カテゴリー: 経営環境

あなたも注意してくださいね!!~忍び寄る特殊詐欺~

特殊詐欺のニュースが頻繁に新聞などのメディアに流れます。最近、山口県内で60歳代の男性が仮想通貨(暗号資産)への投資名目で3000万円超をだまし取られたという記事が新聞に載っていました。

特殊詐欺は、犯人が電話やハガキ、封書、SNSなどで親族や公共機関の職員を名乗り、被害者を信じ込ませて現金やキャッシュカードをだまし取る犯罪です。特殊詐欺の主な類型は下記の通りです。

  • オレオレ詐欺: 親族を名乗り、現金をだまし取る手口。
  • 預貯金詐欺: 警察官や銀行職員を名乗り、キャッシュカードをだまし取る手口。
  • 架空料金請求詐欺: 未払い料金を言い立てて金銭をだまし取る手口。
  • 還付金詐欺: 医療費や税金の還付金を言い立てて被害者の口座から送金させる手口。
  • 融資保証金詐欺: 融資保証金を言い立てて金銭をだまし取る手口。
  • 金融商品詐欺: 未公開株などの嘘の情報で購入させ、金銭をだまし取る手口。
  • ギャンブル詐欺: 登録料や情報料として支払わせて金銭をだまし取る手口。
  • 交際あっせん詐欺: 女性紹介などで会員登録料金として金銭をだまし取る手口。

特殊詐欺は高度な分業化によって再び深刻化しており、被害額は年間数百億円規模に上っています。警察は対策に取り組んでいますが、犯人の巧妙さは衰えることを知りません。

ある方からの相談で「税金の還付金の連絡があり、手続きをしていたところ税務職員を名乗る男性から、保証金として○○円を口座に払えば還付をする、というので振り込んだがまだ還付がされない」との内容でした。私が「それは還付金詐欺ではないでしょうか。警察に連絡した方が良いですよと。」アドバイスをしましたが、その後、何の連絡もありませんでした。間違いなく還付金詐欺ですね。犯人は、あなたの身近にも存在します。

相談者だけではありません。私のEメールにも、それを臭わすような怪しい内容のものが頻繁に送信されてきて思わず引っかかりそうになることがあります。

例えば。Amazonプライムからは、「会員資格が○○に切れるので下のアカウントにログインしてください。」

セゾンカード(そのカードは待っていません)からは、○○円が口座から引き落としになります。ご利用明細はNetアンサーまで。」

三井住友銀行(その銀行の口座を持っていません)からは、「ご本人確認のお知らせというタイトルで、今年の○月○日から、当社の社名を名乗って不正な手口でログイン情報を入力させる手口で不正送金をさせる事件が多発しています。ご本人確認はこちらから」

携帯のショートメッセージには、「お客様が不在な為お荷物を持ち帰りました。こちらでご確認ください。WWW: //○○」

何とも物騒な世の中です。社会の歪みや格差の拡大の中で行き場を失った若者が、「楽をして大金を得られる」そんな短絡的な犯罪ではないでしょうか。社会の構造を変えないと!

県民は貧困に喘ぐ、一方県議は贅沢三昧?!~庶民感覚を知るのが県議の使命では?~

昨年11月11日から17日にかけて、シンガポール、ベトナム、フィリピンの3カ国を自民党6人、公明党と民政会それぞれ1人の合計8人の県議が海外視察をしました。報道によると、県議会への情報公開で明らかになったのは、旅費が約140万円、このうち航空運賃が約120万円にも及んでいるとのことです。

ところで、昨年から日本では急激な物価高が続いています。この要因はロシアによるウクライナ侵攻や円安の影響によることが大きいと言われています。一方、私たちの賃金の上昇は物価高に追いついておらず、物価高で生活が苦しいと多くの庶民は感じています。また年金の支給額はこの物価高にもかかわらず、その支給額は減少しているという異常事態です。そのため、多くの国民が生活防衛のために涙ぐましい苦労をしています。

