2020年予算を考える

2020年の予算を深掘りすると

(1)2020年度予算は過去最高のものとなった

①歳入の102.6兆円の内訳は税収入63.5兆円(61.9%)うち所得税19.5兆円(19.0%)、法人税12.0兆円(11.7%)、消費税21.7兆円(21.1%)、その他10.2兆円(9.9%)税外収入6.6兆円(6.4%)国債発行32.6兆円(31.7%)となっています。

②一方、歳出102.6兆円の内訳は、社会保障費35.9兆円(34.9%)、公共事業費6.9兆円(6.7%)文教科学振興費5.5兆円(5.4%)、防衛費5.3兆円(5.2%)その他10.0兆円(9.7%)地方交付税交付金15.8兆円(15.4%)、国債費23.4兆円(22.7%)となっています。政府が言う「プライマリーバランス」とはほど遠い予算です。

(2) プライマリーバランスとは

プライマリーバランス(Primary Balance)とは、国や地方自治体などの基礎的な財政収支のことをいいます。一般会計において、歳入総額から国債等の発行(借金)による収入を差し引いた金額と、歳出総額から国債費等を差し引いた金額のバランスを見たものです。プライマリーバランスがプラスということは、国債の発行に頼らずにその年の国民の税負担などで国民生活に必要な支出がまかなえている状態を意味します。

逆に、プライマリーバランスがマイナスということは、国債等を発行しないと支出をまかなえないことを意味します。

近年の日本は、プライマリーバランスがマイナス(赤字)の状態が続いています。国債残高の増加傾向に歯止めがかからない状況からも、早期のプライマリーバランスのプラス(黒字)化を目指していますが、政府が掲げている2025年度の黒字化の実現も困難だということが2019年1月の経済財政諮問会議に提出されました。(SMBC日興證券ホームページより)

(3)1990年度決算(消費税導入時)と2020年度予算との主な税収の比較

1990年決算 2020年度予算 増減
所得税 26.0兆円 19.5兆円 ▲6.5兆円
法人税 18.4兆円 12.0兆円 ▲6.3兆円
消費税 5.8兆円 21.7兆円 +15.9兆円

             

このデータから言えることは、①消費税が主要3税の中で一番大きくなったこと、②この30年の中で消費税が+15.9兆円になり、それが所得税と法人税の減税に使われたこと、③このままの流れで行けば、特に法人税の減税の財源として消費税が使われる可能性が大であることです。

(4)消費税を0%にするという声

新型コロナウイルスの感染拡大を受けた経済対策ついて、自民党の安藤裕衆院議員ら有志議員が3月11日、西村康稔経済再生担当相に、当分の間、消費税率を0%とすることなどを求める提言書を手渡した。

提言では、消費税は当分の間、軽減税率を0%にした上で、全品目に適用するよう求めた。6月頃には減税が実施できるよう調整を速やかに行うべきとした。

また減税分も含めて総額30兆円規模の補正予算を編成することも盛り込んだ。財源には国債を充て、政府が掲げる基礎的財政収支(PB)黒字化目標は、「当面の間延期」とした。提言には有志41人が賛同している。

安藤氏は政府の緊急対策について、「今の日本経済の影響を見ていると、とても規模が小さいし遅い」と指摘。1-3月期の国内総生産(GDP)も大幅なマイナスになることが予想されるとして、「今までにないような規模、発想の大胆な経済政策を打つべきだ」と述べた。

提言を受けた西村再生相は、新型肺炎の感染拡大は「経済に相当厳しい影響を与えてきているという認識」と述べ、「前例にとらわれず思い切ったことをやらないといけないということを頭に置きながら取り組んでいきたい」との考えを示した。(ブルームバーグより引用)

もちろん、野党の方からも当面5%に戻すことが現実路線として出されています。

個人的には、日本経済が大恐慌になる前に思い切って0%にして、新たな財源として消費税導入前の物品税への先祖返りをすべきだと考えております。その理由は、広く、薄く取る消費税より、消費者の購入の代替可能性、選択可能性が可能だからです。例えば1,000万円をする高級外車なら25%、軽自動車だったら5%という税率にすれば、「逆進性」の解消にもつながります。

(5)財源はどうするの(いずれも公平な税制を求める会の試算)

①所得税の税率を消費税増税前に引き直すと

申告所得税(最高税率75%)の増収13.4兆円+源泉分離課税(35%)の増収5.5兆円

②相続税を消費税増税前(最高税率70%)に引き直すと1.1兆円の増収

③法人税を現在の所得税並みの累進課税(5%、15%、25%、35%、45%)にすれば21.0兆円の増収

④①~③の合計41兆円の税収増が見込まれ消費税を0にしても19.3兆円の財源が生まれ2020年度当初予算の国債費23.4兆円をほとんどまかなえることができる。