カテゴリー: 経営環境

大学授業料と奨学金などドイツと比べてみて思うこと

私の知り合いのご子息が国立の医学部に見事に合格されました。そこで、この際日本の大学の授業料と奨学金や入試制度のことを改めて調べて見ました。

まず初年度納入金ですが、国立大学は医学部を含む全学部が、入学金28万2,000円、年間授業料が53万5,800円の合計81万7,800円とかなりの高額です。私の母校(私立文系)は、入学金20万円、授業料その他の費用が78万円、合計98万円とそんなに大きな差はありません。

もう12年前になりますが、私の二女は国立大学の前期試験で不合格、同じ大学の後期試験に何とか受かったので親の負担は少なくて助かりました。滑り止めで合格した大学(私立文系)は、入学金30万円、授業料その他の費用が95万2,300円、合計125万2,300円と少々高い大学でした。とりあえず払った入学金は結果的に「どぶに捨てた」ことになります。

私の甥は、ある私立の理工系が第一志望でした。いろいろな入試形態があって5回同じ大学の同じ学部に果敢に挑戦しましたが見事不合格(桜散る)でした。その大学は、入学金26万円、授業料その他の費用が140万1,000円、合計166万1,000円でした。やはり私立の理系は高額になります。たまたま、ダメ元で受けた国立大学に合格したので、結果的に親の負担は少なくて済みました。

日本の大学は、高校を卒業するか、高等学校卒業認定試験(高等学校を卒業した者と「同等以上の学力」があるかを認定する試験のこと)に合格すれば受験できます。しかし、まずは国公立大学を受験する生徒はセンター試験を受験し、その結果と2次試験(前期、中期、後期)の結果を勘案して合否が決まります。最近では、センター試験を私立大学でも使うところが増えてきました。

特定の資格(医師、歯科医師、薬剤師、臨床検査技師、看護師など)をとるために受験する生徒と将来就職するか研究職などをめざすか別として理工系、文系を受験する生徒に分かれますが、特徴的なことは、「偏差値」という非常にもどかしい数値に惑わされます。特に予備校などが、一つでもランクが上の大学をめざします。

特定の資格の取得のために必要なものでも、それ以外でもとにかく偏差値が高い大学をめざします。したがって、晴れて目標の大学に合格した時点で「燃え尽き症候群」に苛まれる学生が多いそうです。

OECD諸国の大学進学率を見ると1位は、意外にもオーストラリアの96%、アメリカが9位で74%、10位が韓国の71%、イギリスが63%で、OECDの平均値の62%に近いようです。わが国は51%で22位、意外に低いのはドイツで42%です。

ドイツに就職している二女の情報によると、ドイツの基礎学校(小学校)は4年制で、10歳で、将来総合大学の入学資格である「アビトゥーア」を得るためにカリキュラムは9年制の進学コースを選ぶか、マイスターの資格を得られる授業学校コースの選択を迫られるそうです。しかも、学校は午前中だけで終わり昼過ぎには子供達は帰宅することになるそうです。

進学コースを選んだ子は、勉強するのは、国語と算数が中心で、体育や音楽、宗教などはあるが日本で言う理科や社会はないそうです。また、第二外国語もあって英語を重視して学ぶそうです。

日本で言うとセンター試験のようなものですが、アビトゥーア(高校卒業認定試験)はセンター試験のように何度も受けることが出来ず、この成績によって入れる大学等が決まってしまうので生徒は自ずと勉学に勤しむそうです。その反面、アビトゥーアの成績は一生有効なので、高校を卒業して働きながら、希望の大学や学部、習ってみたい教授がある大学に登録をして入れるまで待機(ボランティアをすればその期間が短くなるとも言っていました)するということもできるようです。

つまりドイツの大学では、入試もありませんし偏差値というものも重要されていないそうです。また、国籍を問わず授業料は無料で、英語で学べるプログラムを用意していることもあり、留学者も増えているそうです。ただし、ドイツは連邦共和局なので州によって多少違うところもあるようです。娘が働いているノルトライン=ヴェストファーレン州(州都は、日本人街もあるデュッセルドルフ)の大学生は、同じ州であれば特急以外の乗り物は学生証があれば無料です。東西に分断されていた時の首都であったボンもこの州にあります。資本論を書いたカール・マルクスや実存主義の代表的な思想家として名高いニーチェもこの大学の卒業生です。実際に、ドイツに行ったときに立ち寄ったのですが、博物館さながらの建築物で見学も自由にできました。学生も、学生食堂で真剣にディスカッションをしていました。

私が娘の友人に日本には奨学金倒産が増えていると言ったところ、即座に娘の友人は「それは奨学金ではなくローンですよ。」と話していました。ドイツは、返済不要のものを奨学金と呼ぶそうです。また、生活費を浮かすため例えば3LDKのアパートを3人でシェアするのが当たり前だそうです。アルバイトにも制限があって週20時間以上はできないそうです。

さて、多くの国民は日本とドイツは国民性が似通っていると言いますが、それは「真面目」なところは共通していると思いますが、教育制度や労働生産性はものすごく違うことをひしひしと感じました。