さて、その航空運賃ですが、ネットで検索してみると、東京・羽田国際空港からシンガポール・チャンギ国際空港までの往復の航空運賃は、エコノミークラス約10万円、プレミアムエコノミークラス約30万円、ビジネスクラス約50万円、ファーストクラス約120万円でした。

おそらく件の県議会議員たちはファーストクラスを利用したものと考えられます。ファーストクラスでは、扉や仕切りの付いた個室となっているものが大半で、座席もフルフラットにして寝転がることができます。また食事はレストランや料亭のようなお皿に盛り付けて提供されます。ドリンクも厳選されたワインや日本酒などが用意されています。

ファーストクラスに乗って悦に興じているかもしれませんが、庶民はこの円安のときに海外旅行をエンジョイできる人は限定されるでしょうし、できてもエコノミークラスがせいぜいという人が多数なのではないでしょうか。

海外視察旅行を全否定するわけではありません。しかし、ファーストクラスを利用した大名旅行のようなことをしていては、庶民の暮らしぶりに関する感度が鈍ってしまうのではないでしょうか。個人のお金で海外視察旅行を行くならいざ知らず、その支出は全額、私たちの血税なのです。

山口県は貴賓車として、トヨタの最高級セダン「センチュリー」を2,090万円で購入したのは違法な公金支出として住民が県を相手取った訴訟を起こしています。原告で元県職員の松林俊治さんは「最小経費で最大効果を上げるという地方自治の原則を軽視した」と批判するコメントを出しています。まさに、この視察旅行もこのコメント通りです。

香川県議会8人がブラジル、パラグアイ、アメリカへの視察旅行の一人当たり費用が約263万円かかると報じられ「高すぎる」批判をあび、同県議会事務局が188万円に減額すると発表しましたが、県民の理解を得られていないようです。

本来、県議会議員には、住民目線で行政機関の政策や運営をチェックする機能が求められています。その「住民目線」という感覚を忘れないように、海外視察旅行をする必要がどうしてもある場合には航空券はエコノミークラスにするようにすべきではないでしょうか。

消費税は「付加価値税」と名称を変えるべき!!~益税とインボイス制度を再度考えます~

日本の「消費税」は、1989年4月1日、当時の竹下登(DAIGOの祖父です)政権のもと3%の税率で施行されました。その当時、「消費税」のような「大型間接税」は広く「付加価値税・VAT 」という名称でした。ちなみにVATとは “Value Added Tax” の略です。

導入に強く反対していた中小零細事業者を懐柔してこの税をどうしても導入したかった政府は、その名称を「消費税」としました。誰がそのネーミングにしたのかは謎ですが、中小零細業者までが納税義務者となるヨーロッパ型付加価値税とは趣を変えて反対の矛先を変えたいと思ってのことだったと推測できます 。

その「消費税」というネーミングが国民に誤解を与え、消費者自身が税金を負担している錯覚をしています。また、財務省も「益税の解消」というプロパガンダを与えている土壌になっています。

そもそも「付加加値税」を最初に導入したのはフランスです。1954年のことです。当時は、第2次世界大戦が終わり、戦勝国だったアメリカが世界最大の貿易大国でした。そのアメリカに対抗するため、自国経済を盛り立てるためには輸出企業に頑張ってもらうしかないという発想で輸出補助金を出していました。しかし、ガット(現在はWTO)という関税と貿易の協定ができたとき、自国企業だけに補助金を与えるのは自由な貿易に反するとの理由でガットに抵触してしまったのです。

それでも何とかして自国の輸出企業に輸出補助金を与えられないかと、フランス政府が考えたのが「間接税」としての付加価値税です。初めから輸出企業を援助するという目的が強い税金でした。日本でも「輸出免税」として、その効果を果たしています。

