全国商工新聞という業者団体の機関誌の「税金相談コーナー」に数年間にわたり執筆したものの中からセレクトし、5回にわたり掲載をします。今回はその4回目です。
第4回目は、法人の決算期の変更の留意点です。
(Q)酒の販売を営む法人です。利益が出る体質になってきたので個人事業を法人組織に変更しました。その時に決算期を12月にしました。ところが年末は繁忙期で、棚卸もおぼつかない状況です。決算期を閑散期の5月に変更したいのですが可能なのでしょうか
(A)結論から言えば、法人の決算期の変更はいつでも何回やってもかまいませんし、手続きもそんなに難しくありません。
個人事業の事業年度は、暦年と決まっており、変更することは不可能です。ところが法人の場合の事業年度は、定款の定めによることになっています。定款の変更は登記事項ではないので、自社で保存している定款の変更だけでできます。定款の変更は、株主総会の決議が必要です。したがって、まず5月末までに臨時株主総会を開催し、定款の変更の決議をします。この決議は特別決議が必要となります。その後、速やかに定款の変更手続きをします。
それが終われば、変更した部分の定款の写しを添付した「異動届出書」を税務署、県税事務所、市役所に提出しなければなりません。提出期限の定めは特に決まってはいませんが、変更後の確定申告書の提出期限までにはした方がいいと思います。
この場合、消費税の基準年度の課税売上高の計算は個人事業者と異なります。法人の場合は5月までの5ヶ月ではなく、年換算をします。納税義務者や簡易課税の選択ができるかどうかの判定には要注意です。