配当による大盤振る舞い、片や日本だけ賃金低下?~それっておかしくない!~

時事通信社の集計によると、東証一部に上場する2018年3月期決算企業の配当総額が、初めて10兆円を超えることがわかりました。18年3月期は前期比9%増の10兆3,500億円になり、5期連続で過去最高を更新しました。株主への利益還元をアピールするアメリカ企業と似たように日本企業もなりつつあります。10兆円と言えば法人税の税収とほぼ同じです。

増配を予定しているのは、全体の4割を超す591社です。鋼材市場の回復で業績が良くなっている企業や、資源価格の上昇で増益を予定している大手商社も増配です。12月決算法人や2月決算法人などを含めると17年度の東証一部上場企業全体の配当総額は12兆2,100億円にも達する見込みだそうです。

一方で「働き方改革」で労働分配率を下げたい財界の要望で、賃金上昇は低空飛行どころかますます下がるのではないかと危惧をしています。経済協力開発機構(OECD)の経済の見通しを見ても2018年の日本の経済成長率は1.2%と、世界全体の3.7%の3分の1以下です。米国や欧州と比べても異常に低くなっています。逆説的に言えば、特定の大企業は大もうけ、庶民の財布は冷えきっていると言えます。

その経済成長率の異常な低さは賃金の伸び率に垣間見えます。2012年と2016年を比較すると、先進国では、ドイツ6.15%、アメリカ4.34%、カナダ3.96%、フランス3.94%、韓国3.57%、イタリア2.48%、イギリス1.19%、そして我が国日本△1.05%です。

また、最低賃金を比較したOECDの資料でも、円換算で1位はオーストラリア1,456円、2位ルクセンブルグの1,355円、3位フランス1,198円、4位ニュージーランド1,176円、5位イギリス1,154円、以下9位ドイツ1,053円のここまでが1,000円以上、10位カナダ952円、11位アメリカ806円、そして我が国日本750円です。オセアニアや欧州が上位を占める反面、アメリカよりの国家であるところの低賃金が目立ちます。因みにブラジル134円、メキシコ67円、ロシア56円と極端に低賃金です。

日本企業がメキシコに海外進出する背景が賃金にあることが推測されます。また、自殺率が非常に高いロシアの異常なまでの低賃金が原因しているのかなと思いたくなります。

日本経済は、2019年10月から消費税を8%から10%に増税することを決めています。一部食料品や新聞などは8%の軽減税率にするそうですが、消費税はもともと「逆進性」がある税法と言われています。10%の税率にして賃金が上がらないとすると、日本経済は失速する可能性が高いと思います。また、8%の軽減税率にすることは結果的に「富裕層」に対する「忖度」かもしれません。

私は、消費税増税よりは、「分離課税」されている上場株式の配当や譲渡益を総合課税にまず先行してすべきだろうと思います。

大学入試の相次ぐ出題ミスと税理士試験制度のあり方を考える

大学受験シーズンもほとんど終わりました。志望校に晴れて合格した人は本当におめでとうございました。高い志と本人の血のにじむような努力、そして予備校などの受験テクニックにも助けられたのかもしれません。わが国で一番入学するのに難しい大学は東京大学です。その親の平均年収も一番高いとよく言われます。教育にも「格差」が存在するのでしょう。しかし、国際的に見れば東京大学のランクは46位と意外に低いのに驚きました。「THE世界大学ランキング」によれば、1位はオックスフォード大学(イギリス)、2位はケンブリッジ大学(イギリス)、3位はスタンフォード大学(アメリカ)などベストテンまでは、スイスの一校を除きすべてイギリスとアメリカです。まだまだ、高等教育だけでなく日本の教育あり方全般を含め、見直しが求められていると思います。

ところで、日本の大学では名門と言われる大阪大学や京都大学で、昨年2月に実施した一般入試で両大学とも「物理」で、出題と採点にミスがありました。大阪大学では不合格とした30人を、京都大学では17人を追加合格としました。驚いたことは、1点差でこれだけの人が泣きを見ていたことでした。その日の体調や過去やったことのある問題や得意分野が出題された、反対にまったく手つかずのところが出題されたことなどにより、多くの人の運命が変わるのですから実に恐ろしいものです。

『朝日新聞の2月20日号によると、『正解や回答例の開示について、文科省は各大学に「標準的な回答例や出題の意図を明らかにするよう務める」と通知をしている。国立大学協会も「受験生の便宜のために望ましい」と指針を示す。これについて、大学側の姿勢にばらつきがある。朝日新聞が全国の29大学に対応を尋ねたところ、13大学が公表または一部公表、16大学が非公表と回答した。』との記事が載っていました。公表(一部も含む)は、国公立では、北海道、金沢、名古屋、大阪、大阪市立、九州など、私立では、関西、関西学院、近畿です。非公開は、国公立では、東北、東京、京都、広島、山口など、私立では、青山学院、慶応、上智、同志社、立命館、早稲田などです。

公表していない大学の言い分は、正解が一つとは限らない記述式などについては「回答例を示すとかえって混乱を生む」との意見が出ています。例えば早稲田大も「回答を導く課程を評価する設問もあり、一律の公表は適切ではない」と説明しています。ただ、今後の方針については、東京大は「国の動向を踏まえつつ考えたい」との意向のようです。