現在、140カ国余りで付加価値税を採用(主要国ではアメリカだけが採用していません)していますが、「消費税」というネーミングをしているのは日本だけです。

今年の10月からインボイス制度が始まりますが、その影響を受ける多くの中小零細事業者の認知度は必ずしも高くなく、一般消費者は、ほとんどこの制度の理解ができていません。それどころか、財務省の巧妙な「益税論」の影響を受けています。

インボイス導入の理由に「益税の解消」が挙げられてから、免税事業者にはまるで「消費者から預かった税金を懐に入れている」という非常に厳しい目が向けられています。「益税」でも「預かり金」でもないのに、言われなき差別を受けています。新たな社会的分断です。

消費税という法律を読み解けは、「消費者」とか「価格の転嫁を義務づける」という規定はありません。小売業者が受け取った金額は単なる価格であり、「消費者」は「消費税」を負担はしていません。これは、裁判でも確立されています。つまり消費者からの「預かり金」ではないので「益税」などは存在しません。レシートなどを見れば勘違いしやすい(外税表記なので)のですが、実際の納税義務者は消費者ではなく、事業者です。

消費者が消費税を負担しているような誤解を与える「消費税」という名称を今こそ「付加価値税」に今こそ変えて消費者に大いなる誤解を解消する必要性を痛感します。

誰も喜ばないインボイス制度導入は無期限の停止、そして廃止へ!~声をあげる税理士が立ち上がっています!!~

今年の10月から実施されようとされているインボイス制度ですが、その仕組みが明らかなになるにつれ様々な反対の声が上がっています。

そもそもインボイス制度とは端的に言えば、課税事業者が売上にかかる消費税から、仕入れにかかる消費税を差し引く際に、インボイスと呼ばれる請求書で納税する仕組みです。この制度は消費税(多くの国では付加価値税と呼んでいます)を実施している国では納税額計算の前提となっています。

では、わが国では今までなぜこの制度がなかったのでしょうか。それは、消費税が導入された1989年(平成元年)当時、多くの中小企業者が反対の声を上げ、その声を懐柔するためにこの制度に変えて、日本独自の制度である「帳簿方式」を採用しました。帳簿方式とは、事業者が自ら記帳した帳簿にもとづいて仕入税額控除を計算して納付する消費税を決定する方式です。わが国では、記帳の精度が高いのでほとんど課税に支障はありませんでした。

この制度が導入されれば、複雑な事務作業が中小零細業者に強いられます。特に、課税売上高が1000万円以下の免税事業者は、取引先からの要請でやむなく課税事業者を選択すれば、消費税を負担しなければなりません。また、免税事業者のままだと取引中止や消費税分の値下げをされるおそれがあります。つまり、この制度は消費税率を変更せずに増税ができるという代物です。将来の消費税率のアップを見越しての政府の狙いが見え隠れします。

インボイス制度の中止を求める税理士の会が結成され、国会議員に要望書を提出しました。その要望書の中でこの制度が複雑で理解できないのを以下の6点にまとめています

(1)前提となる消費税の納税計算の仕組み、仕入税額控除がわかりにくいこと。

(2)消費税の免税制度の意義や簡易課税制度の意義・仕組みがわかりにくいこと。

(3)免税事業者からの仕入も3年間80%仕入税額控除が可能、その後3年間50%仕入税額控除が可能という経過措置がわかりにくいこと。

(4)令和5年税制改正で導入された、「売上げの80%を仕入税額控除できる特例(3年間の時限立法)」や、「売上高1億円以下の事業者が1万円未満の支払をした場合、インボイスなしで仕入税額控除ができる特例 (6年間の時限立法)」がわかりにくいこと。

(5)インボイスは店を構えている人だけでなく、サラリーマンや主婦のわずかな副業でも発行義務が生じる場合があり、いわゆる「事業者」の範囲がわかりにくいこと。

(6)インボイスの発行が免除される例外取引、例えば「農協特例」、「中古品の売買」、「コイン販売」等々があり、自分の業種・業界がインボイス発行の対象になるか否かわかりにくいこと。

