日本経済新聞9月23日朝刊によると『全国の税務署や国税局が新型コロナウイルスの拡大感染のため、4月から中止していた新規の訪問税務調査を再開することが、関係者への取材で分かった。国税側は連休明けの23日から納税者に電話で受けてもらえるかどうか確認し、10月から開始する見通し。
中止が続くと税逃れの放置につながることに加え、来年2月に始まる所得税の確定申告受付に備え、10月中の再開が欠かせないと判断したとみられる。一方、調査は屋内で長時間実施することが多く、高齢の納税者が断る可能性もあり難しい対応を迫れそうだ。
日本税理士会連合会などの関係者によると、国税庁は12ある国税局・事務所のトップを集めた会議で再開を通知し、18日に日税連に連絡した。
国税庁は訪問時の感染防止策について「職員の人数や滞在する時間を可能な限り最小限にする」などとしている。』
確かに、国税庁では4月16日の所得税の確定申告期限以後の新規税務調査には着手していませんでした。ただしそれ以前に事前通知をしたものについては、納税者の理解と協力を得て、税務調査が行われていました。
しかし現実には、未曾有の感染拡大と本業の業績の圧迫により税務調査の進捗状況は思う通りには進んでいなかったようです。
実際、私の事務所が関与している顧問先にも調査開始の連絡が入りましたが、業績が悪く事務の職員も休業させていることと、社長が60歳代後半で、知らない人に会いたくないということで調査が延期になっています。
国税通則法という国税の基本となる法律によれば、いったん事前通知をした事案については、修正申告や更正・決定の処分をするか、調査の是認をしないと終われない法律構成になっています。私の知り合いの同業者所轄の国税局では、苦肉の策として、事前通知をしなかったことにすることで調査をひとまず終える処理をしているようです。
件の税務調査先の担当者は、私が他局の処理について述べたところ局に相談してみるといいながら、そのような処理をしてくれません。局によって取り扱いが違うというのはいかがなものなのでしょうか。
この調査は現在、コロナウイルスのワクチンができるまで調査が延期されることで合意をしていますが、自社の経営のことと税務調査のことで被調査先の心中は決して穏やかではないと思います。
おそらく、三密になる税務調査は、それを受ける方も調査する方も一抹の不安を抱いているのではないでしょうか。「中止が続くと税逃れの放置につながる」と国税庁は、「納税者性悪説」に立っています。納税者の多くは適正な申告をしようと務めています。もちろん、税務だけではなく様々な分野で、ごく一部悪質な人はいます。しかしこのコロナ禍の中、税務調査を再開するのはいかがなものかと私は思います。