文科省によると、大学の入試ミスの報告件数は、2017年度の入試で153大学計291件あり、林文科大臣は記者会見で、回答例公示がミス防止につながるとのとの考えを示し、「問題や解答、出題の意図などの開示について検討したい」と述べています。』大学の自治と努力した受験者の公平をどのように担保するのかのバランスの問題だと思いますが、個人的には受験予備校とも連携をして回答例と出題の趣旨を公表することが、出題をする大学側の緊張感と説明責任、受験生の知る権利につながると思います。

※【駒寄テケテケ日記】(2/18)数え歌 解答例公表、入試ミス防げる? 「学習の一助に」「示すと混乱生む」 大学の対応にばらつき2018年2月20日 でぶりんブログ記事より引用

私たちの業界には、税務署出身や大学院で論文を書き一部を免除される仕組みもありますが、一般的な税理士試験の場合には国税庁によると60点が合格基準点としています。しかし、実際は予め最終合格者(受験者の2%位と思われます。)を何人か決められていると言われています。それに応じて、下記のそれぞれの科目の合格率を決めている節があります。おまけに、何が正解で、採点箇所がどこに何点あるか全く公開されていません。上述した大学の入試の採点ミスの悲劇より、もっと悲劇です。すべてがブラックボックスに入っているからです。受験予備校では「明らかに出題ミス」という試験科目もありました。

税理士試験は、5科目を累積的に合格(1科目合格するとそれが永遠に有効になります)すれば合格になります。したがって、働きながらでも受験ができると言うことでかなりの受験者がおりました。私が受験していたころは約6万人の受験者がおりましたが、最近は4万人を割っています。税理士会も、大学への寄付講座をしたり、高校生向けにパンフレットを作成しているようですが、減少傾向には歯止めがかかりません。受験者が減ると言うことは、この業界の衰退につながるので深刻な問題です。

税理士の試験科目は、選択可能性によって、必修科目(簿記論、財務諸表論)、選択必修科目(法人税法、所得税法)、選択科目(相続税法、消費税法又は酒税法、国税徴収法、事業税又は住民税、固定資産税)に分類されています。 必修科目は、2科目の両方が課されます。 選択必修科目は、法人税または所得税のいずれか1科目の選択が必須とされます。

私の場合は、簿記論、財務諸表論、所得税、相続税法、相続税法の5科目で合格しました。20歳代の頃は、簿記論しか合格していなくて、30歳から真面目に受験して35歳で合格しました。12回目の受験での栄冠でした。おそらく、1万時間以上の勉強時間を費やしました。

私がもっとも不思議だったのは、税法は理論問題が50点、計算問題が50点と言う配点がオーソドックスです。ある税法科目で計算問題の最終値が模範解答(国税庁が公表しないので受験予備校が出しています。)と同じ、つまり50点、理論問題もそれなりに書いたのにまさかの不合格でした。ところが、翌年は、計算問題の入り口で思い違いをしていたので、それ以後はまるで模範解答と違います。しかし、その年は、いつもなら理論問題が2題の出題なのに3題出され、配点も理論問題60点、計算問題40点と変則的でした。その科目は、最後の科目だったので、来年も受験するのかなと思っていたら、まさかの合格通知がきました。当時は、個人情報にうるさくなかったので、新聞にも掲載されました。今でも、なぜ合格したのか不思議な思いを思っています。

最後に言いたいことは、税理士の試験のあり方、60%合格水準のまやかし、試験の模範解答と採点基準を明確にして欲しいと願っています。今は、私が受験していたときの「今回の受験で合格に達した科目はありません。」というにべもない通知から、一歩前進して、A判定(60点未満50点以上)、B判定(40点以上50点未満)、C判定(30点以上40点未満)、D判定(30点未満)ということになっていますが、そうではなく各人の本当の点数を是非、公開してもらいたいものです。

『司法試験では、平成16年度から、それまで不合格者に対してのみ行っていた論文式試験の成績通知が合格者に対しても行われるようになりました。また、論文式試験合格者に対しては、科目別順位ランク及び総合得点が通知されるようになりました。

また、東京地裁平成16年9月29日判決は、平成9年度から平成11年度までの司法試験の成績に関する個人情報開示請求訴訟において、①論文式試験の科目別得点及び総合順位、並びに②口述試験の科目別得点は不開示情報であるものの、③口述試験の総合順位は開示すべきであると判断しました。控訴審である東京高裁平成17年7月14日判決は、論文式試験の総合順位も追加で開示すべきであると判断しました。

その結果、平成18年度からは、論文式試験の総合順位も通知されるようになりました。』

税理士試験も同じような対応をしてもらいたいものです。

※Markの資格Hack(税理士試験) 司法試験の成績開示の現状は、度重なる要望の末に実現しました 2017年5月9日 まあくブログ記事より引用

申告をしても納税ができない人が増えています

最近多くの自治体で納税者の実態をつかまないまま差し押さえをするケースが増えています。『多くの自治体では、公的な保護・援護等として支給されたもの給付は差押禁止財産だが、これらが預貯金の口座に入った時点で、“受給者の預金債権に転化し、受給者の一般財産になるから、この預金債権は原則として差押等禁止債権としての属性を承継しないとした平成10年2月10日の最高裁判決をもとに、差押えが可能との立場をとっていました。』(土佐のまつりごと 鳥取県の児童手当差し押えは違法 判決が確定 2013年12月16日ブログ記事より引用)