さらに、具体的な問題点をとして、①自分が適格請求書発行事業者に該当するか否か判断できない者がたくさんいる。②申告・納税事務で税理士事務所も税務署も大混戦に陥る③消費税の滞納が増大し、廃業する事業者が増大する、と指摘しています。

だれも喜ばないこの制度(喜ぶのは一部の財務省の官僚だけでしょう。)は無期限に停止をして、そして国民の合意の上で廃止すべきです。今ならまだ間に合います。

若き経済思想家、斉藤幸平氏の著書を読んで~日本社会は、もはや変えることができないのか?~

わが国の防衛費が2023年度からの5年間で総額43兆円、27年度にはGDP(国内総生産)比で2%に膨れ上がることが決りました。その金額は、米国、中国に次ぐ世界第3位です。平和憲法はどこに行ったのでしょうか。さらに、原発再稼働や新増設の容認も決まりました。12年前の福島での、あの大惨事は過去のことで忘却の彼方となったのでしょうか。

本当に残念なことですが、これが日本の政治です。しかも共通しているのは、閣議決定で拙速に決めて、まともに国会論戦をしなかった点です。こうした大転換に民意をまともに聞こうとせずに強行した姿勢はもはや民主主義国家の体をなしていません。異常な政治がまかり通るなか、国民生活は上がる物価や高い教育費の負担を余儀なくされています。

日本社会は、もはや変えることはできないのでしょうか。こうした問題に果敢な提言をされているマルクス研究の第一人者でもある斉藤幸平先生の著書を参考に、日本のあるべき社会を紐解いてみましょう。

ベストセラーになった人新世の「資本論」では、社会を変える構想を5点にまとめておられています。要約して紹介します。

その第一は、使用価値経済の転換です。具体的にはGDPの増大を目指すのではなく、人々の基本的ニーズを満たすことを重視する必要があるということです。

第二は、労働時間の短縮です。それは、ストレスを減らし、子育てや介護をする家庭にとっても、役割分担を容易にするということです。

第三は、画一的な分業の廃止です。つまり、経済成長のための効率化が最優先ではなく、利益よりも、やりがいや助け合いが重視されること経済社会に移行するということです。

第四は、生産過程の民主化です。生産手段を民主的に管理することです。つまり、生産をする際にどのような技術を開発し、どうした使い方をするのかについて、開かれた形での民主的な話し合いによって決めることです。

最後に、エッセンシャル・ワークの重視です。役に立つ、やりがいのある労働をしているという理由で低賃金・長時間労働を強いられているのがケア労働に代表されるエッセンシャル・ワークたちです。彼らがきちんとされる社会が必要です。

締めくくりで筆者は次のように括られています。『「人新世」とは、資本主義が生み出した人工物、つまり負荷や矛盾が地球を覆った時代と説明した。ただ、資本主義が地球を壊しているという意味では、今の時代を「人新世」でなく、「資本新世」と呼ぶのが正しいかもしれない。けれども、人々が力を合わせて連帯し、資本の専制から、この地球を唯一の故郷を守ることができたら、そのときには、肯定的にその新しい時代を「人新世」と呼べるようになるだろう。』

私たちにできることは、この政治や社会の有り様をただ評論家的に批判するだけでなく、何らかの行動を起こすことです。経済社会が大きく変われば必然的に政治の有りようも変わります。私たちの少しの変化が大きなうねりとなって、時代を変えることを信じて。

