フランス1,198円、4位ニュージーランド1,176円、5位イギリス1,154円、以下9位ドイツ1,053円のここまでが1,000円以上、10位カナダ952円、11位アメリカ806円、そして我が国日本750円です。オセアニアや欧州が上位を占める反面、アメリカよりの国家であるところの低賃金が目立ちます。因みにブラジル134円、メキシコ67円、ロシア56円と極端に低賃金です。

日本企業がメキシコに海外進出する背景が賃金にあることが推測されます。また、自殺率が非常に高いロシアの異常なまでの低賃金が原因しているのかなと思いたくなります。

日本経済は、2019年10月から消費税を8%から10%に増税することを決めています。一部食料品や新聞などは8%の軽減税率にするそうですが、消費税はもともと「逆進性」がある税法と言われています。10%の税率にして賃金が上がらないとすると、日本経済は失速する可能性が高いと思います。また、8%の軽減税率にすることは結果的に「富裕層」に対する「忖度」かもしれません。

私は、消費税増税よりは、「分離課税」されている上場株式の配当や譲渡益を総合課税にまず先行してすべきだろうと思います。