『税金の滞納を理由に鳥取県が、禁止されている児童手当の差し押さえをしたのは違法だとして、鳥取市内に住む自営業の男性(40)が県を相手取り、処分の取り消しと損害賠償を求めた訴訟の判決が29日、鳥取地裁(和久田斉裁判長)でありました。判決は差し押さえを違法と認め、「子を持つ父親として多大な精神的苦痛を被った」として慰謝料20万円と弁護士費用の支払いを命じました。

訴えていた男性は病弱な妻と子ども5人の7人家族(当時)で、本業の収入が激減したため、個人事業税や自動車税約24万円を滞納していました。2008年、2カ月半にわたり残高73円しかなかった銀行口座に児童手当13万円が振り込まれた9分後に、県は全額の13万73円を差し押さえました。児童手当は滞納していた子どもの教材費や給食費にあてる予定で、その後、子ども1人が高校中退を余儀なくされました。

児童手当が銀行口座に振り込まれた場合、「一般財産と混在」するとして最高裁は差し押さえを認める判例(1998年)をだしています。判決では、最高裁の判例を踏まえ、差し押さえは原則として許されるとしながらも、県が児童手当によって租税を徴収することを意図し、児童手当以外に預金口座への入金がない状況を知っているか、知りえる状態にありながら処分を断行した場合は、児童手当法の精神からの裁量逸脱であり、違法と認定し、県の処分を取り消しました。国家賠償法の違法があったとしました。』(しんぶん赤旗 児童手当差し押さえは違法 鳥取地裁「税金滞納理由」に断罪 2013年3月30日より引用)

『納期が過ぎても、国民健康保険料(税※)や住民税などの納付がない場合、自治体による資産差し押さえが許されている。ただし、そこには「生活を圧迫してはいけない」など、国税徴収法に基づいた制限が加えられている。滞納に詳しい角谷啓一税理士はこう話す。

「滞納している側にも問題がある場合が多い。しかし、そうした納税者を処分、処分で突き放すのではなく、地方自治体本来の機能を発揮して、生活改善を含め納税者に寄り添った徴収行政をやってほしい。ところが最近の徴収行政は、滞納者の個々の実情を見ず、売掛金や給与や預貯金など、事業の継続や生活の維持に打撃となる財産を差し押さえたり、「差押禁止財産」の児童手当まで差し押さえるといった違法とさえいえる事態が広がっているのです」』(サンデー毎日 怒・やり過ぎだろ!急増 年金・保険を差し押さえる役所の非道 2017年2月12日号より引用)

前川喜平氏の授業に対して介入した文科省に異議あり~大田堯先生の教育論と対比して感じたこと~

朝日新聞デジタル版2018年03月15日号によると

『名古屋市立の中学校で2月、文部科学省前事務次官の前川喜平氏が授業の一環で講演したことをめぐり、文科省が市教委に対し、前川氏を呼んだ狙いや講演の内容を問い合わせ、録音データの提供を求めていたことが15日、わかった。文科省が個別の学校の授業内容について調べるのは異例。

前川氏は文科省の組織的な天下りの問題に関与したとして、昨年1月に辞任し、その後は学校法人「加計学園」の獣医学部新設などをめぐって「行政がゆがめられた」と発言している。文科省教育課程課によると、総合的な学習の時間の授業で講演したことを報道で知り、前川氏が辞任したことや「出会い系バー」の利用が報道されたことを伝えたうえで、経緯や講演内容を尋ね、録音の提供を求めるメールを市教委に送った。市教委から講演内容は伝えられたが、録音の提供はなかったという。

教育課程課は電話で市教委に、前川氏を学校教育の授業に呼ぶことは「慎重な検討が必要だったのではないか」とも伝えたという。市教委に問い合わせることは文科省の初等中等教育局で判断しており、林芳正文科相ら政務三役は関わっていないとしている。

前川氏の講演を聞いた40代の女性によると、中学生やその保護者らが参加していた。幼少時代の話や科学技術で変わる社会について論じ、夜間中学校でのボランティアのエピソードなどを交え、「文科省時代にできなかったことに取り組んでいる」と話したという。女性は「政治的な話題や加計学園の話も一切出なかった。とても和やかな雰囲気だった」と話した。

文科省は学習指導要領など、全国共通の教育基準を作っているが、個別の学校の授業内容について調査をするのは異例だ。文科省の淵上孝・教育課程課長は「前川氏が天下り問題で国家公務員法違反と認定されたことなどについて、(学校や市教委が)どこまで十分にわかっていたかを確認しようとした。法的に、調査に問題があるとは思っていない」と話している。

〈流通経済大社会学部の小松郁夫教授(教育行政学)の話〉 夜間中学に携わる人が自らの経験を話すことは、文科省が定めた学習指導要領の「総合的な学習の時間」の狙いに照らして問題どころか、ふさわしい。指導要領で決められた教科の履修漏れなどの場合に文科省が是正指導をすることはありうるが、今回は一回の授業が対象であり、根拠がわからない。文科省が各時間の授業の調査をするようになれば、学校現場は萎縮するだろう。』

日本の教育界の第一人者と言っても過言ではない、今年の3月22日(本日)で御年100歳になられた大田堯(オオタタカシ)先生(広島県出身で東大名誉教授)は、こうした文科省の異常な教育介入にどう思っておられるでしょうか。

先生は、「教育基本法」の改訂に一貫して反対しておられました。先生が反対してこられた理由は、この法律(平成18年12月22日公布・施行)に、「公共の精神」や「愛国心」など戦前の「教育勅語」に先祖返りしたような条文が入っていたからです。

安倍首相夫人が名誉校長だった森友学園の幼稚園で園児が「教育勅語」を唱和し、昭恵夫人が涙したという逸話があるものです。

改訂教育基本法の(教育振興基本計画)第17 条政府は、教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び講ずべき施策その他必要な事項について、基本的な計画を定め、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。

地方公共団体は、前項の計画を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体における教育の振興のための施策に関する基本的な計画を定めるよう努めなければならない。

この条文を見る限り文科省が既報のような介入ができるはずはありません。今般の文科省の行為も誰かに対する「忖度」なのでしょうか?