納税者相談停止命令は憲法に抵触するのでは?~納税者の権利を取り締まるのではなく、納税者権利憲章を策定すべき~

岸田内閣が国会に提出した所得税法等改定案に納税者の権利を著しく制限する疑いがある内容が盛り込まれています。

この法案には「税務相談停止命令制度」を創設する税理士法の改定案が創設されています。その内容は要約すると次の通りです。

①財務大臣は税理士でないものが税務相談を行った場合にはその停止を命令することができる。

②命令の違反者には1年以下の懲役又は100万円以下の罰金を科し、違反者名を3年間インターネットで公表され官報でも公告される。

③国税庁長官は税務相談者を質問検査できる。その質問検査に対する拒否又は虚偽の答弁者等には30万円以下の罰金を科す。

④この改正は令和6年4月1日より実施する。

つまり、政府が創設しようとしている法案は、税理士でないものが反復して税務相談を行って脱税や不正還付を指南して納税義務の実現に重大な影響を及ぼし、防止のための緊急措置が必要と財務大臣が判断した場合にはその税務相談の停止などの必要な措置を命令できるというものです。そしてその税務相談を行った者に対して、命令すべきか否かの調査権限を国税庁長官(税務署)に与えるという内容です。

財務省はこの制度の創設の背景について「コンサルタントを名乗り、SNSやインターネットでセミナーを開き、不特定多数に脱税などの方法を指南して手数料を取るなどに事例が散見される。納税義務の適正な実現に重大な影響を及ぼす相談活動を防止するための措置が必要」と説明しています。さらに、「納税相談が税理士業務に当たるかどうかは、個別に判断する」という不明確な回答しかしていません。

この法案について、浦野広明税理士は「法案はほとんど抽象的に書かれており、どうでも解釈できる。意図的な乱用で納税者団体の運動を阻止する治安立法といわざるを得ない」と批判。また、鶴見佑策弁護士は「申告納税制度のもとで税金の相談を誰がするかは自由なのに、罰則で禁じることは問題だ」と指摘しています。

税務相談の前提になっている税法の解釈自体が、思想・信条・価値観を内在したもので、課税庁や税理士の税法が全面的に正しいものだとは言い切れません。つまり、解釈権や共助行為に国家権力が介入して、罰則で停止されるという立て付けは憲法13条(個人の尊厳)19条(思想信条の自由)21条(集会・結社の自由)に繋がる大きな問題をはらんでいます。

納税者の権利憲章をつくる会の平石共子税理士は「世界の多くの国では納税者同士の相談は自由。税理士法で抑制する日本の異常さが際立つ。『命令制度は要らない』の声を上げ日本でも納税者権利憲章を」と提起されています。

憲法の理念に基づく、納税者権利憲章を制定していない国はOECDの中ではわが国だけです。今こそ、納税者の権利を保障する政治の実現が必要です。

異次元の公約違反に異議あり!~この国は新しい戦前へと向かうのか~

岸田首相は年頭の会見で「『異次元』の少子化対策に挑戦する」と訴えましたが、1月23日の施政方針演説では「年齢・性別を問わず、皆が参加する、従来とは次元の異なる少子化対策を実現したい」と表現しました。

少子化対策の実現には「兆円単位」の財源確保が必要なため、「異次元」の表現が消費増税を思い起こさせるとして、「『異次元』は使うな」という声が官邸内で上がったようです。

さて、この降って湧いたような「少子化対策」は非常に違和感を覚えます。個人的には大軍拡とそれに伴う大増税を煙に巻く戦術なのかなと考えます。

「検討使」と揶揄されてきた首相が断固たる姿勢で「大軍拡と大増税」を前のめりになっている姿を見て、「首相は変わった」という人もいますが、果たしてそうでしょうか。金融所得課税の導入検討の際には、あれこれ迷ったあげく、富裕層に対して「聞く耳」を持って自らの「公約」を決めきれませんでした。

一方、強いもの「聞く耳」を持ったとたん一直線にすき進んでいるのではないでしょうか。首相にとって強いもの、つまりアメリカに媚びてしまう病に冒されているのでしょうか。名付けて「愛犬ぽち化症候群」です。

