5月19日岸信夫防衛相は、日本経済新聞のインタビューで「従来と抜本的に異なる速度で防衛力を強化しないといけない」「GDPとの対比で考えることはない。わが国を守るために必要な経費をしっかり手当てする」と強調しました。加藤勝信官房長官も翌日の記者会見で、防衛費について「GDP比1%枠内に抑えるという考えは取っていない」と述べ、過去最大を更新し続けている支出増を推進する立場です。
防衛費をめぐっては、1976年に三木内閣が「国民総生産(GNP)比1%を超えない」ことを閣議決定しました。90年代以降は、リーマンショックでGDPが大幅に落ち込み1%を超えた2010年を除き1%未満で推移しています。これについては米国政府が「少なすぎる」と繰り返し不満を表明しています。
自民党政務調査会は、「(防衛力強化の)手を緩めることは許されない」と強調し、NATO(北大西洋条約機構)諸国がGDPの2%以上の軍事費支出を目標としていることに触れ「防衛関係費を抜本的に増額」するように求めています。政府は6月18日に閣議決定した「経済財政運営と改革の方針2021」(いわゆる骨太の方針)に「必要な防衛力を大幅に強化し他自弁統合防衛力を構築する」と明記しました。
防衛費といえば、不要不急な支出のオンパレードです。昨年6月に配備を断念した陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」に代えて、政府が整備を決めた代替艦「イージス・システム搭載艦」2隻の総コストが、少なくとも9,000億円かかることが判明しました。
「24時間365日、日本全体をカバーできる」との触れ込みだった「イージス・アショア」に比べ、導入効果が3分の1になるにもかかわらず、コストは少なくとも2倍になります。この金額は最終的には1兆円を優に超えるとの見方もあります。これは東京五輪、パラリンピックの当初想定経費7,340億円を遙かに上回ります。
また、政府が公表した辺野古移設の総費用は、予定海域での軟弱地盤が見つかったために、従来の2.7倍の9,300億円に膨らんでいます。10年前に運用された米軍岩国基地の新滑走路は、埋め立て面積は辺野古の1.3倍ですが、総工事費は2,560億円で3割弱です。警備費だけで2,000億円かかるこの滑走路建設に、識者からの異論も続出しています。
日本の防衛・外交のあり方は抜本的に見直すべきです。軍事史に詳しい纐纈(こうけつ)厚・山口大学元副学長・明治大学客員研究員は、「『米中対立』のなか、どちらにつくということではなく、覇権主義全体を批判する視点が必要です。」と指摘し、「あらゆる軍事同盟の呪縛、縛りを解き放ち、米国とも中国ともロシアとも対等・平等につきあう、全方位的な外交が必要だ」と訴えられています。
ローマ教皇は「武器は、もっと重要な優先事項に使うべき」とりわけ「新型コロナウィルスと地球温暖化対策」への切り替えを訴えています。「私たちはみんな、同じ船に乗っている」のだから、すべての人が医療やワクチン接種を受けられるようにと。防衛費のあり方を抜本的に見直して「不要不急な支出を減らして、コロナ対策に」を国民の世論にしましょう。