一方、私の敬愛する大田堯先生は、エリック・カールの「はらぺこあおむし」という絵本を素材にして『……あらゆる生き物は、自ら変わる力、すなわち自己創出力をもっています。機械はすべて、どれほどすぐれていても人の力ぬきには作動しません。自分では、故障もなおせず、改良もできないのです。……人生山あり、谷あり、偶然の出会いありの過程をたどる自己形成は、至上の芸術作品創造というべき営みです。……

……教育は、この一人ひとりのかけがえのない自己創出力を介添えする、外部からの助成の営みであります。まず、その人のユニークな自己総出力を助け、必要とする情報を提供し、その人その人の持ち味を引き出すのです。……

教育に関する国民の考え方には「上から、心がけを説諭する」「教えて人間を変える」という教育観が依然として強くあり、「教育勅語」によって印象づけられた教育観が、政治家にも一般の人びとの間にも、抜きがたくあるのです。……

……本来、教育というものは、一人ひとりの「持ち味を引き出す」ということを助ける目的があるのです。教育はエデュケーションの訳語で、語源は「引き出す」というラテン語からきていると言われ、絶対王制を廃して市民革命が行われた以後に、欧米で一般に普及した言葉です。……』と書かれています。

「社員教育」もまさしく先生の言われる通りで、社員一人ひとりの個性や持ち味を「引き出し」、その潜在能力を最大限に発揮するために社員自らの「やる気」に「火をつける」、そして社長の役割はその火をつけるための「チャッカマン」であることだと考えます。

平成29年確定申告を終えて思うこと~医療費控除とふるさと納税について~

3月15日、所得税の確定申告の期限です。毎年毎年、早く終われるような工夫をしています。「これは」という特効薬はありませんが、PCの普及、進化などICT社会の到来により相対的に確定申告の作業時間は短縮していると思います。若い頃に、1週間分の下着をもって事務所へ泊まり込みをしたことを思い出すと隔世の感があります。

さて、この確定申告で医療費控除のシステムが大きく変わりました。今までは、医療費の領収書を手計算やエクセル等で集計していましたが手間がかかる割に還付額は少なく、なかなか割に合わない内容でした。最大のショックは、若いスタッフに集計作業をお願いし苦労してやっと終わったところ、いざ税額計算作業をしてみると事業の業績が悪く納める税額がゼロだったため、医療費控除をしても還付額はなく、その作業がまったくムダになったことです。このショックは幾度も経験しました。

平成29年分の確定申告からはこの面倒な作業を劇的に簡略化できるようになるはずでした。

従来はすべての領収書やレシートを申告の際に添付して提出する必要がありましたが、今年からは不要になりました。その代わりとして医療を受けた人と、病院や薬局ごとに医療費をまとめた明細書を添付することとなりました。これだけだとあまりメリットは大きくありませんが、この明細書の代わりとして健康保険組合や国民健康保険から送られてくる「医療費のお知らせ」を添付書類として利用できることになりました。「医療費のお知らせ」は加入者と扶養家族が医療機関にかかった日付や医療機関名、医療費の額がリスト化された書類です。

送付される時期は健康保険により異なりますが、協会けんぽであれば2月中旬に勤務先にまとめて送られてきます。今回送付される明細に記載されるのは前年10月から本年10月までの受診分なので、本年11~12月分の受診分は自分で追加する必要があり結構面倒くさくこのやり方でやった納税者は少数派だったのではないでしょうか。

因みに、「医療費の抑制」を意図していると思われる「セルフメディケーション税制」は、ドラッグストア側の宣伝が悪いのか納税者には余り浸透されていないようで、結局この制度を活用した人は1人もいませんでした。

一方、ふるさと納税をする納税者は増えてきています。かなりの納税者の申告書にこの寄付金控除の記載をしました。

ふるさと納税とは『ふるさとや応援したい自治体へ寄付をした個人や法人の納税額を軽減する制度で、公益にかなう寄付をした納税者の税額を減らす寄付税制の一種です。平成16年に長野県泰阜(やすおか)村が導入した寄付条例が前身で、改正地方税法が施行した平成20年から個人向け制度が始まりました。

自分の育ったふるさとを応援するという趣旨から「ふるさと納税」という名称でよばれていますが、全国どの自治体へも寄付できます。個人は寄付額から2,000円を差し引いた額について、年収などに応じて限度額まで個人住民税や所得税から控除されます。

寄付先から返礼品として高級和牛、温泉宿泊券などの特産品や特典をもらえることもあるため人気をよび、導入当初の納税額は年100億~150億円でしたが平成26年に388億円、平成27年は1653億円と急増しました。