防衛予算案は時系列的には次の通りです。従来は、GDPの1%程度で推移をしていましたが、23年度から5年間で段階的に引き上げ、27年度に2%に倍加させるように首相が指示したのは11月28日、27年度以降の毎年度、約4兆円の追加財源が必要として、うち1兆円強を増税で賄う方針を示したのが12月8日、そして2023年度の財政改正大綱に法人税、所得税、たばこ税の3税目で増税措置を実施することを盛り込んだのが12月16日、同日に敵基地保有能力の保有や防衛費2倍化など、日本を「戦争をする国」をなりかねない、戦後の安全保障政策の大転換することに舵を切ることになる安保3文書も閣議決定しました。そして、年明けの1月13日にバイデン大統領と会談し、「歴史的だ」と天まで持ち上げられる程の賞賛を受けました。

首相は「1年以上、丁寧なプロセスを得た」と豪語していますが、その大半は密室での論議でその内容を国民は知る由はありませんでした。その間に参院選がありましたが、このことを全く公約に掲げませんでした。

この歴史的転換をすれば、わが国はアメリカ、中国に次ぐ世界第3番目の国防費を持つ国へと大変容します。このような国民にとって重大な事柄を参院選で争点化しなかったことは「異次元の公約違反」と言えるのではないでしょうか。

さらに、国会でまともな審議を経ずに閣議決定したことは国会軽視だし、国民よりも先にアメリカに大軍拡を約束したことは、「対米従属」のそしりを免れません。順番がまるで逆です。まさに「愛犬ぽち化症候群」だと言えます。

昨年末に放送された「徹子の部屋」にゲスト出演したタモリさんが、2023年について問われ「新しい戦前になるんじゃないですかね」と発言、この国が戦後の平和主義から一転して、戦前の軍国主義に似た状況になりつつあることを危惧したものと受け止められたようですが、「戦争か平和か」が問われる追われる緊迫した国会になりそうです。

宇沢弘文に学ぶ~経済学の本をよく読むようになりました!~

今年の夏、お世話になっている医療団体の50周年記念講演会で、故宇沢弘文先生の長女で医師の占部まり先生のお話を聞く機会がありました。正直、その講演を聞くまで宇沢先生の名前を知りませんでしたが、触発されて最近は立て続けに、経済学の本を読んでいます。

占部先生の推薦書籍の中で、入門に最適だと書かれていた「人間の経済」を購入し、一気に読みました。

この本のはじめに占部先生(宇沢国際学館の代表取締役でもあります)から、宇沢先生の歩んだ道のりの記載があります。私と同じように宇沢先生のことを良く知らない人もいると思うので、その要約を紹介します。

「人々が豊かに暮らせる社会のために経済学という学問は何ができるかを考え続けた人生でした。数理経済学を基礎に理論を構築し、水俣病などの様々な社会問題を通じ、分野が違う人々にも理解を得られるようにひたすら進んできました。こうした人生を歩んだのは、山陰地方の米子出身だったことが影響しました。

1945年4月、終戦直後に旧制一高に入学します。東京大学理学部数学科に進学、特別研究生として数学を学んでいましたが、河上肇の『貧乏物語』に触発され、戦後の混乱期に数学のような貴族的な学問に従事している場合ではないと考えて経済学に転向します。

スタンフォード大学研究助手で頭角を現し数々の業績を上げ、36歳の若さでシカゴ大学の教授になりましが、ベトナム戦争の影響でシカゴをさり日本に帰ることを決意しました。

経済成長のためには一般市民は犠牲になっても良いという考えかたに異を唱えた『自動車の社会的費用』がベストセラーに。その後も『社会的共通資本』などを数多くの本を上梓しました。大好きだった魔法の水とともに広がっていく父の世界観があります。」

先生の定義した社会的共通資本は、広い意味での「環境」を経済学の対象としていることが特徴です。そして、その役割を次のように説明されています。

「社会的共通資本は、一つの国ないし特定の地域に住むすべての人々が、ゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を持続的、安定的に維持することを可能にするような社会的装置を意味する。社会的共通資本は、一人一人の人間的尊厳を守り、魂の自立を支え、市民の基本的権利を最大限に維持するために、不可欠な役割を果たすものである」(『社会的共通資本』岩波新書)