被災地支援を目的とした寄付が納税額を押し上げた面もあります。ふるさと納税は使い道を指定できる唯一の税で、都市と地方の税収格差を是正する効果があると政府は説明しています。また、欧米に比べて遅れぎみの寄付文化を醸成する役割があるとの指摘もあると言われています。

一方、自治体の特典競争が過熱し、納税額の多くが高価な特産品購入に消えて自治体財政に寄与しない例も出ています。都市部自治体の住民税は平成28年に998億円減り、ふるさと納税は「受益者負担の原則」に反するとの批判が出ています。所得の多い人ほど控除額が多くなるため、「富裕層の節税対策」に使われているとの指摘もあります。総務省は平成27年、28年の2年にわたって換金性の高い返礼品や高額返礼品を使わないよう全国の自治体へ要請をしています。』(日本大百科全書(ニッポニカ)の解説引用し、一部改編しました)

この寄付金控除を受けるためには、確定申告書に「寄付金の受領書等の記載事項」という添付資料をつけないといけません。添付資料の(注)に、「上記、寄付先の所在地に代えて、電話番号(市外局番から)を入力していただいても構いません。」との記載があります。しかし、寄付した自治体から送付される「寄付金受領証明書」には、その自治体名と市町村長名の記載はあってもなぜか電話番号の記載がないのです。仕方ないのでその自治体のホームページで電話番号を調べることになってしまいました。しかし、もともとホームページに電話番号を載せていない自治体も散見されました。

総務省と財務省とその外局である国税庁とのコミニューケーションが上手くいっていたとしたら、こんな手間も省けたと思います。

知り合いがまさかの逮捕!~国選弁護人と私選弁護人の違いを深く知りました~

誰でもいつ何時逮捕されることがないとは限りません。逮捕とは、捜査機関(警察)などが被疑者の逃亡や証拠隠滅を防ぐために一時的に身柄を強制的に拘束することを言います。

私の知り合いがまさかの逮捕をされ、国選弁護人(日本国憲法は第37条3項で、「刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。」と定めています。したがって被告人国選弁護は、憲法上必置の制度であり、被告人からすればその依頼権『国選弁護人選任請求権』は憲法上の権利となる。ウィキペディアより)を選任しました。

その時にそのご家族に次のようなアドバイスをしました。まず、弊事務所の顧問弁護士に相談しました。不足のものはネットで検索してみました。そこで、知り得た情報でお役に立ちそうなものをまとめてみました。

※厳選刑事事件弁護士ナビ 国が弁護士費用を負担する国選弁護人にはデメリットも多い~いざという時の備えに~刑事事件コラムより以下引用

はじめに

国選弁護人にはあまり頼りにならない弁護士が付くこともありますが、厳密に言えば私選弁護士でも国選弁護士でも良い弁護士・悪い弁護士はいます。

悪い国選弁護人の特徴と言うより、悪い弁護士の特徴にはなりますが、国選弁護人を付けてはみたものの、あまり頼りにできないように感じれば、私選弁護士に切り替えてみてもいいかもしれません。

刑事事件に精通していない

国選弁護人は依頼者がどの弁護士を選任するのか選べないことから刑事事件に精通していない弁護士に当たってしまう可能性があります。では刑事事件に精通していない弁護士はどのように見分ければ良いのか気になることでしょう。

見分けるために「先生は年間で何件くらい刑事事件をやっていますか?」と質問してみてください。弁護士としての経験年数にもよりますが【年間で5件程度】やっているようであれば精通していると言って差し支えないと思います。その返答に窮たり、回答をはぐらかしているような場合は刑事事件に慣れていないことが考えられます。

スピード感がない

刑事事件での重要なことはスピード感です。国選弁護人は早くても勾留後からの選任になり、私選弁護士より一歩遅れます。その上、なかなか面会の日程調整が決まらない。電話をしても繋がらないような場合は、スピード感のある私選弁護士を探したほうが上手くいくケースもあります。

極端に若い・経験がない

また、国選弁護人の中には私選弁護士として依頼者からお金をもらう程の経験がない弁護士もいます。確かに若い分熱意はあるかもしれませんが、極端に若かそうにみえたり、経験がないように感じられるのであれば、経験豊富な弁護士に相談してみても良いかもしれません。

横柄な態度を取る

逆に、弁護士の中には昔ながらの頭の固い弁護士がいることもあります。弁護士選びでは依頼者や被疑者と弁護士の相性が重要です。少しでも「相性が悪いな」と感じたのであれば、他の弁護士に相談してみても良いでしょう。

国選弁護人から私選弁護士への変更は可能

以上のような感じの国選弁護人が付いて、不安や不満がありませんか?率直に言いますと、国選弁護人から私選弁護士への変更は可能です。国選弁護人は、国が選んだ弁護人ですので、簡単に変更はできません。

しかし、被疑者家族や被疑者が個人として私選弁護士を探して費用を払って選んだとなると、それまでの国選弁護人は解任されることになります。結果的に新しく選んだ私選弁護士に変更されたことになります。

国選弁護人から別の国選弁護人への変更は不可能

一方で、どんなに現在の国選弁護人に納得できなくても、他の国選弁護人への変更は原則的にできないとされています。したがって、現在の国選弁護人に対して不満があって変更したいようでしたら、費用を払って私選弁護士に依頼するしかなくなります。

初めて代用監獄で知り合いと面会

 以上のような基礎知識を入手して、生まれて初めての経験ですが、世に言う「代用監獄(警察留置場)」で、知り合いと面会しました。

『代用監獄とは、本来は逮捕、拘留された容疑者は、全国に114カ所ある拘留所に収容されるのが法律上の原則。だが実態は、本来「代用」のはずの警察留置場に収容されることがほとんどだ。日弁連は、捜査機関である警察が容疑者の身柄も管理すると「自白の強要などにつながる」と批判。廃止を求めている。一方、法務省や警察省は「取り調べを迅速に行うために必要」と主張。警察は80年以降、捜査と留置管理の担当者を別組織に分け、「冤罪の温床という批判は当たらない」と主張している。』(朝日新聞掲載「キーワード」の解説参照。)

知り合いは、私の顔を見ると安心したのか涙目になっていました。私の話を聞き、本人の意思で国選弁護人に委ねられることになりました。

私も、何時、どこで「逮捕」されかわかりません。今回の件で、新しい知識の箱が一つできました。しかし、そんな「まさか」がないように、様々な法令を可能な限り遵守していこうと思った次第です。

出国税に疑問符あり!~課税と使い方の発想の転換~

「観光立国は地方創生の起爆剤だ。観光先進国にふさわしい快適な良好観光の整備を行う」と安倍首相は先月(2018年2月)22日の施政方針演説で強調しました。

その費用を賄うために税制改正に急遽「国際観光旅客税」、いわゆる「出国税」です。

2019年1月7日以後、日本を出国する人から1回につき1人1,000円を航空運賃などに上乗せ、外国人がインバウンドで日本に訪れるだけでなく、ビジネスかアウトバウンド(海外旅行)かわからない日本人も対象にするらしいのです。これにより財務省の試算では430億円の税収増になるそうです。

税制のあり方の原則は「累進課税」です。この税を導入するならば、例えば、エコノミークラスは運賃の1%、ビジネスクラスは5%、ファーストクラスは10%という具合に経済的にゆとりがある人からは応分な負担をしてもらうべきではないでしょうか。

例えば成田空港発の直行便でニューヨークに行くならばエコノミークラスで片道約13万円、ビジネスクラスなら約55万円、ファーストクラスなら約200万円の料金(HPで検索した料金なので、季節や早割などでかなり変動はあるとは思いますが。)です。すると出国税は、エコノミークラスで1,300円、ビジネスクラスで27,500円、ファーストクラスなら20万円の税負担になります。この方法で税収がいくらになるかはまったくわかりませんが、今まで、ファーストクラスやビジネスクラスを利用していた人が、税負担が大きくなるからといってエコノミークラスに変更することはレアケースだと思います。

また、この税があくまで観光立国にするための目的ならばビジネスで国外に出国する人は、予め入国管理事務所等に申請をしてこの税がかからないようにすべきではないでしょうか。

私は国内線でも国際線でも飛行機を利用した場合に、エコノミークラスしか乗ったことがありませが、国内線でも同様の趣旨で課税をしても良いのではないでしょうか。また、新幹線や在来線特急を利用する人においても同様な課税をすることを検討したらどうでしょうか。仮に新山口から東京ディズーニーランドに遊びに行くとしたら、片道約20,000円で税金は200円です。この200円があるから、東京ディズーニーランドをやめる人はまずいないと考えられます。また、この程度の税金でビジネスの申請はしないと考えられます。

問題なのはその使途です。過去の事例などに見られるように、増税して無駄遣いをすることです。観光振興を名目に従来型の公共事業(はこもの)に振り向けてはなりません。それは公共投資の性格として、動き出したらもうやめられないことと、大手ゼネコンの儲けの温床になるからです。さらに危惧するのは、官僚の天下り先になるおそれもあることです。つまり、費用対効果のないものに税金をつぎ込むことです。例えば今、旬な会社でもある「電通」に効果の少ないパンフレットの作成の仕事などをさせることです。こんな使い方をすると無駄遣いの温床になる蓋然性が高いのではないかと思います。

日本社会の負の遺産として、いったん制度を導入すると既得権益が生まれ、必要性が薄れてもなかなか廃止できずにいる例が多いことは歴史が証明しています。特定財源はその象徴でもありました。出国税を創設するならば、「費用対効果」を不断に「第三者委員会」などを立ち上げて検証し、国会議員が責任を持って毎年見直すことを義務づけるべきだと考えます。そして、いつも、誰も責任をとらないこの国の悪しき「慣習」を断ち切るべきでしょう。

金メダル2個と日本新記録おめでとうございます!~2人の選手の税金はどうなるのか考えてみました~

平昌オリンピックの日本人選手の大活躍、本当におめでとうございました。特に小柄な体を逆に武器にして金メダルを2つ獲得した高木姉妹のお姉さんの菜邦選手に対して、血のにじむような練習を重ねてきたことに心より敬意を表したいです。

ところで彼女は、今回のオリンピックで6,000万円の報奨金を手にすることになりました。内訳は、日本オリンピック委員会(JOC)から金メダル受賞報奨金500万円×2=1,000万円とJOC加盟団体の日本スケート連盟から同額の1,000万円、彼女が所属する日本電産サンキョウから2,000万円、その親会社の日本電産会長の永守重信会長個人からポケットマネー2,000万円です。