先生の社会的共通資本の説明と日本の経済社会が余りにもかけ離れていることについては論を待たないでしょう。先進諸国の中で唯一経済成長をなしえていない、つまり「ゆたかな経済生活を営む」ことを享受できていないばかりか、暮らしを破壊して大軍拡へと舵を切る選択をしようとしています。そのために庶民大増税を計画しています。2014年に他界された先生がもし存命ならばこの選択をどう評価されたでしょうか。

先生はこの本で興味深いエピソードを紹介されています。それは解任されて本国に戻ったときのマッカーサーの上院軍事外交合同委員会の公聴会での次のような証言です。

「日本の憲法に第9条を入れさせたのは私だ。それは幣原喜重郎が自分のところに来て、こう言ったからだ。『軍人であるあなたにはいいづらいが、日本がこれから世界で延びていくためには、絶対に軍隊を持ってはならない。だから、憲法の中に日本は軍隊を持たないということを明示的に入れたい』私はこれに感動して、幣原に、いろいろ困難をともなうかもかもしれないが入れるように、とアドバイスをした。」と。

「軍事栄えて、民滅ぶ」の道を日本国憲法は謳っていません。防衛予算を増やすより、子育て、教育、社会保障などの予算を増やしていくことが社会的共通資本の要諦だろうと思います。

 

 

 

 

突然の方針の大転換!!岸田首相が言い出した驚きの「原発の新増設」~「聞く耳」は財界だけなのでしょうか?~

中学校の公民では、資源・エネルギー変遷と未来のことを次のように教えています。(蔭山克秀著、「中学校の公民が1冊でしっかりわかる本」かんき出版を参考にしました)

『明治以降、日本のエネルギーの主役は「石炭」でした。1950年代、中東などで大規模な油田が相次いで発見されました。「石油」は液体で輸送しやすく、公害被害も少なく、燃料効率も良く、さらに石炭より安かったのです。程なく石炭に変わり石油が主役と変わりました。

ところが73年「オイルショック」が起き、それを機に、日本では「未来のエネルギー」と注目されていた原子力発電の商業化が本格化します。そして2010年頃には日本の発電比率はおよそ、火力65%、原子力25%、水力10%に達しました。

しかし、11年東日本大震災が発生します。この地震で福島第一原子力発電所が深刻な被害を起こしたため、政府は原子力発電の安全基準をとても厳しい再稼働基準に設定しました。そのため、新基準をクリアできない原子力発電所が相次いでいます。

今もっとも注目されているのが再生可能エネルギーです。再生可能エネルギーは、風力・地熱・太陽光など自然界から無尽蔵にとれるエネルギーで、これなら価格高騰も温暖化も事故も心配ありません。』

この中学校公民の内容どおり、原発の事故後、歴代政権は、原発依存度の将来的な低減を国民に約束し、新増設や立て替えは想定していないと説明してきました。昨年10月に閣議決定されたエネルギー基本計画でも、原発の新増設には言及はありませんでした。

ところが、一転8月24日に重大な方針転換に舵を切りました。原発の「新増設」と既設原発の「運転期間も延長する」と言うのです。ロシアのウクライナ侵攻や急速に進む円安で、原油などの輸入コストが跳ね上がっています。新増設などは、その不安に乗じた「手のひらが返し」です。ずいぶん以前から、自民党、電力業界、原子炉メーカー、経産省の役人はその必要性を考えていました。再稼働もまた、原発の危険をさらに高めることは自明の理です。

この大きな方針の真相は、経団連の十倉会長が7月27日のGX(グリーントランスメーション)実行会議の初会合で「新設方針を明示」するように要求し、それに首相が応じたのです。財界には「聞く耳」を持っても、国民の世論は聞こえないのでしょうか。発言直後の朝日新聞の世論調査では、原発の新造設に「賛成」が34%、「反対」が58%でした。