まず、JOCからの報奨金は平成6年の所得税の改正で非課税(所得税法9条1項14号)となりました。この背景には平成4年にバルセロナオリンピックで、当時まだ中学生の岩崎恭子さんが金メダルをとって報奨金をもらったことにより課税をされる税制に対し、多くの国民の「かわいそうだ」との声で非課税となった経緯がありました。したがって、この報奨金1,000万円は非課税です。

次に、JOC加盟団体である日本スケート連盟からの報奨金1,000万円は、平成22年の所得税の改正で非課税となっています。

問題は、彼女の所属会社からの報奨金の2,000万円ですが、これは所得税の非課税には該当しません。従業員として法人からもらって報奨金は給与所得に該当します。彼女が所属会社からもらう給与に合算され課税されます。おそらく、所属企業からの年俸はそんなに多くはないと思いますが、2,000万円が合算されると相当多くの所得税の負担となります。また、一年遅れで住民税の課税が待っています。いずれにしても、大きな課税となります。もし、親会社である日本電産からの報奨金となれば、法人からの贈与となり一時課税の対象になり、後述する設楽選手のような算式の課税がされ、給与所得より低い課税となります。

永守会長のポケットマネーからの報奨金は個人から個人への資産の移転となるため贈与税が課税されます。日本の税制では受け取った彼女の方が課税されます。アメリカではあげた方が贈与税を支払うことになっています。贈与税は、相続税の補完税という意味合いを持っているとも言われかなりカーブの高い累進課税になっています。贈与税は、{受け取った金額-基礎控除(110万円)}×税率=贈与税額となります。この算式に当てはめると、2,000万円-110万円=1,890万円×税率(課税所得が1,000万円超の場合は課税価格×50%-225万円)となり、算出税額は720万円となります。

したがって、所得税、住民税(所得控除が所得税より低いですが課税所得の10%が課税されます)、贈与税とかなりの税金の負担となります。

次に、東京マラソンで日本新記録を打ち立てた設楽悠太選手は、日本実業団陸上連盟から1億円という多額の報奨金をもらいました。この制度は、2020年東京オリンピックへの強化策として2015年に創設されました。馬の鼻先に人参をぶら下げるような制度とも言えますが、これが功を奏したのでしょうか。また、これとは別に彼は、東京マラソン2位の賞金と日本記録更新のボーナスとして900万円を手にしています。

これらの報奨金などは日本実業団陸上連盟という法人からの贈与です。法人からの贈与は、個人からの贈与が贈与税になるのと異なり所得税の一時所得の課税になります。税法はなかなか難しいですね。さて、この贈与にはオリンピックの報奨金のような非課税規定がないので、課税上は前述したように所得税の一時所得となります。

一時所得の算式は、総収入金額-その収入を得るために支出した金額-特別控除(最高50万円)です。なお、一時所得は1/2が総合課税に合算され課税されます。おそらく、その収入を得るために支出した金額はあまり多くはなくまた、算定するのはかなり難しいのではないかと思われます。広義に解釈すれば、今までの陸上人生で支出した金額の合計額となりますが、狭義に解釈すれば、この東京マラソンだけに支出した金額だろうと思います。私見では、後者ではないかと思います。

後者だとすれば、その金額はかなり限定されると思います。仮に、ゼロだとすると、(1億900万円-0円-50万円)×1/2=5,425万円が総合課税の対象となり、彼が所属するホンダからの給与と合算されます。

いずれにしても、大きな課税が待っていますので、納税額を残して使わないと納税する段になってお金がないという事態も想定されます。高木菜邦選手も設楽悠太選手も若いので、お金に対する価値観が随分と違うと思います。くれぐれも無駄遣いをしないで、さらなる高見をめざして奮闘してもらいたいものです。

STEAM(スティーム)から学ぶ~アメリカが近年力を入れている教育方針は~

STEAMとは

Science…科学

Technology…技術

Engineering…工学

Arts…芸術

Mathematics…数学

のそれぞれの単語の頭文字をとったものです。

科学、数学、芸術領域に力を入れる教育方針、教育方法のことです。

元々はアメリカの国家戦略として理数系人材の教育に力を入れる動きが盛んになり注目されました。オバマ大統領が、演説で優先課題として取り上げたことで広まったと言われています。

その背景には、スマホやタブレットなどが飛躍的に普及してきたことによる「論理的思考力の低下」と反対にIT化やAI社会に対応できる理数系の人材の不足から提唱されたのだと思います。

会計事務所業界でも同じで、AI社会の到来で10年後には定形的な作業、例えば記帳、税務申告、また、非常に時間と労力を必要としていた条文と判例の検索と判断などの業務は、無くなるか圧倒的に少なくなるのだろうと思われます。

そこで、必要なのは顧問先様や相談者などの琴線に触れるようなスペシャリスト、つまり「困りごと」の解決や10年後の将来を予測できる力を身につける必要に迫られます。ただ、自分がそうだと思うだけではダメで、相手に納得してもらい、それを実行してもらい、軌道修正のアドバイスができる人材が必要になるのです。

けだし、それは「良い教育はチャンスをつかむ必須条件」だと言われています。