この重大な方針を転換するには、まずは原発事故の検証とその始末が不可欠です。これには、長い年月と莫大なコストがかかります。それが不十分なままの方針転換に多くの国民は不信感を抱いています。最新の世論調査では岸田内閣支持率は33.1%まで下落しています。

原子力産業の延命に政府が取り組めば取り組むほど、再生エルギーの本格的な普及などがおざなりになります。太陽光や風力は純国産です。エネルギーの安全保障にとっても気候変動対策にもとても有効です。事故後10年余り政府は何をしてきたのでしょうか。

原発事故の教訓を真摯に受け止めるのであれば、中学校公民の中身を多忙な公務の間でも、岸田首相には是非一読してもらい、本来の「聞く耳」を待っていただきたいと願います。

「上がる・下がる」、「上げないといけない・下げないといけない」の一考察~日本経済を良くする「最適解」はあります!~

上がると言えば、間近に迫った国葬に反対する世論です。FNNの世論調査では、賛成33.5%、反対は62.3%にもなりました。岸田首相が説明すればするほど反対の声が大きくなるのは、その決め方や内容に道理がないことが国民の共通認識になっているからでしょう。

さらに上がるのは消費者物価です。8月は2.8%の上昇です。この数字は消費税増税の影響があった期間を除けば、バブル景気直後の1991年9月以来、約31年ぶりの水準です。今後もしばらく続くと考えられる円安やロシアのウクライナ侵攻などでさらに物価は上昇すると思われます。10月からは、後期高齢者の窓口負担や労働保険料も上がります。

反対に下がっているのは、内閣支持率です。時事通信が9月9日から12日にした世論調査では、前月比12.0%減の32.3%と急落し、昨年10月の政権発足以来最低となりました。この原因は、国葬だけでなく、統一教会問題の対応の不十分さ、新型コロナウイルスへの対応のまずさなどがあります。

さて、結論から先に言えば日本経済を良くするには大企業の法人税負担を上げること、併せて国民の手取り収入を上げること、消費税率を下げることが「最適解」と考えます。

財務省が9月1日に発表した法人統計によると、国民の暮らしや中小企業の営業が大打撃を受ける中、大企業の内部留保は2021年度末で484.3兆円となり、前年度に比べ17.5兆円増加しました。大企業は第2次安倍晋三政権が発足した2012年から、売上高が1.02%と横ばいにとどまる一方で、配当金は2.02倍に急増しています。一方で、賃金はわずか1.05%の上昇しかありません。また、同調査での4~6月期の法人の経常利益は前年同月比17.6%増の28.3兆円になりました。4半期ベースでの過去最高益を4年ぶりに更新しました。

ところが、法人税の実質負担率は低いままです。「不公平な税制をただす会」の菅隆徳税理士は、その理由として「大企業優遇税制による莫大な減税があるため」と訴えています。氏は、有価証券報告書から個別企業の減税額を推定しています。その減税額は多い順に①トヨタ自動車=受取配当金の益金不算入額(以下受配という)2,376億円、試験研究費の税額控除608億円②本田技研工業=受配1,768億円③伊藤忠商事=受配3,430億円④三菱商事=受配1,399億円というように膨大な減税額になっています。

また日本経済新聞(8月20日号)が一面トップに「繰り返す法人税ゼロ」の大見出し、「15年で課税4回」という小見出しをつけてソフトバンクG(通信会社のソフトバンクの親会社)が、2021年3月期の決算で1兆4,538億円の利益を上げながら法人税がゼロだったことを報じています。大企業優遇税制を廃止して、法人税に累進課税を導入すれば約20兆円の財源が生まれてきます。併せて企業責任として労働者の賃金を引き上げることです。

一方で、引き下げるべきは消費税です。世界はコロナ禍や物価高に対応するため、96カ国で付加価値税(消費税)の減税に踏み切っています。もはや従来の物価対策では限界があります。消費税減税は世界の流れであり、所得の低い人が高い負担率になる最も不公平な税制である消費税の減税こそが国民の生活や商工業者の最大の応援になります。